- はじめに
- 第1章 エピソード型から脈絡型歴史授業へ
- 〜アクティブ・ラーニングと歴史授業〜
- 1 誰もが主人公になれる授業を
- 2 藤原道長が娘にしたこと〜エピソードから歴史の本質へ〜
- 3 なぜ大津に都をつくったのか?〜脈絡型歴史授業〜
- 4 民本主義って何?〜授業方法の改善〜
- 5 アクティブ・ラーニングと歴史授業
- 第2章 「原始・古代」ウソ・ホント?授業
- 1【習得】直立歩行と火は人間生活をどう変えたか?(人類の発生)
- 2【ミニネタ】エピソードと歌で知る中国史(古代中国)
- 3【習得】大阪にワニがいた時代(旧石器時代)
- 4【習得】謎の4,5世紀(大和王権)
- 5【活用】十七条憲法のねらい(聖徳太子の政治)
- 6【ミニネタ】平城京の謎を解く(奈良時代の生活)
- 7【習得】女性が多い戸籍(律令制の崩れ)
- 第3章 「中世」「近世」ウソ・ホント?授業
- 8【方法】武士の発生と成長(グラフ化)
- 9【活用】平安末期の合戦は源平合戦?(平氏と武家政権)
- 10【習得】親鸞ってどんな人?(鎌倉仏教)
- 11【活用】日本がモンゴル帝国に勝てたワケ(モンゴルの襲来)
- 12【方法】徳政令って何?(劇化)
- 13【活用】富を制して天下取り!(織田信長)
- 14【授業方法】信長から,そして信長への手紙(手紙を書く)
- 15【方法】コロンブスのアメリカ到達(おかしいところ探し)
- 16【活用】参勤交代の功罪(大名統制)
- 17【活用】キリシタン一揆は無駄死にだったのか?(島原・天草一揆)
- 18【活用】生類憐みの令は悪法か?(綱吉の政治)
- 19【ミニネタ】ゴッホと浮世絵(化政文化)
- 20【習得】エピソードで考える江戸時代の商品流通と交通(江戸の経済)
- 21【活用】被差別民の生活は苦しかったか?(部落史再考)
- 22【習得】アメリカ来航への危機管理(日米修好通商条約)
- 23【方法】江戸幕府を倒したのは誰か?(ランキング)
- 第4章 「近代」「現代」ウソ・ホント?授業
- 24【ミニネタ】なぜ阿修羅像は国宝館に安置されているの?(廃仏毀釈)
- 25【方法】“パン”から富国強兵を(時代が見える“モノ教材”)
- 26【方法】士族・農民の立場で明治維新を大観(ダイヤモンドランキング)
- 27【授業方法】直接国税15円以上は許せないか?(ロールプレー)
- 28【方法】日露戦争は自衛戦争か?(部屋の四隅)
- 29【習得】米屋を襲うのは暴動か?(米騒動)
- 30【授業方法】“おみくじ”から女性参政権を(意外な“モノ教材”)
- 31【習得】インド大反乱はなぜおこったか?(イギリスのインド支配)
- 32【習得】国名がなかったアフリカ(アフリカの植民地支配)
- 33【活用】なぜヒトラーは支持されたのか?(ナチスの経済政策)
- 34【習得】地域の戦没者の墓から戦争を考える(アジア太平洋戦争)
- 35【授業方法】日米戦争は避けられなかったか?(10段階評価)
- 36【授業方法】いつだったら戦争を回避できたか?(ダイヤモンドランキング)
- 37【習得】東京オリンピックから国際情勢を(戦後外交)
- 38【授業方法】チキンラーメンはなぜヒットしたか?(時代がわかる“モノ教材”)
- 39【方法】日本の危機度を考える(10段階で評価)
- おわりに
はじめに
大人も子どもも両方が美味しいスパゲッティを作ることは可能だろうか?のっけから授業とは関係ない話だが,これは天海祐希主演のテレビドラマ『Chef〜三つ星の給食〜』の一話である。一流の料理人である光子(天海)は,親子給食会を開催し,親子で同じメニューのスパゲッティを提供し,両方に「美味しい」と言わしめた。プロの料理人の所以である。
教師は教えるプロであるから,勉強が苦手な生徒も,また得意な生徒も,同じ“メニュー”(教材)で,双方が意欲的で,しかも,わかる授業をつくることが大切である。そのためには“学力差”のない教材や発問,そして,討議課題が不可欠である。
「社会科の授業は,誰もが主人公になれる」。ある研究会での若手の先生の発言である。社会科は,教材や内容の工夫ですべての生徒が参加できる“学力差のない授業”が可能である。深い教材研究で臨んだ知的興奮のある授業では,子どもの目も輝いている。授業とは,いわゆる低学力の子どもも含めすべての生徒が参加し,思考・判断できるものでなくてはならない。
「主体的」「対話的」な「深い学び」が提唱されている。いわゆる「できない子」は,往々にして学習意欲がなく「非主体的」であり,話し合いにも参加せず「対話」も難しい。そこから「深い学び」などはとてもおぼつかない。しかし,意欲的に追究したい教材や授業改善により,ユニバーサルデザイン型授業が可能である。授業では一気に意欲を高める“すぐれネタ”がある。そのネタが単元のねらいと合致すれば,“わかる”授業へと転化する。“すぐれネタ”を開発し,授業に活かすことで,“学力差のない”授業が可能になる。すべての生徒の目が輝く授業をつくることは,プロである教師の責務であり,教える内容を子どもの目線で紐解く眼力が問われている。
2017年2月 /河原 和之
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