- はじめに
- 第1章 「指示」とは何か―学級を操る指導言
- 学校は指示だらけ
- 指示とは何か
- 「指示の弱い教師」の教室は荒れる
- 指示で大切なたった1つのこと
- たとえ嫌われても「指示なき指導」はあり得ない
- 「指示」は学級をつくる
- 第2章 「伝わる指示」の基礎・基本
- 伝わる指示の鉄則@ 1指示1内容を徹底する
- 伝わる指示の鉄則A 短くズバッと
- 伝わる指示の鉄則B 最後まで言い切る
- 伝わる指示の鉄則C 語尾にこだわる
- 伝わる指示の鉄則D 立ち姿はどっしりと
- 伝わる指示の鉄則E 「確認」をセットにする
- 指示をきっかけに承認する
- 視覚化・体感覚化と合わせて指示をする
- 「なぜその指示なのか」を説明する
- コラム 鉄則を外した結末は……
- 第3章 「伝わる指示」にする話し方
- 笑顔を基本にする
- キーワードを強調する
- 間を空ける
- 教室の後ろまで届く声で
- 自分の声を聞く
- コラム 私の「間抜け」な話
- 第4章 「伝わる指示」に変える技術
- 「指示をします」と宣言する
- 個別指示は挙手をさせる
- 数字を入れて指示を出す
- 指示を問いかけに変えてみる
- 活動をセットにする
- コラム 「今から指示をします」の言葉の効果
- 第5章 「指示」が伝わる土台をつくる
- 信頼関係を育てる
- 児童理解で指示を調整する
- 教室環境を整える
- コラム 信頼関係なくして指示は通らない
- 第6章 「指示」を進化させる
- 1学期→3学期で指示は変化する
- あえて抽象度を高くする
- 指示は子どもにうつっていく
- 代表の子に指示をする
- コラム 子どもは成長するからこそ
- おわりに
- 初任者の先生におすすめの本
はじめに
「小学校の先生になろう!」と決めたとき。どんなことを大切にしようと思いましたか。
子どもたちの思いをしっかりと聞けるようになろう。
子どもたちと思い切り遊ぼう。
子どもたちが困っていたら、子どもたちの目線でいっしょに解決していこう。
きっと、そのようなことを思って学校の先生を目指したのではないかと思います。
もちろん、これらのことは、教育の根本にかかわることですし、何年経っても忘れてはいけない大切な要素です。
ただ、こうした思いをもつ前に、初めての子どもたちの前に立つ先生に知ってほしいことがあります。
それは、「先生としての基本的な土台となるスキルがある」ことも大切だということです。そして、そのうちの一つが、本書で取り上げている「指示」なのです。
読者のみなさんは、「指示」と聞いてどのような印象をもちますか?
子どもたちに言うことを聞かせるみたいで嫌だな……。
できれば、子どもたちに上から伝えるような先生ではいたくないな……。
先生の指示とかではなく、自分たちで考えて動くことができるような子どもたちを育てたいな……。
そのような印象はないでしょうか。
しかし、学校とは、「指示」にあふれたものです。また、指示がなければ、学校の生活は成り立たなくなってしまいます。
例えば、時間割を例にして考えてみましょう。
朝の会で、先生が次のように子どもたちに伝えたとしましょう。
「1時間目は国語、2時間目は体育です。体育では、体育館に集合します。時間どおりに始められるように集まりましょう」
最後の「時間どおりに始められるように集まりましょう」という言葉が「指示」にあたりますが、もし、この指示が子どもたちに通っていなかったとしたら……。
まず、体育館に集まっていなければ体育の授業は成り立ちません。
また、時間どおりに始められずに5分も10分も経過してから体育館に集合してしまえば、計画されていた授業はできなくなってしまうでしょう。
このように、学校で子どもたちと生活する中には、指示がたくさん含まれています。
指示は、子どもたちの学校生活を充実させるために必要不可欠なものなのです。体育館に時間どおりに集まることのできる学級と、そうでない学級では、力の差は歴然です。そして、きちんと時間どおりに始めることのできる学級で過ごすことのできる子どもたちの方が、学校で生活する満足度は高くなります。
このように、学校生活に欠かせない「指示」ですが、初めて子どもたちの前に立つ先生にとって、簡単にできることなのでしょうか。
指示をするうえで大切なことを、何も知らないままに指示してしまうと、大きな落とし穴にはまってしまう可能性もあります。
指示は、どうしても「先生→子ども」という関係になってしまうので、気を付けなければ、先生と子どもたちの間に溝をつくってしまい、信頼関係をなくしてしまうことすらあるのです。
また、時代の変化とともに、当然子どもたちや学校自体も変わっていっています。昔から伝えられている指示の考えやスキルをアップデートしなければ、現代の学校に通用するものにはなりません。
つまり、指示には、時代、時代に合わせた正しい理解とスキルが必要なのです。
本書では、指示において必要な考えと、すぐに使えるスキルをふんだんに集めてみました。若いうちにだけ使えるスキルではなく、教師として働くうえでずっと使える内容を紹介しています。
ぜひ、本書を通じて「確かな指示のスキル」を身に付けてください。
そして、子どもたちとの充実した時間を過ごし、子どもたちとともに先生として成長していくことを願っています。
令和5年12月 /丸岡 慎弥
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- 明治図書