- はじめに
- 1章 多面的・多角的思考を促す発問とは
- 2章 教材別・道徳発問大全集
- 低学年
- A−(2) 正直,誠実金のおの
- A−(3) 節度,節制かぼちゃのつる
- B−(6) 親切,思いやりはしの上のおおかみ
- B−(6) 親切,思いやりくりのみ
- B−(6) 親切,思いやりぐみの木と小鳥
- B−(7) 感謝きつねとぶどう
- B−(9) 友情,信頼二わの小鳥
- C−(10) 規則の尊重きいろいベンチ
- C−(11) 公正,公平,社会正義およげないりすさん
- D−(17) 生命の尊さハムスターのあかちゃん
- D−(19) 感動,畏敬の念七つぼし
- D−(19) 感動,畏敬の念しあわせの王子
- 中学年
- A−(1) 善悪の判断,自律,自由と責任よわむし太郎
- A−(2) 正直,誠実まどガラスと魚
- A−(3) 節度,節制金色の魚
- B−(6) 親切,思いやり心と心のあく手
- B−(9) 友情,信頼泣いた赤おに
- B−(9) 友情,信頼絵葉書と切手
- B−(9) 友情,信頼貝がら
- C−(11) 規則の尊重雨のバス停留所で
- C−(14) 家族愛,家庭生活の充実ブラッドレーのせいきゅう書
- C−(16) 伝統と文化の尊重,国や郷土を愛する態度ふろしき
- D−(18) 生命の尊さヒキガエルとロバ
- D−(20) 感動,畏敬の念花さき山
- 高学年
- A−(1) 善悪の判断,自律,自由と責任うばわれた自由
- A−(2) 正直,誠実手品師
- B−(7) 親切,思いやり父の言葉
- B−(7) 親切,思いやりくずれ落ちただんボール箱
- B−(8) 感謝最後のおくり物
- B−(10) 友情,信頼ロレンゾの友達
- B−(11) 相互理解,寛容銀のしょく台
- B−(11) 相互理解,寛容ブランコ乗りとピエロ
- B−(11) 相互理解,寛容すれちがい
- C−(12) 規則の尊重お客様
- D−(20) 自然愛護一ふみ十年
- D−(21) 感動,畏敬の念青の洞門
はじめに
しなやかな道徳授業をつくろう
「子どもが夢中になって,その気になる道徳授業をつくりたい」
「様々な発問を織り交ぜながら,道徳授業をすすめてみたい」
「これからの時代に生きる追求型の道徳授業をつくってみたい」
……私たちは,日々,様々な姿を見せる子どもたちに向き合いながら,毎週の道徳授業に対して,そんな願いをもっています。
「特別の教科」である道徳科になって,小学校段階では平成30年に教科書使用が始まり,はや数年が経ちました。道徳授業がややもすると硬直化しているのではと言われる中,道徳科はその授業改善への大きな期待を担って登場したのです。しかし,その中で聞こえてくるのは次のような声です。
「教科書にはよい教材があるのに,いつも同じ授業になってしまう」
「子どもは先の答えまで見とおしてしまって,授業にのってこない」
「ありきたりの授業をどのように改善していけばよいのかわからない」
道徳授業は子どもの追求力を信じてそれを生かす教育です。私たちは何を手掛かりとしてこのような授業の改善に向かえばよいのでしょうか。
そのための切り札の1つが,本書のタイトルにもある「多面的・多角的思考」です。道徳科の目標にはじめて示された「多面的・多角的」という言葉には,次のような願いが託されていると考えます。
○道徳授業を,一面的なステレオタイプのものだけにしたくない。
○子どもの多様な考えが行き交い,一層みがき合える授業をつくりたい。
○発問の発想がしなやかになれば,授業もしなやかに変わっていく。
このように,授業を様々な形でひらいていく構えこそ,今,重要です。
ところで,ここでの「多面的」と「多角的」はほとんど同じだとしばしば言われます。しかし,それならば両方を「・」でつなぐ必要はありません。それらをあえて区分して考えることで,道徳授業の発想の道幅が広がり,授業の可能性も広がります。そして,その地平線の先には,子どもたちの生きる未来がいっそう多彩に見えるようになっていくのです。
子どもたちは,見えにくい未来に向けて1日ずつを歩みます。私たちは,その足取りを力強く応援していくためにも,多様で,しかも芯の通ったしなやかな発問の発想力を携えて授業に向き合っていきたいものです。
なお,本書は,「多面的・多角的思考」に関して,編者が以前より示している「発問の立ち位置・4区分」という考え方をベースにして編集されています。多様な発問の例示は,その区分に基づいて,文字どおり多彩に示すようにしていただいています。もちろん,授業づくりはこの「4区分」の考えだけが先行するものでは決してありません。それこそ多様な受け止めが必要です。しかし,それでも,この「4区分」を発問を発想する下地の1つに加えてみると,子どもの視点に立った問題追求の授業が様々に着想でき,アレンジされていくことの手応えを強く感じています。
また,本書で発問例や事例を整理してくださった各先生は,それぞれに道徳授業が大好きな研究的実践家で,得意とする考え方や意図によって発問例を生み授業展開を構想しています。しかし,各学級で子どもに実際に向き合う先生方は,これを授業づくりの重要な手掛かりとしつつも,さらに子どもの状況を踏まえた工夫を重ねていただければと期待しています。
本書の各ページの発問例などによって,先生方の道徳授業の発問の発想がいっそうしなやかなものとなり,子どものための追求型授業,議論型授業の多彩な展開が生み出されることを願ってやみません。
2024年5月 /永田 繁雄
また,自身の授業にも活用しやすかった。