- はじめに
- 第1章 道徳授業におけるアクティブ・ラーニング
- アクティブ・ラーニングで育む資質・能力
- 道徳科授業におけるアクティブ・ラーニングの考え方
- アクティブ・ラーニングと授業評価
- アクティブ・ラーニングを位置付けた教科型学びプロセスの考え方
- 本書で取り上げるアクティブ・ラーニング7つのアプローチ
- 第2章 道徳授業をアクティブ・ラーニングに変える7つのアプローチ
- アプローチ1 道徳科のテーマ設定を工夫する
- アプローチ2 発問や話し合いで授業を変える
- アプローチ3 板書の工夫で授業を変える
- アプローチ4 多様な書く活動で授業を変える
- アプローチ5 役割演技で授業を変える
- アプローチ6 体験活動を授業に生かす
- アプローチ7 学びの評価を授業に生かす
- 第3章 7つのアプローチを生かした道徳授業
- アプローチ1
- 重点指導項目と関連項目との関係に着目した配列法
- 主題の流れにおける重点指導項目の位置付けに着目した配列法
- クロスカリキュラムで各教科等と関連づけた主題の配列法
- アプローチ2
- マッピングを使った全員参加型板書
- Tの字型座席配置でTTT(徹底的)議論
- 論点提示⇒納得解の形成
- アプローチ3
- 主人公の心情や行動をきちんと理解するための板書
- 情景理解を深め対話のきっかけとなる板書
- 黒板に短冊を掲げ,話し合いを活性化する板書
- アプローチ4
- ワークシート,思考ツール
- ホワイトボード,思考ツール
- 付せん紙,ホワイトボード
- アプローチ5
- 2時間連続授業―1時間目・雰囲気づくりにもつなげる
- 2時間連続授業―2時間目・知的理解を演技で深める
- リアリティをもって考える
- アプローチ6
- 教材を手がかりに体験の学びを実践につなげる
- 問題解決的に学習を進める
- 体験から得た学びから“未来”を描く
- アプローチ7
- 生徒による自己評価の効果的な運用
- 多面的,多角的に自らの学びを評価する
- 持ち回り道徳での「生徒による自己評価」の効果
はじめに
―その一歩を踏み出して―
今,全国の中学校教師の熱い目線は道徳科に向けられている。平成31(2019)年4月から全面実施される「特別の教科 道徳」=道徳科を前に,各学校では,各教師は,どう対応していったらよいのかという不安な声が日増しに現実の様相を呈してきている。
中学校教師は小学校教師と違い,それぞれに自分の担当教科を軸に校内の様々な教育活動を展開している。よって,特別活動や総合的な学習の時間,部活動に至るまで,その指導の精神的な拠り所となっているのは,「自分は〇〇科の教師である」といった文脈での指導観である。それゆえに,道徳の時間が道徳科になって従前のようなお茶を濁したような授業では済まされなくなると聞けば,「これまでの指導で大丈夫か?」とか,「指導に自信がもてないまま担当してよいのか?」等々の不安が募ってくるのである。休日すら部活動の指導等で子どもたちと関わることを厭わない中学校教師は,個人差こそあるものの,どちらかと言えば物事に対して真面目に向き合い,真摯に取り組む傾向が強い。ゆえに,道徳の時間が道徳科となったらそれに相応しい「子どもたちが納得する道徳科授業創り」をしなければと一歩を踏み出す教師が一斉に出現するに違いないと大いに期待している次第である。
ある中学校の道徳授業研究会にお邪魔した時,ベテラン教師がこんなことを口にしていた。その教師曰く,「道徳の時間に子供が自分を語らなくなるのは,せっかく生徒が自分を語っても,その言葉が教師のフィルターを通すとみんな予め定められた言葉に置き換えられるからだ」と。含蓄のある名言である。学習指導要領全面改訂期となり,教育の世界はまさにアクティブ・ラーニング(Active Learning)時代である。言葉で表現すれば「主体的・対話的で深い学び」,つまり,生きて働く知識や技能といったこれからの時代に求められる資質・能力形成をどう進めるかということに尽きる。自らの在り方や生き方を考え,他者と共により善く生きることを学ぶ道徳科授業とて例外ではない。道徳科アクティブ・ラーニングを視座するとそのアプローチは多様であるが,その主軸となるのはやはり「子どもが自らを語り,考え,納得解を見出す」,この1点に尽きよう。これは,これまでの道徳の時間で目指してきたこと,これからの道徳科で目指すこと,いずれにも重なり合う道徳教育の本質部分である。
本書は,道徳教育の本質論からすれば指導の曖昧さが指摘されてきた道徳授業を教科という新たな枠組みの中で再度問い直し,アクティブ・ラーニングの視点からアプローチするその第一歩を踏み出すためのガイド&スキルブックである。大いなる活用を願っている。
/田沼 茂紀
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- 明治図書
- 評価について分かり易く参考になった。2018/10/2050代・中学校教員