- シリーズ発刊に寄せて・シリーズの読み方
- まえがき 学級づくりとは
- 第1章 【3月】学級づくりのゴールイメージ 家族になろうよ
- 1 一人一人の成長の先に学級がある
- 1 2年生は楽な学年?
- 2 2年生は埋もれる学年?
- 2 愛と厳しさがある家族
- 1 「家族になる」
- 2 家族とは
- 第2章 【4月〜5月】愛と厳しさで,安心感とやる気を引き出す
- ◆ 学級経営のポイント
- 1 始まる前に学年・学級の未来地図を描こう
- 1 まずは,学年のことを知り,共通理解を図る
- 2 学年の方針を共有する
- 学級づくりチェックリスト(学習計画)
- 2 最初の1週間で,「わくわく」「きりり」の空気をつくろう
- 1 学級開きで「あなたに会えてよかった」を伝える
- 2 学年通信で学年の団結と方針を伝える
- 3 学級通信で愛と決意を伝える
- 4 教室のあちこちで「あなたのことが大事だよ」を伝える
- 5 自由を保障するための規律をつくる
- 6 教室の安定を生む,生活パターンを定着する
- 7 日直の仕事が責任感を育てる
- 8 授業開き〜お勉強って楽しいと思わせる
- 3 1年間大切にしたいことを伝えよう
- 1 家庭学習・宿題を習慣づける
- 2 話す・聞くを全てのベースにする
- 3 みんなで学級目標を決める
- 4 保護者とがっちりつながろう
- 1 年度初めの参観日,懇談会で信頼を得る
- 2 家庭訪問で安心してもらう
- 第3章 【6月〜7月】人との関わりの中で自立を目指す
- ◆ 学級経営のポイント
- 1 子どもと子どもをつなげよう
- 1 授業の中でつないでいく@
- 2 授業の中でつないでいくA
- 3 一人と一人をつないでいく
- 4 子どもの姿を多面的に伝える
- 5 クラス会議がみんなをつなげる
- 6 見えない気持ちを可視化する
- 2 つながりを意識させ,責任感につなげよう
- 1 自分の仕事に責任を持つ
- 2 忘れ物指導で育てる
- 3 行事でしっかりつなげよう
- ◆ 行事に振り回されない
- 第4章 【夏休み】しっかり終わって しっかりつなぐ
- 1 1学期をしっかり終わる
- 2 自由研究の指導をちゃんとする
- 3 夏休み中も愛を伝える
- 4 1学期の反省と2学期のビジョンを立てる
- 第5章 【9月〜10月】指導を焦点化して緩みを正す
- ◆ 学級経営のポイント
- ☆ 緩んだ紐を結び直そう
- 1 2学期のスタート!人間関係を紡ぎ直す
- 2 2学期のスタート!自由研究で子ども同士をつなぐ
- 3 人間関係の変化を見取る
- 4 自問清掃で内的自発性を育てる
- 第6章 【11月〜12月】子どもを信じて 任せる
- ◆ 学級経営のポイント
- ☆ 主体的な関わりを演出しよう
- 1 主体的に考えられる学習プログラム@
- 2 主体的に考えられる学習プログラムA
- 3 自己省察できる場を作ろう
- 4 みんなでお楽しみ会を成功させよう!
- 第7章 【冬休み】学びのつながりを意識する
- 1 家族とのつながりを意識させる
- 1 記していくのは家族とのつながり
- 2 おぞうに調べ
- 2 冬休み中も学習意欲を低下させない
- 3 3学期の準備をする
- 1 指導要録の整理
- 2 教室の掃除
- 3 作品などの整理
- 4 研究会に参加する
- 第8章 【1月〜3月】自信をもって旅立てるように仕上げる
- 1 1年間の学びを確かなものにしよう
- 1 3年生を見通した学力向上をねらう
- 2 成長実感させるためのきびしさ
- 2 感謝の心を育てよう
- ◆ 誰かのために力を尽くす
- 3 愛を尽くして手放そう
- ◆ 誰とでもどこででも精一杯の力を発揮できるように
- 第9章 【1年間を走りきるコツ】愛と仲間と見通しをもつ
- 1 準備にコストをかける@
- 1 やることリストの作成
- 2 心が落ち着く教室環境の整理整頓
- 3 教師用整理棚の有効活用
- 4 おもわずうっとりするロッカーの使い方
- 5 すっきり見せる掲示物
- 2 準備にコストをかけるA
- 1 まっすぐ並べる机,椅子
- 2 びしっと整う掃除用具
- 3 ぴっかぴかの黒板
- 4 いつもきれいなごみ箱
- 5 忘れた時用グッズ
- 3 効率よく仕事を進める
- 1 自作教務手帳で情報の一元管理
- 2 学校の仕事は学校で終了
- 3 目立つところに期限メモ
- 4 力を借りる
- 1 すぐに相談
- 2 すぐに報告
- 3 すぐに連絡
- 4 思いに寄り添う保護者対応
- 5 弱音を吐くのも強さ
- 6 もつべきものは信頼できるアドバイザー
- 7 探してみよう,自分にできる職場貢献
- 5 子どもと感動体験を共にする
- 1 一緒に遊ぶ
- 2 一緒にふざける
- 3 一緒に悔しがる
- 4 一緒に本の世界に入り込む
- 6 子ども大好きを忘れない
- 1 子ども理解のための記録
- 2 ラブラブ強化月間
- 3 愛の恩返し
- 第10章 学級づくり20ポイントチェック
- 〜集団を育てるための定期点検リスト〜
- 1 学級づくりにも定期点検を
- 2 学級づくりチェックリスト
- 3 いつも自分のあり方を見つめながら学級を見る
- あとがき
シリーズ発刊に寄せて
アクティブ・ラーニング。「主体的で協働的な学び」と説明されるように,そこでは課題解決に向けて積極的に他者とかかわる学習が展開されます。高い意欲と活動性に支えられた学習は,温かさと安心感が保証された集団において実現されることは,多くの説明を要しないでしょう。学びの質への問いかけは,即ち「質の高い学びを成立させる集団とは?」という集団のあり方への問いかけなのです。
