- はじめに
- 第1章 主体的・対話的で深い学び=アクティブ・ラーニングって何?
- 〜エピソードと方法論から考える〜
- 1 興味・関心,知識・理解と主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)
- 〜「松尾芭蕉は忍者だったか」〜
- 2 方法論,活用力と主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)
- 〜ジグソー学習「アメリカの貧困と格差」〜
- 第2章 主体的・対話的で深い学びを実現する!アクティブな地理授業モデル
- 1 【キーコンピテンシー】【方法論】わたしがガイドをする町探検
- 2 【活用力】どうして水道料金は地域により異なるのか?
- 3 【興味・関心】これからの農業〜Aさん農家の可能性〜
- 4 【興味・関心】アフリカ州っていったいどんな地域…?
- 5 【興味・関心】“Buy 1 Get 1 Free”から大量消費社会を考える
- 6 【方法論】【興味・関心】地球に生きるわたしたち〜地球の反対側で見つけた「日本」〜
- 7 【知識・理解】九州を知ろう
- 8 【興味・関心】祇園の佐川になぜ暖簾?
- 9 【ユニバーサルデザイン】環境を守る熱い活動「石けん運動」
- 10 【方法論】日本の諸地域を生徒授業で学ぶ
- 11 【知識・理解】知多半島の電照菊は,どうやって栽培されているのか?
- 12 【ユニバーサルデザイン】雪の下に野菜がごろごろ?
- 13 【知識・理解】【活用力】なぜ,鳥取県はコーヒー支出量が全国1位なのか?
- 14 【活用力】1でも2でも3でもない第6次産業とは,どんな産業?
- 第3章 主体的・対話的で深い学びを実現する!アクティブな歴史授業モデル
- 1 【知識・理解】前方後円墳の秘密をさぐれ!
- 2 【活用力】平安時代のスーパー貴族!藤原道長ってどんな人?
- 3 【活用力】源氏と平氏,明暗を分けたのは?〜経済の視点を取り入れた歴史学習〜
- 4 【興味・関心】なぜ銀閣には銀箔が貼られていないのか?
- 5 【知識・理解】エルサレムはなぜ聖地なのか?
- 6 【興味・関心】戦乱の時代を支えた職人たち〜「職人歌合絵巻」を活用して考える〜
- 7 【活用力】キリシタンの盛衰から見る織田信長の政策〜地域史〜
- 8 【興味・関心】織田信長と金平糖
- 9 【方法論】秀吉の朝鮮出兵では,何を土産として持ち帰ったのか?
- 10 【興味・関心】「天下分け目!」の関ヶ原の名物は何?
- 11 【活用力】徳川吉宗は名君か?〜経済の視点を取り入れた歴史学習〜
- 12 【活用力】公事方御定書が物語る江戸幕府のねらいは?
- 13 【知識・理解】これであなたも黒船博士?!ザ・ペリークイズ!
- 14 【方法論】明治新国家の船出を征韓論から考える
- 15 【活用力】帝国主義下での日本の行方は?
- 16 【活用力】なぜ大戦は繰り返される?
- 17 【ユニバーサルデザイン】大臣!我が国は○○です!〜歴史学習としての貿易ゲーム〜
- 18 【方法論】満蒙は日本の生命線か?
- 19 【方法論】満州事変後の日本政府と軍部の力関係は?
- 20 【興味・関心】戦争と革命に翻弄されたプロ野球選手たち
- 21 【興味・関心】祈りの長崎〜写真家がのこしたものとは?〜
- 22 【興味・関心】チキンラーメンはなぜ大ヒットしたか?
- 第4章 主体的・対話的で深い学びを実現する!アクティブな公民授業モデル
- 1 【方法論】追跡!お肉が私たちのもとに届くまで!
- 2 【方法論】お前が殺人犯だ!と言われたら〜えん罪と日本国憲法〜
- 3 【知識・理解】多数決って民主主義?
- 4 【方法論】【活用力】日本国憲法改正を多面的・多角的に考える
- 5 【興味・関心】世論調査は,世論操作かも?!〜メディアリテラシーと政治的リテラシー〜
- 6 【方法論】【活用力】もしも,ブラックバイトで働いたら〜労働権を学ぶ〜
- 7 【活用力】クーポンを使うのはケチなことなのか〜消費者・企業側からみよう〜
- 8 【活用力】私たちはどうあるべきだろうか〜自立した消費者とは何だろう?〜
- 9 【方法論】【活用力】君ならどうする?ライバル企業に勝つ方法を考えよう!
