- まえがき
- Chapter1 「指示」をやめれば、楽になる
- 1 指示・命令がつくりだす苦しさ
- 2 苦しさを手放す最善の方法
- Chapter2 「指示しない」ために必要なこと
- 「子どもはコントロールできる」という思い込み
- 子どもをコントロールしたくなる原因
- 1 先生のこだわりや信じ込み
- 2 「みんな仲良く」がつくりだすもの
- 3 先生も外からの力に動かされている
- 4 先生にも感情がある
- 5 理想的な授業
- 6 子どもの側にある要因
- 子どもをコントロールしようとやりがちなこと
- 1 指示から命令へ
- 2 脅す
- 3 否定する
- 4 論破する
- 5 反省させる
- 6 見捨てるふりをする
- 7 誉める
- 8 コーチングのようなコミュニケーション
- 「指示しない」ための選択肢
- 1 観察する
- 2 質問する
- 3 傾聴する
- 4 承認する
- 5 子どもを信じる
- 6 選択肢を考える
- 7 授業展開を柔軟にする
- 8 チームで対応する
- 9 諦観する
- Chapter3 場面でわかる「指示しない」技術
- 1 授業開始前 まだ多くの子どもが席に着いていません。
- 2 授業開始直後 まだ席に着いていない子どもがいます。
- 3 授業開始5分後 後ろを向いておしゃべりを始めた子どもがいます。
- 4 授業開始10分後 いつものように席を離れて出歩く子どもがいます。
- 5 対話的な学習 話し合いを始めないペアがあります。
- 6 対話的な学習 対話的な学習は嫌だと言う子どもがいます。
- 7 対話的な学習 示した課題と違うことをやっているペアがいます。
- 8 対話的な学習 対話をやめないで、話し続ける子どもがいます。
- 9 個別の対応 忘れ物をした子どもがいます。
- 10 個別の対応 大事な書類を提出しない子どもがいます。
- 11 個別の対応 宿題をやってこない子どもがいます。
- 12 生徒指導 Aさんがいじめをしました。
- 13 生徒指導 「Bさんにからかわれて嫌です」という日記がありました。
- 14 生徒指導 Aさんの言動に周りの友だちは困っています。
- 15 生徒指導 Aさんは、よく友だちを注意してくれます。
- 16 生徒指導 Aさんは、嘘が多い子どもです。
- 17 不適応・不登校 Aさんが、突然学校に行きたくないと言い出しました。
- 18 不適応・不登校 Aさんは保健室で過ごす時間が増えています。
- 19 不適応・不登校 不登校が続いているAさんの家庭訪問に行きます。
- 20 保護者対応 保護者から指導について要望がありました。
- あとがき
まえがき
初めて教員として赴任したのは、山あいの小さな小学校でした。退職したのは、一学年七学級ほどの結構大きな中学校でした。小学一年生から中学三年生までの担任、特別支援学級の担任を経験しました。振り返れば、三十八年間はアッという間でした。
初任のときに漠然と抱いた理想「みんなが仲良くできるクラスにしたい」「みんなが活躍する、力のつく授業をしたい」などは、ゴールがあるものではありません。そのときできることをあがきながらやってきた感じです。
もちろん、その願いに向かって情熱的に関わることで得られた手応えや楽しかった思い出はたくさんあります。しかし、仲良くすることを強要したり、やる気を出させるために挑発したり仕組んだりして、子どもたちに無理をさせたと思うことも多々あります。傷ついた子どももいただろうと申し訳なく思うことがあります。
中学校へ異動した頃は、問題行動で学校が荒れている時代でした。校内での喫煙、改造学生服、校内暴力、万引きなど、生徒指導が大変な頃でした。子どもたちの生活を安定させるために、管理的な指導、力の生徒指導を必要悪とする雰囲気もありました。
そうした指導に違和感を持ちながらも、それに代わる有効な方法を知らない私は、中途半端に怒ったり誉めたりする指導で、子どもたちを混乱させていたと思います。
「自己流ではない何か」を学びたいと思った頃に、出会ったのが「育てるカウンセリング」や「育むコーチング」でした。アクティブラーニングに先進的に取り組む先生との出会いもありました。新しい学びを実践に活かすことで、子どもの思いや課題に寄り添った支援が少しずつできるようになることを感じました。その学びや実践を同僚の先生方に伝えることで、先生たちの子どもに対する眼差しや対応、授業が変化していくことも経験しました。
退職後は、スクールカウンセラーとして学校に関わることを選択しました。
子どもたちや保護者のみなさんの相談はもちろん大切にしていますが、「先生のやりがいも苦しさも経験したカウンセラー」として、先生たちの役に立ちたいと考えたからです。
■先生たちの今
今先生たちが抱える課題は、私が経験してきた課題と共通するところもありますが、より複雑で難しくなっていると感じています。
先生たちがやらなければならない仕事は相変わらずたくさんあります。
より良い教育をしたいと献身的に取り組めば、終わりはありません。
新しい時代に対応した教育を取り入れることも求められます。
多様な価値や個に対応することは、簡単なことではありません。人間関係も複雑です。
そして、働き方改革も求められています。
先生たちは、本当に頑張っています。そして、疲れています。
■先生が「楽」になるためには何が必要なのか
根本的には、教育予算が増えること、教員が増えること、部活動指導が学校から切り離されることなどが必要だとは思いますが、それは今日明日で実現することではありません。その実現に向かって働きかけることは大事なことですが、一方で今日の先生が、@先生としてのやりがいを感じ、A新しい時代の教育にも対応しながら、B楽になり、楽しくなることが、とても大事なことだと考えています。
この本は、この三つを実現するために、「指示・命令を手放すこと」を提案しています。
指示・命令に代表される「コントロール」を手放すことで、結果より過程を大切にして、子どもの主体性と対話力を信じて任せ、先生も子どもも楽に自由になることを提案している本です。
全てを一気に変えることは難しいのですが、「コントロールを手放す」感覚をつかむことで、目の前の子どもとの関係が楽になります。
良い結果を出そうと無理をしないで、長い目で子どもの成長を支援しようという立場に立つことができます
先生の Well-being につながることを願っています。
2024年8月 /内藤 睦夫
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- 明治図書
- 具体的に書かれていてよかったです。2024/9/2330代・小学校教員