日本の学校教育において,学級は「楽園」でした。そこは,子どもたちの笑顔で溢れ,瑞々しいやる気に満ちた場所として捉えられてきました。しかし,その様相が変わってきたのが1990年代です。中学校では「普通の子」が感情を暴発させて,刃物で人を傷付けるような事件が報道されました。
そして,小学校においては学級崩壊と呼ばれる機能不全に陥る学級の存在が知られるようになりました。2000年になると,この現象は全国各地で聞かれるようになり,小学校の「楽園神話」は確実に壊れていきました。
かく言う私も,小学校教師だった1990年代半ばに機能不全に陥った学級を担任しました。初対面の時に,誰一人私を見ることなく,私語を続ける子どもたちの姿に愕然としたことを覚えています。それまで授業づくりに関する方法を必死に学んできた私は,慌てて学級づくりの情報を集め始めました。しかし,情報がなかったのです。当時は,授業づくりに関する情報は豊富にありました。1単元の全指示・全発問を示した書籍から1年間使えるワーク集までありました。ところが学級づくりに関する情報が見当たらなかったのです。
生徒指導の事例を扱った書籍はありました。しかし,それらはみんな個別の事例を扱ったものでした。学級の殆どの子どもたちが着席しない,話を聞かない,そして,毎日のように生徒指導上の問題が起こるような学級への対応法を示した情報は手に入りませんでした。
それから数年が経ち,運命的な出会いもあり,私は仲間とともに,学級づくりに関する情報を発信する機会をいただくようになりました。学級崩壊がメジャーになるに従って,学級づくりに関する書籍が次々と発刊され,それまであまり関心を向けてこなかった研究者も学級づくりを研究の対象とするようになりました。かくして書店の教育書コーナーには,学級づくりに関する書籍が数多く並ぶようになりました。
しかし一方で,教育界は,PISAショックに端を発した学力低下論争から,特に義務教育において,学力調査の結果に関心がはらわれるようになりました。それが現在も続いていることはみなさんがご存知の通りです。先生方の関心は,授業づくりに集中するかと思われましたが,どうやらそう単純には事は進行しませんでした。いや,学力向上という結果を出さなければならないからこそ学級づくりにも真剣に関心をはらわざるを得なくなったと言えます。
大学教員となった今,各自治体教育委員会の要請により,年間かなりの数の学級づくりの講座を担当させていただいております。「学力向上の基盤は学級づくり」との認識からでしょう。これまでの授業づくりへの関心は,授業のネタや教授方法に向けられていました。つまり,「どんなネタをどのように教えるか」ということだったのです。しかし,今は,数値としての学力が問われる時代になりました。指導の過程よりも指導の結果が重視されるようになったわけです。
先生方の関心が授業づくりに向けられるようになったからといって,学級崩壊の問題が解消されたわけではありません。むしろそれは多様化し,複雑化しているのが現状です。以前のように単純に無秩序状態になっているとか,教師に反抗しているといったわかりやすいものだけではありません。一見,授業は成り立っているようですが,何となくダラッとシラッとしていて,低意欲の状況が見られたり,表立って大きな問題はありませんが,ネットなどの電子空間で仲間を激しくいじめていたりするような「静かなる荒れ」と呼ばれる事態も見られています。
指導の結果が重視される時代になったからこそ,「学びの場としての学級のあり方」が新たに問われていると言ってもいいでしょう。このような状況の中で,職員室が世代交代を迎えています。指導層となるベテランの大量退職が進んでいます。私たちの時代は,困ったら先輩に気軽に聞くことができました。しかし,今はそれが難しくなっています。
ならば,教員養成の段階で何とかしなくてはと思いますが,残念ながら,現在の教員養成のプログラムにおいて,学級づくりに関する内容は標準装備されていません。普通に教員免許をとるだけでは,学級づくりを学ぶことができないのです。つまり,多くの新採用の先生方が,学級づくりにおいて丸腰の状態で現場に放り出されるような状態が続いています。そうした危機感を背景に誕生したのが本シリーズです。
本シリーズでは,高い機能をもつ学級集団の姿として「チーム」を構想しました。チームとは,「一人では解決できない課題を,良好な関係性を築きながら解決する集団」です。アクティブ・ラーニングの本質をズバリと突いていると思います。そして,各学年の執筆者たちが,「チーム」を自分なりに受け止めて理想とする学級の姿をゴールイメージとして設定しました。さらに,学年別にチームに育てる指導のプロセスを「1年間まるごと」紹介しました。
本シリーズを執筆したのは,質の高い学びを実現する集団を育てている6人(敬称略,括弧内は執筆担当学年)の実践家です。近藤佳織(1年生),宇野弘恵(2年生),岡田広示(3年生),橋健一(4年生),南 惠介(5年生),松下 崇(6年生)です。彼らは,いずれも地元に学びの仲間と研究会をもち,精力的に全国に向けて発信をしているメンバーです。彼らに学級づくりに関する考え方と技術を余すところなく伝えてもらいました。
圧倒的な質の実践を支えているのが,その貪欲な探究心と謙虚な人柄です。年齢は私よりも若い先生方ばかりですが,いつも刺激をもらっている皆さんです。1年間の実践を公開できること,それが即ち,彼らの実力の証明です。どうぞ渾身の作をお手に取ってご堪能ください。
/赤坂 真二
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