著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
学力格差を超えたライトラーニングを!
授業のネタ研究会常任理事河原 和之
2017/4/4 掲載

河原 和之かわはら かずゆき

1952年、京都府木津町(現木津川市)生まれ。
関西学院大学社会学部卒。東大阪市の中学校に三十数年勤務。東大阪市教育センター指導主事を経て、東大阪市立縄手中学校退職。現在、立命館大学、近畿大学他、7校の非常勤講師。
授業のネタ研究会常任理事。経済教育学会理事。
NHKわくわく授業「コンビニから社会をみる」など出演。
月刊誌『社会科教育』で、「100万人が受けたい! 大人もハマる社会科授業最新ネタ」を連載中。

著書に、『「歴史人物42人+α」穴埋めエピソードワーク』『100万人が受けたい「中学地理」ウソ・ホント?授業』『100万人が受けたい「中学歴史」ウソ・ホント?授業』『100万人が受けたい「中学公民」ウソ・ホント?授業』『スペシャリスト直伝!中学校社会科授業成功の極意』『「本音」でつながる学級づくり 集団づくりの鉄則』他、多数。

―本書は、大好評をいただいた「100万人が受けたい」社会科授業シリーズの続編で、河原先生の授業最新ネタが、分野別にこれでもか!と豊富に収録されています。まず本書のねらいと読み方について教えて下さい。

 前作の「100万人シリーズ」は、学力格差を乗り越え、すべての生徒が意欲的に学習できるネタや授業実践を中心に紹介しましたが、続編は、活用力、思考力、判断力を意識した構成になっています。ディープラー二ングが提唱されていますが、生徒指導やクラブ活動などと忙しく、すべての先生方にできる授業ではありません。本書は、比較的、簡単にできるライトラーニングを多く紹介しました。

―本書に収録されている最新授業ネタは、どれもその切り口が斬新かつ魅力的で、子どもが自然と熱中し、発言したり調べたくなる要素にあふれています。このような授業ネタを開発する原動力と、その教材開発のポイントについて教えて下さい。

 原動力は三十数年教えていた東大阪の、「手強い」がホントは「愛しい」生徒たちです。厳しい生活背景を一つの要因とした「学習の意欲が低い」「低学力」の生徒たちとの格闘から生まれたものです。そんな生徒にも「わかる喜びから目が輝く体験をさせたい」という思いが、教材開発の原動力です。今は、私に教材開発力や授業構成力を培ってくれた生徒たちに感謝しています。

―新しい学習指導要領では子どもの「主体的・対話的で深い学び」、いわゆるアクティブ・ラーニングの視点が1つのポイントとして挙げられています。そのような授業はどのようにすれば実現できるでしょうか。先生のお考えをお聞かせ下さい。

 「主体的」に授業と向き合うためには、「知りたい」「考えたい」発問や課題が不可欠です。「対話」をするためには「学力差」を超えた「誰もが一言いいたくなる」課題が必要です。「深い」学びは、入り口は誰もが参加できる課題で、取り組んでいるうちに「へっ!」「そうなんだ!」という「子ども(日常)の視点」から「教師(科学)の視点」へと導く課題設定が大切です。つまり「主体的・対話的で深い学び」は、本質的には、方法論ではなく、「学びたい」と思う単元を貫く課題設定がもっとも大切だと思います。

―本書のまえがきに「社会科の授業は、誰もが主人公になれる」という言葉が紹介されています。先生の授業では、学力的に低位で積極的でなかったはずの子どもが学力上位の子を凌駕するような意見や行動を起こす、“逆転現象”もよく見られますが、意欲の低い子どもの心を動かすにはどのようなアプローチが大切でしょうか。

 授業中の生徒の「つぶやき」を大切にしたい。「なんでも言ってやれ!」とバンバン発言するのは往々にして、いわゆる荒れた生徒です。また、複雑な生活背景をもった生徒は、社会事象に敏感です。そんな生徒の発言により授業が活性化し、それに触発され、何を言ってもいい雰囲気が醸成されます。ただしケジメは大切です。授業の本筋をはずれた発言はスル―しないと、授業が崩壊します。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 「100万人シリーズ」は多くの先生方に追試していただきました。「続編」も、まずは追試していただき、生徒たちが生き生きと学習する姿を体感していただければと思います。そこから、生徒の目が輝く教材、発問、討論課題の法則性をつかみ、それぞれの先生方の個性的な教材開発をしていただきたいです。本書はあくまでもヒントです。

(構成:及川)
コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • まっちゃん
    • 2017/4/12 8:50:42
    河原先生の授業を受けれた事
    私の人生の宝物です!!
    あの授業で得られたモノは
    その後の人生にもずっと今も良い影響を与え続けています。

    そして
    この本の内容は今流行りの
    アクティブラーニングの本質が知れる内容になっていると感じました。
    ぜひ多くの方に読んでいただきたいです。

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