- まえがき
- 第1章 とけあい動作法とは
- 1 とけあい動作法が生まれるまで
- (1)「動作訓練」の開発
- (2)「動作訓練」から「動作法」へ
- (3)「とけあい動作法」の開発
- 2 とけあい動作法
- (1)一体感をもたらす手の3つの働き
- (2)とけあい動作法の手続き
- (3)とけあい動作法の部位
- (4)とけあい動作法の部位と効果のまとめ
- 3 とけあい動作法による感情・認知・行動の変容
- (1)身体の緊張や歪みと否定的な感情や認知
- (2)快適な身体の体験とマインドフルネス
- (3)とけあい動作法と認知行動療法の統合モデル
- 第2章 運動・動作のコントロールの支援
- 1 全人的な発達における運動・動作の意義
- (1)教育課程における運動・動作の位置づけ
- (2)動作法から見た運動・動作の困難
- (3)多動の子どもや自閉症の子どもの心と身体の特徴と支援の観点
- 2 座位と立位動作の支援
- (1)発達におけるタテの姿勢の意味
- (2)不安定な姿勢と情緒や認知の関係
- (3)姿勢づくりの実際
- 3 腕と手指の動作の支援
- (1)腕と手の動作の役割
- (2)腕と手の動作と姿勢との関連
- (3)腕と肩の緊張を緩める支援
- (4)前腕部と手首の緊張を緩める支援
- (5)手指の動作の支援
- 4 書字動作とイメージの表出の支援
- (1)イメージ活動における手の役割
- (2)イメージを生み出す支援
- (3)イメージと動作を結びつける支援
- (4)鏡文字やこだわりパターンへの支援
- 5 摂食動作や発声・発語動作の支援
- (1)摂食動作の困難
- (2)摂食動作の困難に関わる姿勢の要因
- (3)口唇・舌・顎・頬の緊張を緩める支援
- (4)摂食動作と発声・発語動作の関係
- (5)発音や側音化構音の改善
- 第3章 こだわり行動のある子どもへの支援
- 1 過敏の強い子どもへの支援
- (1)発達に及ぼす過敏の影響
- (2)とけあい動作法による内的な構造化の支援
- (3)具体的な支援の方法と配慮
- 2 感覚的な遊びや自己刺激行動にこだわる子どもへの支援
- (1)感覚的な遊びや自己刺激行動の背景
- (2)とけあい動作法による支援
- (3)逆さ揺れ遊びにこだわるCさん
- (4)爪噛み,指の皮むき,髪の毛むしりのDさん
- 3 チックの子どもへの支援
- (1)チックの成り立ちと支援の観点
- (2)全身のチック症状を訴えるEさん
- (3)とけあい動作法による支援
- 4 「自傷」への不安にとらわれた子どもへの支援
- (1)脳性まひ児のびっくり反応と不随意緊張
- (2)不随意緊張による「自傷」の形成過程
- (3)Fさんの「自傷」の見立てと支援方針
- (4)とけあい脱感作法による「自傷」のコントロール
- 5 排泄の促しや食事の促しを拒否する子どもへの支援
- (1)コミュニケーションとしての排泄や食事
- (2)排泄を拒否する要因と支援方法
- (3)食事の促しに対する拒否への支援方法
- 第4章 情緒・行動のコントロールの困難な子どもへの支援
- 1 怒りや攻撃のコントロールが困難な子どもへの支援
- (1)怒りや攻撃の背景
- (2)怒りや攻撃に対する自己コントロールの支援
- (3)「虫退治」の練習
- 2 激しい暴力や物壊しをする子どもへの支援
- (1)行為障害の子どもの理解
- (2)Kさんの見立てと支援の観点
- (3)Kさんの行動の変化と周囲の変化
- 3 トラウマ(心的外傷)を体験した子どもへの支援
- (1)日常の中に潜むトラウマ体験
- (2)子どもの外傷後ストレス障害の特徴
- (3)とけあい動作法による2つのつながりの回復
- (4)「とけあい脱感作法」
- 4 嘘をつく子どもへの支援
- (1)子どもはなぜ嘘をつくのか?
