- はじめに
- 本書の構成と使い方
- Chapter1 即興的に英語を話す力を育てる英語授業
- 1 即興的に話せる生徒を育てるキーワードは「交渉」
- 1 即興的に話す力につながる「交渉」とは
- 2 英語授業での「交渉」とは
- 3 即興的なスピーキング力を育てる3つのしかけ
- 2 即興的に話す力をつける授業デザイン3つの視点
- 1 視点1 交渉の段階を意識する
- 2 視点2 パフォーマンス課題のルーブリックを作成する
- 3 視点3 3年間の指導を考える
- Chapter2 即興的にやり取りする力を育てる指導技術&スピーキング活動
- 1 即興的に話す力をつける指導技術
- 1 The 4/3/2 techniqueを応用する3つのポイント
- 2 ペアワークを成功させる4つのコツ
- 3 成功するペアのつくり方ルールと指示に使える英語表現リスト
- 2 帯活動でスキルが身につく即興的なスピーキング活動アイデア
- 「やり取り」に必要なスキルを高める活動
- 1 相手の言葉に言葉で反応しよう(対象:1・2年)
- 2 “Conversation Strategies”で「やり取り」の質を高めよう(対象:3年)
- 詳しく説明する力を高め,話題に必要な語彙を活性化する活動
- 3 時系列に注意して出来事を説明する表現に慣れよう(対象:1~3年)
- 4 出来事を順序よく話そう(対象:1~3年)
- 論理的に話す力を高める活動
- 5 相手の言いたいことを短くまとめて確認しよう1 リスニング→スピーキング・ライティング (対象:2・3年)
- 6 相手の言いたいことを短くまとめて確認しよう2 リーディング→ライティング(対象:2・3年)
- 7 自分の価値観を相手に説明しよう (対象:2・3年)
- 「やり取り」を継続する表現を身につける活動
- 8 交渉に便利な表現を身につけよう(対象:2・3年)
- 3 TASKで使えるスピーキング活動アイデア
- 9 ロールプレイで合意形成のための話し合いを体験しよう(対象:1~3年)
- ■タスク1 友人の提案を断ろう
- ■タスク2 キャンプ行事にはテントと小屋のどちらがふさわしいか
- ■タスク3 修学旅行中の観光は,グループ単位か,クラス単位か
- ■タスク4 子どもの将来に関して親子間で意見交換をしよう
- ■タスク5 デートの行き先について合意形成をしよう
- 4 生徒が学びを実感できるまとめ・振り返り活動アイデア
- 10 リフレクションシートでパフォーマンスを振り返ろう(対象:1~3年)
- ■タイプ1 交渉の場面で使われる表現の使用を意識させるリフレクションシート
- ■タイプ2 交渉の段階性を意識させるリフレクションシート
- ■タイプ3 発言の論理性を意識させるリフレクションシート
- Chapter3 即興的なスピーキング力を高める授業プラン&パフォーマンステスト
- 1 生徒が即興的に話すようになる授業技術
- 1 指示や助言をしすぎないようにする
- 2 説明をするより活動をさせる
- 2 授業プラン&パフォーマンステスト
- 中学2年の授業プラン&パフォーマンステスト
- 1 相手の提案に対して異なる意見を言う
- ■パフォーマンステスト 試合会場への移動は電車か自転車か
- 2 学校行事のあり方に関する意見交換 1
- ■パフォーマンステスト 家族キャンプはテント泊かキャビン泊か
- 中学3年の授業プラン&パフォーマンステスト
- 3 学校行事のあり方に関する意見交換 2
- ■パフォーマンステスト 修学旅行は,行先を選択性にすべきか,みんなで同じ場所に行くべきか
- 4 進路決定に関する親子間の意見交換
- ■パフォーマンステスト 通学時間は無駄な時間か
- Column
- 1 相手の話を「まとめる」ことの大切さ
- 2 論理的に意見を言う時にできれば意識させたいこと
- 3 授業を受けた生徒の感想
- おわりに
はじめに
高等学校の新学習指導要領では「話すこと[やり取り]」の言語活動例の中に「交渉」というキーワードが出てきます。ウェブ検索で「交渉」と打ち込んで,「画像」を見ると,ほとんどビジネスシーンのものです。では,交渉とはビジネスの中だけのことなのでしょうか? そんなことはないはずです。どこで昼食を食べるか,部屋の窓を開けるべきかどうか。こんなことについても,私たちは日々,だれかと「交渉」して合意形成しています。そう考えると,交渉する言語活動を,やり取りを行うスピーキング指導の中で,高校だけとは言わず,中学でも自然に導入することができ,英語学習の到達目標を,これまでよりも高く設定することにつなげられるのではないでしょうか。
多様性が前提とされる社会では,話し合ってトラブルを解決することが必要です。その際,相手の価値観を尊重することも大切ですが,そればかりでは,自分にとって生きづらい世界に身を置くことになります。相手との信頼関係を損なうことなく,自分が望む結果をどのように手に入れるか,「交渉力」が問われます。
ゴネる,という言葉はネゴシエーションからきているようですが,交渉=自分の都合の押し付け,のように考えられてきた面があります。以前私の担当していた生徒に,交渉に対してのイメージや,交渉は得意かどうかと聞いたところ,否定的な返答がほとんどでした。むしろ,信頼できるだれかに決めてもらって,その通りやっておいた方が楽だと感じていたようでした。ごく親しい,善意あふれる人間関係の中で日々過ごしていると,それでよいのかもしれません。交渉は人と争うことだから避けたい,また,得意だと思っていても,相手を自分に従わせることが交渉の目的と思っていた生徒も多々いました。
相手が気づいていない価値や考え方に気づいてもらうことを話し合いの目標とすれば,交渉は協力のプロセスの始まりとなり,双方の努力でよりよい結果が見込めると期待できるようになります。交渉とは双方にメリットのある,Win-Winと呼ばれる状態を目指すべきであるというのは,このような考え方によるものです。日本語を使っている日頃の生活では不慣れな活動を英語でやる,というのも新鮮で,英語使用の意義が深まります。交渉成立後にはハッピーな気分になれるような,そんな言語使用を,英語を通じて中学生・高校生ができるようになってほしいと考え,自分のこれまでの実践を,1冊にまとめて紹介しようと決意しました。
交渉を目的とした言語使用は,論理的に考えた準備に基づいて発話する部分と,話し合いの場で折り合いをつけるための,素早い判断に基づく,即興での言語使用が必要な部分があります。これまでのスピーキング活動をバージョンアップしたい方,新しい大学入試にも対応できるスピーキング力を生徒につけたい方に,ぜひ手に取っていただければと思っています。
2019年1月 /千菊 基司
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- 明治図書
- 授業で早速活用できる内容でありがたかったです。2020/8/230代・中学校教員
- 具体的ですぐに使えそうなアイデアが多く、有益な本でした。2020/1/2040代・英会話講師
- 授業で実践ぇきそうな例が載っています。2019/7/2830代・中学校教員