- 10 【方法論】【活用力】消費税増税は本当に必要だったのか?
- 11 【方法論】イギリスのEU離脱に賛成か,反対か?
- おわりに
はじめに
「次の時間はうんこを持って理科室に集合だ」「気持ちを集中すれば10秒以内にうんこをできます」これは,大ヒット学習教材『うんこ漢字ドリル』(文響社)の例文で,「集」という漢字を習得するための問題である。漢字の練習は,基本的に繰り返し学習だが,集中力が徐々に下がりがちである。「そんな繰り返し学習に『うんこ』を融合させることで,子どもは笑いながら楽しく勉強することができるのです!」とまとめのサイトには書かれている。
この学習教材から,地理学習で思い浮かべたのは,『島根自虐伝』(PARCO出版)である。「クラス対抗戦とかしてみたい」「自動車教習所のほうが交通量が多い」などの“クスッ”と笑える島根県の現状を表すフレーズが紹介されている。私が注目したのは「日本一の美肌県だけどみてくれる人がいない」というフレーズである。「なぜ島根県は日本一の美肌県なのか?」水蒸気密度が全国9位,日照時間が全国11位で短いという自然条件に加え,喫煙率47位という社会的条件が加味される。しじみの消費量は1位であり,しじみに含まれる“オルニチン”に美肌効果がある。また当該県にある“玉造温泉”も美肌効果に貢献している。
「うんこ」も面白いが,例示した「美肌」など興味ある事項から,その背後にあるものを多面的・多角的に分析するのが社会科教育であろう。社会科は繰り返し覚える暗記学習の側面もあるが,基本的には「考える」教科である。
歴史的分野ではどうか? 歴史の年号などは,「泣くよ(794年)ウグイス平安京」と暗記させる。これも『うんこ漢字ドリル』と通じるものがある。私は「泣くよ坊さん平安京」と暗記させるが,それは,ここから「なぜ,平安京遷都で坊さんが泣いたのか」と問いたいからである。平城京からの遷都理由は,東大寺,西大寺,興福寺などの大寺院があり,寺が政治に口出しするから,そして,大きい寺は,維持費が多くかかるというものである。また,平安京は,淀川から大型船で直接入ることができ,東国へも琵琶湖の東側から出ることができたという交通事情もある。そして,天皇に忠誠を誓う役人の育成である。“わたしの土地”“わたしの家族”という意識から抜け出し,国のために働いてくれる人材を育成することもそのねらいであった。「泣くよ坊さん」から「深い」学びにつなげていくことが大切である。
公民的分野はどうか? “大航海時代から大後悔時代へ”イギリスのEU離脱を揶揄した言葉である。私としては,笑うに笑えないジョークだが,このジョークに何人がクスッとほほ笑むことができただろうか。社会科の学力とは,この“お笑いジョーク”の意味や背景を理解する力である。
授業では,「大航海時代の主役はスペインやポルトガルじゃなかったっけ?」「フランスとドイツの石炭や鉄鋼の共同利用から始まったよね」「関税のない貿易は合理的だ」「平和と繁栄をめざしたんだ!」「でも移民が増えると働く場が減少するね」「EU内の経済格差もたいへんだ」などの意見交換が行われる。このような「学び合い」を通じて,大航海時代の歴史的意味,EUの歴史・現状・課題・離脱による影響等を考え,“イギリスのEU離脱”に対する価値判断力を培うことが大切である。これが“協働の学び”であり,“社会科における主体的・対話的で深い学び,いわゆるアクティブ・ラーニング”の真骨頂である。
本書では,以下6つの視点から,具体的実践事例を通して,“社会科における主体的・対話的で深い学び=アクティブ・ラーニングの全体像を明らかにする”ことをねらいとしている。
1 「興味・関心」と主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)〜ネタ・モノ・絵図などを通して〜
2 「知識・理解」と主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)〜基礎知識をつける〜
3 「方法論」と主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)〜ジグソー,討論,ICTなど〜
4 「活用力」と主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)〜思考力・判断力・表現力〜
5 「ユニバーサルデザイン」と主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)〜学力差のない授業〜
6 「キーコンピテンシー」と主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)〜汎用力を培う〜
本書の具体的実践事例から,主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)のねらいや授業を理解していただき,すべての生徒が主体的・能動的に学習できる一助になれば嬉しいかぎりである。
/河原 和之
とても面白いです!がんばります!
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