「指導案通りいかない!」からはじめる小学校国語授業

「指導案通りいかない!」からはじめる小学校国語授業

「想定外」から学びは進む!

教材研究もしたし、発問も活動の流れも準備万端。でも、いざ臨んでみると「指導案通りいかない!」…それが授業というもの。国語授業で起こりやすい「想定外」の分析から、全6学年・30単元の展開例まで、予定調和から一歩進んだ授業づくりをはじめるための入門書。


紙版価格: 2,046円(税込)

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電子版予価: 1,841円(税込)

12/25刊行予定

ISBN:
978-4-18-254435-4
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小学校
仕様:
四六判 208頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年11月22日

目次

もくじの詳細表示

まえがき
第1章「指導案通りいかない!」を乗り越える
1 なぜ国語授業は「指導案通りいかない」のか
2 「指導案通りいかない」とどう向き合うか
3 「指導案通りいかない」を乗り越えるポイント@ 子供から見た景色を想像する
4 「指導案通りいかない」を乗り越えるポイントA 譲れない柱を自覚化する
5 「指導案通りいかない」を乗り越えるポイントB 指導案通りいかないからいいと捉える
第2章「指導案通りいかない!」が起こるポイント地点
1 授業前 児童理解の段階
2 授業前 教材研究の段階
3 授業前 プランニング(指導案作成)の段階
4 授業中 発問の意図が伝わらない
5 授業中 話が逸れる(絞るポイントが明確でない)
6 授業中 想定よりも時間がかかる
7 授業中 進度にばらつきが生まれる
8 授業中 想定とは違う結末を迎える
9 授業後 ずれをなかったことにする
10 授業後 責任の所在をうやむやにする
第3章 実践 「指導案通りいかない!」からはじめる小学校国語授業
1年
話すこと・聞くこと どうぞよろしく
「いいインタビューってなんだろう?」
書くこと しらせたいな、見せたいな
「くわしく書くってどういうこと?」
読むこと どうぶつの赤ちゃん
「どこでわける?」
読むこと おおきなかぶ
「どんなふうに読む?」
読むこと ずうっと、ずっと、大すきだよ
「どんなところから大好きだと分かる?」
2年
話すこと・聞くこと あったらいいな、こんなもの
「引き出す質問ってなんだろう?」
書くこと 見たこと、かんじたこと
「あったことと,心の動きで,詩を書こう」
読むこと スイミー
「場面の様子を思い浮かべるって?」
読むこと どうぶつ園のじゅうい
「どうやって比べて考える?」
読むこと お手紙
「どんなことを考えていた? そしてどんなことをした?」
コラム1 指導案って誰のためのもの?
3年
話すこと・聞くこと もっと知りたい、友だちのこと
「仲間からもっと聞くためには?」
読むこと わたしと小鳥とすずと
「みんなちがって,みんないいって?」
読むこと すがたをかえる大豆
「どんな順番で書かれている?」
書くこと 食べ物のひみつを教えます
「どんな順番で書く?」
読むこと モチモチの木
「どこで,どんなふうに変わった?」
4年
話すこと・聞くこと あなたなら、どう言う
「相手の立場に立とうとするってどういうこと?」
書くこと 感動を言葉に
「連想を広げるヒント」
読むこと 白いぼうし
「松井さんってどんな人?」
読むこと アップとルーズで伝える
「対比させるよさって?」
読むこと ごんぎつね
「なぜ,そう書かれているのだろう?」
コラム2 具体と抽象
5年
話すこと・聞くこと 「子ども未来科」で何をする
「説得力はどこから生まれる?」
書くこと もう一つの物語
「効果的な構成を考えよう」
読むこと やなせたかし―アンパンマンの勇気
「どこが,なぜ,心に残った?」
読むこと 想像力のスイッチを入れよう
「具体と抽象を結べ!」
読むこと 大造じいさんとガン
「誰にとっていいシーン?」
6年
話すこと・聞くこと 聞いて、考えを深めよう
「どんな話の流れになるだろう?」
書くこと たのしみは
「どうすればたのしみが伝わる?」
読むこと 帰り道
「どの視点から捉える?」
読むこと 『鳥獣戯画』を読む
「どんな書き方に惹かれるのだろう?」
読むこと やまなし
「明るい? 暗い? なぜどっちもある?」
コラム3 VUCA を生きる教師と子供
あとがき

まえがき

 もしも本の帯が付いて「手に取って,まえがきだけでも読んでほしい」と誰かが推薦してくれたとしたら…,そんな仮説のもと,このまえがきを書き始めました。


 初めまして,今村行と申します。この本が出た時点で,私は東京学芸大学附属大泉小学校というところに勤める一教員で,本なんて出すのは初めてのことです。ですから,ほとんどの方は私のことなんて知りません。そんな,知らない人間の本を,本当に誰かが手に取って読んでくれるのだろうか,という疑問がまず初めにありました。とりあえず,今こうして,まえがきだけでも読んでくださっていることに,感謝を申し上げるべきですね。本当に有難うございます。

