- はじめに
- CHAPTER1 Chromebookを活用した国語授業
- 1 国語科にChromebookを導入する
- 国語授業にタブレットは必要か
- 国語科とタブレットの相性
- Chromebookでできること
- これまでの学習活動をChromebookで置き換えよう
- 2 「話すこと・聞くこと」とChromebook
- ICTの発展と「話すこと・聞くこと」の授業
- Chromebookによる「話すこと・聞くこと」の授業のアップデート
- 話す内容が「ない」状態に応える
- 話し合いの過程で思考が「わからない」状態に応える
- 振り返る対象が「見えない」状態に応える
- 3 「書くこと」とChromebook
- 「書くこと」にChromebookを取り入れるとどうなる?
- 「書くこと」の学習活動をChromebookで置き換えるアイデア
- 単元の構想に活かす
- 4 「読むこと」とChromebook
- 「読むこと」の授業とChromebook
- 「読むこと」の授業と〈検索〉
- 「読むこと」の授業と〈共有〉―Jamboardとフォームを例に
- CHAPTER2 Chromebookを活用した「話すこと・聞くこと」の授業プラン
- 1 グラウンド・ルールを意識してグループで話し合おう(1年)
- Jamboardでの話し合いをスクリーンキャプチャで記録する
- 2 聞き手を意識してプレゼンテーションをしよう(2年)
- スライドを用いたプレゼンテーションをフォームで評価する
- 3 「私たちの話し合いガイドブック」の編集会議を開こう(3年)
- 話し合いについてのレポートをドキュメントで共同編集する
- CHAPTER3 Chromebookを活用した「書くこと」の授業プラン
- 1 SDGsについて調べてレポートしよう(1年)
- ドキュメントで調べ学習をしながらレポートをまとめる
- 2 物語から新しい物語を(2年)
- スプレッドシートの同時編集で創作文を書く
- 3 文学作品の書評を書こう(3年)
- ワークシートでの情報収集から記述までをドキュメントで行う
- CHAPTER4 Chromebookを活用した「読むこと」の授業プラン
- 1 シンシュン(1年)
- Jamboardによる可視化で作品への考えを深める
- 2 星の花が降るころに(1年)
- 作品を読んで考えたことをJamboardで表現する
- 3 字のない葉書(2年)
- Jamboardを使って分析的に随筆を読む
- 4 枕草子・徒然草(2年)
- Jamboardを使って論理的思考を働かせながら古典を楽しんで読む
- 5 故郷(3年)
- ウェブ検索で読みを深め,フォームで交流を促す
- 6 握手(3年)
- Jamboardとフォームで解釈の交流を促す
- 7 ちょっと立ち止まって(1年)
- Google画像検索で筆者の工夫を検討する
- 8 「不便」の価値を見つめ直す(1年)
- スライドやドキュメントで本文の内容を理解する
- 9 黄金の扇風機・サハラ砂漠の茶会(2年)
- フォームで検討し,スプレッドシートで要旨をまとめる
- 10 モアイは語る――地球の未来(2年)
- 生徒がつくった問いと答えを基に論理の展開を押さえる
- 11 「批判的に読む」とは・間の文化(3年)
- スライドで本文の内容を図式化してまとめる
- 12 絶滅の意味(3年)
- スライド,ドキュメント,Jamboardを使い分けて読む
- *Google for Education,Chromebook,Googleドキュメント,Googleスプレッドシート,Google スライド,Google Classroom,Google Jamboard,Googleフォーム,Google Meet,および Googleドライブは Google LLCの商標です。
はじめに
PCの本来の使い道は,思考を助ける,あるいは思考から表現までのプロセスをつなげるものであり,そういった使い方をしようとするなら,常に1人1台の環境があること=パーソナルであることが,PC等を授業で効果的に使うための最低条件となります。しかし,これまではそうなっていませんでした。そんな状況が,コロナ禍によって2020年に一気に改善されたことは,誰もが認めるところでしょう。臨時休校によるオンライン授業などを経験したことで,1人1台の必要性が認知され,タブレット配備が喫緊の課題となって,日本中の学校,生徒に行き渡ることになったのです。
このことは,配備する側にとっては一つのゴールかもしれませんが,配備された側にとってはスタートです。まずは機器の受け入れ及び管理面についての調整,また先生方が使いこなせるようにする研修など様々取り組まれてきたことと思います。そして,その準備期間を踏まえ,いよいよ教科等でも積極的に使っていく実践期間に入ったといえるでしょう。
教師のほとんどはICTに関して「素人」であり,「素人」が「ド素人」=生徒に教えるという状況でした。ですが,今の生徒は違います。ICT機器に対する試行錯誤の仕方が体に染みついているので,既に使いこなせるようになっています。ここが小学生と中学生の違いです。中学生は,ICT環境の中では,ほぼ自立的に動くことができるのです。ですから,中学校の授業においては,タブレットの使い方についてはほとんど指導する必要はなくなります。例えば,Google Jamboardでテキスト入力する時に,教師が入力方法を限定しないでいると,生徒は自分たちの判断で,「付箋への書き込み」「テキスト枠を作成しての書き込み」「スタイラスペンでの直書きによる書き込み」を必要と好みに応じて選びます。むしろ,中学校では,勝手にいろいろなことをやってしまわないように歯止めを掛けることの方が重要な指導になってきます。
このような状況であれば,それを最大限に活かすことで各教科の学習の質向上に役立てられる可能性は大きいといえます。小学校では陥りやすかった「タブレットを教える」ことにはなりにくく,逆にタブレットを考えるための道具として使う「タブレットで教える」ことを目指すことがそれほど難しいことではなくなります。
「タブレットで教える」を基本的なスタンスにすると,教科の授業にどう取り入れたらよいかを考えずにはいられなくなります。タブレットが道具であれば,練習ばかりでなく,実際に使いこなして初めて真価を発揮します。これまで目指しても到達できなかった授業を実現できるかもしれません。
国語の授業は難しく,努力しているのになかなか上達しないという方も多いでしょう。だからこそ,タブレットを積極的に取り入れる新しいチャレンジによって国語の授業をレベルアップできるのではと私たちは考えました。基になる優れた指導案は,これまでの実践で残されたものがたくさんあります。本書では,過去の膨大な実践=リソースを活かし,いかにタブレットを有効に取り入れるかを考えました。そして,その提案をより実践に役立つものにするために,本書では機種をChromebookに絞り,活用する機能,アプリについても特別な人にしか使えないものでなく,標準装備のものをフル活用することを目指しました。
本書をきっかけにし,学校現場でChromebookを通してより楽しく質の高い国語の授業が実践されることを願っています。
2022年4月 著者一同
注意とお願い
・本書で紹介しているアプリ等の仕様は2022年1月現在のものであり,今後変更になる可能性があります。
・本書で紹介しているアプリ等を使う場合は,各自治体や学校のガイドライン等に沿って使用してください。
・録音・録画したデータには個人情報等が含まれている可能性があるため,それらの保存先等は学校等の方針に沿って適切に取り扱ってください。
Chromebookを採用している自治体の教員は是非とも購入を検討するべきだと思います。