- (2)とけあい動作法による支援の観点
- (3)Lさんへの支援
- (4)Mさんへの支援
- 5 盗みを止められない子どもへの支援
- (1)盗みをする子どもの特徴と支援の観点
- (2)欲求や衝動への気づきとコントロールの支援
- (3)欲求や衝動への気づきの支援を行ったNさん
- (4)欲求や衝動のコントロールの支援を行ったOさん
- 第5章 ことばとコミュニケーションに困難のある子どもへの支援
- 1 共同注意の形成とコミュニケーションの支援
- (1)コミュニケーションの基盤としての共同注意
- (2)共同注意の発達を阻害する要因
- (3)とけあい動作法による読み聞かせ
- (4)子守歌法による読み聞かせ
- 2 反応性愛着障害によることばの遅れの子どもへの支援
- (1)虐待による愛着障害
- (2)反応性愛着障害の子どもへの支援
- (3)反応性愛着障害の子どもへの支援の実際
- 3 ファシリテーテッド・コミュニケーションによる自己表現の支援
- (1)ファシリテーテッド・コミュニケーション
- (2)とけあい動作法によるFCの支援
- (3)詩を作るQさん
- (4)俳句や物語を作るRさん
- 4 緘黙の子どもへの支援
- (1)場面緘黙の子どもの特徴
- (2)場面緘黙の子どもへの支援の目標と留意点
- (3)とけあい動作法による支援
- (4)特定の場面に対する不安の軽減
- 5 吃音の子どもへの支援
- (1)吃音の子どもの特徴
- (2)吃音の子どもへの支援の観点
- (3)Sさんの吃音の見立てと支援の方針
- (4)Sさんへの支援の経過
- 第6章 学校や学級,保護者への支援
- 1 温かい学級を育む支援
- (1)ユニバーサルデザインの教育支援
- (2)2つの居場所感
- (3)温かいつながりを育むとけあい動作法
- (4)子どもと教師のストレスの軽減
- 2 生き生きとした学習活動の支援
- (1)学習活動への動機づけ
- (2)とけあい動作法による動機づけプログラム
- (3)学習意欲の向上
- 3 虐待を受けている子どもと保護者や学級への支援
- (1)学校における包括的な支援の観点
- (2)Tさんの行動の見立てと支援方針
- (3)保護者への支援方針
- (4)Tさんとクラスの子どもへの支援
- 4 分離不安や登園・登校しぶりの子どもと母親への支援
- (1)母子分離不安の特徴
- (2)母子分離不安の背景要因と支援の観点
- (3)日常生活場面での支援の実際
- あとがき
まえがき
人は,つながりが失われたときに,自分自身からも他者からも孤立し,苦悩します。つながりの最も大切なものは,「自分自身の心と身体のつながり」です。心と身体が調和的につながることによって,私たちは自分とも他者とも,安心・安全の関係を築くことができるのです。心と身体が緊張したり興奮したりしているときは,安心・安全の感覚やゆったりした情緒を体験することができません。障害のある子どもの困難や辛さは,自分自身の心と身体のつながりの不調によって引き起こされているのです。
とけあい動作法の支援のねらいは,心と身体のつながりの体験を通して,他者や外界との間に安心・安全の関係を築くことにあります。心と身体のつながりを阻害する要因には,過敏で傷つきやすい心身の特徴に加えて,不安やストレスによる緊張などがあります。とけあい動作法では,子どもの身体に現れている緊張や不安を支援者の掌でやさしく包み込みながら緩めることによって,心と身体がゆったりとした心地よい体験のもとでつながるように支援します。そのため,とけあい動作法では,掌の3つの働き,つまり,「子どもの気持ちを感じ取るセンサー」,「子どもに心地よさと愛情を伝えるセンダ―」,「子どもと安心・安全の感覚を共有するジョイント」を大切にします。それに加えて,支援者が子どもに届ける「やさしい眼差し」と「やさしい笑顔」,それに「やさしい声と言葉」を大切にします。掌の3つの働きと3つのやさしさが協働することによって,「子ども自身の心と身体のつながり」と「子どもと支援者のつながり」,さらには「支援者自身の心と身体のつながり」が生まれます。そして,これら3つのつながりは,「温かいつながりの共有空間」となって皆を包み込み,誰もが安心して本来の自分を発揮することができる居場所をもたらします。
読者の皆さまには,とけあい動作法が目指すつながりの世界に触れていただけることを願っています。
/今野 義孝
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- 明治図書
- 本書では、とけあい動作法というシンプルな方法を提案してくれている。またその背景にある考え方のようなものも垣間見ることができる内容となっている。2021/9/20U-Tchallenge