 本屋さんに行けば,一生かけても読み切れないような教育に関連する書籍が本棚にびっしりと並んでいます。「今を煌めく」ような,著名な研究者や実践者の方々の名前が印字された本が,たくさんあります。そんな中で,どこの馬の骨かも分からないような,見たこともない名前の人間が書いた本を購入するというのは,随分と狂気の沙汰なのではないか,と思ってしまいます。それなら代わりに魅力的な文庫を1,2冊買ってもらった方がいいのではないか…そういう声は私の中からも響いてきます。

 狂気の沙汰と言えば,明治図書出版の大江文武さんが,私に直接メールを送って来た時には,本当に驚きました。「本を書かないか」と。びっくりしました。よくもまぁ,私なんかを見つけ出して,声をかけて来てくださったものだ,と驚いてしまいました。失礼ながら,随分と物好きな人がいるものだ,と思いました。ただ,「書きます」と即答しました。ずっとその準備をしてきたからです。そして,大江さんから提示されたテーマが,とても魅力的だったからです。

 その,大江さんが提示してくださったテーマが本書の「『指導案通りいかない!』からはじめる」というものでした。教員であれば,必ず指導案を書いたことがあります。日々の授業の中で,全ての授業に対して整った指導案を書くわけではないとしても,頭の中にその1時間の授業のプランニングをしています。そこからもう一歩踏み込んで,授業を魅力的にしようとする人の背中を押す一冊を書かないか…そんなことを言われたら,書けるか書けないか分かりません,という状況(だって本なんて書いたことないわけですから)だったとしても「書きます」の一択しかなかったんですね。とりあえずやります,と言い切っちゃった。そんなわけで,今こうしてまえがきを書いているわけです。


 「指導案通りいかない」という状況は,教師をやっていれば,それこそ毎日のように起こります。逆に,「指導案通りいったぁー!!」なんてこと,ありますか? そんなことがあったら,結構不気味に感じてしまうのではないか…とすら思います。

 「指導案通りいかない」という悩みを解決した先にあるのはどんな状態か,ということを考えました。それって多分「指導案通りいくようにできる」ということではないんだろうな,と思いました。これはあくまで直観でしかないですけれど,「指導案通りいくように,自分はできる」と思っている場合,それは子供との相互関係の中で生まれる現実に悉く目をつむった結果なのではないかと思います。私は,そのような授業を素晴らしいとは口が裂けても言いたくありませんし,そのような教師を一人の人間として尊敬することもないと思います。

 きっと,「指導案通りいかない」という悩みを解決した先にあるのは「指導案通りいかないって面白い」という状態だと,私は思います。プランニング,指導案作成を一生懸命にやる。その上で思い通りにはいかない。子供は予想もしなかった反応を返し,それに対して自分がどう立ち回ればいいのか全く分からない。そこから,スマートでなくていい,汗をダラダラ垂らしていていい,しどろもどろでもいいから,一歩踏み出して,子供と現実を切り拓こうとする。そのような授業を私は素晴らしいと言い切りますし,そのような教師を一人の人間として尊敬しますし,仲間だと思います。そういう人へのエールを,これからそれなりのページ数を使って,繰り返し,繰り返し,送っていこうと思っています。

 私が何か話をさせていただいたり,ものを書く仕事をさせていただいたりする際に,意識していることがあります。それは,難しいことをやさしく,深く,愉快に,誠実に言葉にするということです。

 難しいことを,難しく書く人はたくさんいます。自分にとって大切なことを言葉にしようとする時,それは基本的に他の人にとってわかりやすいものではありません。「どうせ全てはわかってもらえない。だからこんなもんでいいだろう」と相手や自分を侮って安易に言語化することに逃げてしまいそうな瞬間もあります。「でも」と今,思う。

 難しいことをやさしくすること,それを深く描くこと,それを愉快に語ること,それをまじめに誠実に伝えようと徹すること。それは決して簡単なことではないけれど,何者でもない自分がそれを怠ったら,それこそこの本を手に取ってくださったあなたに,申し訳が立ちません。

 「それっぽいこと」は書けません。自分が子供と過ごした年月の中で,私がほんとうだと思ったことだけを,血を流して体得して来たことだけを,不器用な言葉に載せて,これからお届けいたします。もしよろしければお付き合いください。まえがきを最後まで読んでくださったあなたの目を見て「届け!」と伝える気持ちで,この先を書きます。


  2024年6月   /今村 行

著者紹介

今村 行(いまむら すすむ)著書を検索»

東京都板橋区立紅梅小学校にて5年間勤務し,現在東京学芸大学附属大泉小学校に勤務。

どんなときに言葉の力に頼り,どんなときに言葉の力に依存してはいけないのかを,国語の授業で子供と考え合っていこうと試行錯誤している。その中で子供と共に,言葉によって目の前の世界や現実をより細かい目盛りで見られるようになる素晴らしさを実感したり,言葉によって目の前の世界や現実を歪めてしまう危険性を実感したりしている。

現在は国際バカロレア認定校に勤務していることもあり,国語という教科を超え,他教科や生きる現実全てをひっくるめて,探究し続けよりよく生きようとすることの研究に夢中。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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