- はじめに
- 第1章 「考え,議論する」道徳科の授業づくり
- 1 道徳科とはどういう教科か
- 1 なぜ道徳科か―道徳科の背景―
- 2 道徳の時間との違い
- 3 道徳科とは
- 2 「読む」道徳から「考え,議論する」道徳へ
- 1 道徳の時間のどこがまずかったのか
- 2 「読む」道徳とは
- 3 「考え,議論する」道徳とは
- 3 アクティブラーニングと「考え,議論する」道徳科の授業
- 1 教育から学習へのパラダイム転換の中で
- 2 道徳科とアクティブラーニングのマッチング
- 3 アクティブラーニングをどう取り入れるか
- 第2章 「考え,議論する」道徳科の評価
- 1 何を,どう評価したらよいか
- 1 道徳科の授業で何を評価するか
- 2 他の教科との違いから
- 3 どう評価したらよいか
- 2 ルーブリックで評価する
- 1 ルーブリック評価とは
- 2 ルーブリック評価の長所と短所
- 3 道徳科の授業とルーブリック
- 3 〈わかる〉〈つなぐ〉〈生かす〉で評価する
- 1 ICEモデルと道徳科
- 2 〈わかる〉〈つなぐ〉〈生かす〉で評価する
- 3 〈わかる〉〈つなぐ〉〈生かす〉を生かしたルーブリック
- 4 評価から逆算して授業をつくる
- 1 「評価が変われば授業が変わる」のはなぜ?
- 2 評価を授業の起点に
- 第3章 各内容項目の分析とルーブリック
- 1 A 主として自分自身に関すること
- 2 B 主として人との関わりに関すること
- 3 C 主として集団や社会との関わりに関すること
- 4 D 主として生命や自然,崇高なものとの関わりに関すること
- 第4章 指導と評価をつなぐ道徳科の授業プラン
- 【小学校低学年の授業プラン】
- @「かぼちゃのつる」[節度,節制]
- これはわがまま?
- A「きいろいベンチ」[規則の尊重]
- どうしたらよかったの?
- 【小学校中学年の授業プラン】
- B「ないた赤おに」[友情,信頼]
- 友達って何だろう?
- C「発明家ベル」[個性の伸長]
- 長所を生かそう
- 【小学校高学年の授業プラン】
- D「手品師」[正直,誠実]
- どちらを選ぶ?
- E「一ふみ十年」[自然愛護]
- 自然と人間
- 【中学校の授業プラン】
- F「銀色のシャープペンシル」[よりよく生きる喜び]
- よりよい自分への第一歩
- G「最後の年越しそば」[思いやり,感謝]
- 私たちは何を求めて生きるのだろう
- H「わたしのいもうと」[公正,公平,社会正義]
- 差別について考えよう
- おわりに
はじめに
人間は弱い,しかし,弱さを克服して生きていこうとすることができます。完全な人間は少ないのですが,よりよく生きようとする人間は多くいます。むしろ,そこに人間の素晴らしさを見出すことができます。私は,そういう人間の必死に生きる姿を垣間見て,それに感動できる自分を感じてうれしくなります。感動することを私たち人間に与えてくれたことに,心から感謝するばかりです。
一方,世界を,時に日本を見わたすと,そういったこととかけ離れた悲しい出来事が,毎日どのチャンネルでもどの新聞でも報道されています。世界中のみんながよりよく生きようとする人の姿に感動しながら毎日を過ごしていれば,きっとそんなことにはなっていないはずなのに。
そういう世の中を見るにつけ,子供たちが,よりよく生きようとしている人の姿を見出し,自分もそうありたいと願うようになる,そのための時間がこれから始まる道徳科の授業であったらと考え,本書の刊行を計画しました。そう思わざるを得なかったのは,これまでに道徳の時間を中心に戦後50年以上かけて行ってきた道徳教育の成果が十分に出ていると思われないからです。これは,小学校教育に20年以上携わって累計700時間以上も道徳の時間の授業をし,現在は大学院で将来,道徳の授業をすることになる学生と共に道徳教育のあり方を考えている私自身にも責任があるという反省からの思いでもあります。最前線にいたからこそ,どこがまずかったかも見つけやすい私のやるべき仕事だとも考えています。
道徳の時間から道徳科への変更は,実質的な格上げと考えてよいのですが,なぜうまくいっていないかをしっかりと分析せずに,新たな舞台に上がっても,同じ演技を繰り返すだけです。踏襲すべきところはしっかり踏襲するけれども,改めるところはしっかりと改める,そういう覚悟がなければ,結局同じことの繰り返しに終わり,ツケは未来の子供たちに回っていきます。
そこで,本書は,教師が自分の授業を,子供の成長を材料にして省察することで,授業をすること自体が日常的な授業改善につながることを目指しました。つまり,評価を基点にして道徳科の授業づくりをしていくことを中心に論を展開しています。評価自体がこれまでの道徳教育ではほとんど行われてこなかったので,他教科での評価のあり方を参考にしながら,道徳科の特性に合った評価のあり方を追究しました。
さらに,評価に至るその道筋には,これからの学校教育において重要な要素となっていくアクティブラーニングの考え方と重なるところも多いので,必然的にアクティブラーニングを意識した授業展開を志向するものにもなっています。
本書は,前半に道徳科の授業づくりと評価についての理論を述べ,後半に理論に基づいた具体的な授業や評価の仕方について述べています。実際に教材研究をしたり,実践したりしようとすることに役立つ,データブックとしても活用していただければと考えています。特に,第3章では,小学校,中学校の学習指導要領に挙げられている内容項目について,それぞれの評価のためのルーブリックを掲載しています。また,第4章では,一人一人が活躍する道徳科の授業づくりをするための授業プランを各学年ごとに掲載し,そこでは授業の中でのアクティブラーニングのポイントや具体的に評価するためのルーブリックを位置づけています。
本書を利用して実際に授業をする中で,改善できるところはどんどん改善をして,さらに楽しく身になる道徳科の授業にしていっていただければ幸いです。
2016年6月 /石丸 憲一
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- 明治図書
- とても分かりやすい内容だったと思います。他の人にも薦めたいです。2016/10/30道徳の学習中