- まえがき その2つ……どちらが大切?
- 1章 子どもが生き生きするクラスのつくり方
- 01 「システム」×「マインド」の両輪で回せ
- 02 学級における教師の役割
- 03 主体性のバトンパスのタイミング
- 04 1年を通してギアチェンジする
- 05 1学期は教師から伝える
- 06 2学期は子ども同士が対話する
- 07 3学期は子どもから発信する
- Column プレゼン道場
- 2章 学級経営「システム」×「マインド」
- 学級開き
- 01 ワクワク感で始めよ
- 02 学校教育目標と学級目標の関係性
- 03 学級目標のつくり方と運用方法
- 04 合言葉をつくる
- 05 システムは変わる宣言
- 06 ジョハリの窓―安心できる学級―
- 学級ルール
- 01 自動化@「1人1役」
- 02 自動化A「10分作文」
- 03 明確化@「砂山理論」
- 04 明確化A「下意識」
- 05 ルーティーン化@「ベル課題1」
- 06 ルーティーン化A「ベル課題2」
- 07 ルールは授業中につくられていく
- 話し方・聴き方
- 01 「聴く」を徹底すると空気が変わる
- 02 「聴く」と「話す」は表裏一体
- 03 プレゼン指導はこれからの時代に必須
- 04 朝の会はビジョンで語る
- 05 帰りの会で意識することは2つ
- 06 話し合いの3タイプを意識せよ
- 07 「折り合い」から「シナジー」へ
- Column 6年連続の「奇跡の軌跡」
- 道徳教育
- 01 価値づけされて初めて気づくこと
- 02 声かけは内面の成長を意識する
- 03 道徳教育と道徳の授業の関係性
- 04 人生哲学で学級のよき風土を育てる
- 05 失敗から学ぶこと
- 06 叱るときの鉄則
- 07 やさしさと厳しさは同居する
- 08 教室言葉はポジティブにする
- 授業づくり
- 01 教師がアホになれ
- 02 パペット活用の幅を広げる
- 03 「静」と「動」を使いこなす
- 04 導入で勝率を上げる@
- 05 導入で勝率を上げるA
- 06 オープンとクローズドの組み合わせ
- 07 問い返しの極意とは
- 08 ネームプレートは万能アイテム
- 09 自己内対話で高める
- 行事
- 01 「どうやってやるのか」より「なぜやるのか」
- 02 行事と授業の関係性
- 03 時間を守ることは何より優先
- 04 行雲流水―モチベーションの上げ下げ―
- 05 行事は自己実現の場
- 06 子どもの「主体性」を大切にする
- 07 振り返りで見つめ直す
- 保護者との関係づくり
- 01 1年生の保護者は,保護者1年生
- 02 保護者からの信頼を得るには
- 03 懇談会のもつ意味とは
- 04 個人懇談会@説得力を増すために
- 05 個人懇談会A伝え方を工夫する
- 06 学級懇談会はCafeライクで
- 07 懇談会は+1のおみやげを
- まとめ
- 01 1年間を通しての「システム」×「マインド」
- あとがき 教育とは答えのない世界を楽しむこと
まえがき
その2つ……どちらが大切?
とある職員会議にて,話し合いが熱を帯びてきました。議題は「子どもたちが名札をつけるために大切なことは何か?」というものです。少し解説します。以前勤務していた学校では,「子どもたちは登校したら,教室で保管している名札を胸元につける」というルールがあったのです。なぜ議題に上がってきたかというと,名札をつけ忘れる子や,服に穴が空くのが嫌でつけない子が多数いたからです。
そこで,次のような意見が出てきました。
@「朝の健康観察のときに,担任が必ずつけているかどうかチェックして,名札をつけることを徹底すればいい」
A「名札をつけるのが嫌だという子がいるので,そもそも名札をなくせばよい。わかりやすく上履きに名前を書けばいいじゃないか」
B「なくすのはダメだ。教職員がもっと一丸となって,名札をつけていない子には,クラスや学年関係なく声かけをしていき,名札をつける必要があるという意識を高めることが大切!」
読者のみなさんは,どの意見に共感しましたか。私はこれらの意見が出たときに悩みました。
@に関しては,私はすでにやっていました。ですが,それが徹底できていないから議題にあがってきたと思うのです。(私も朝のチェックが漏れるときがありました)
Aに関しては,なかなかよい案だと思いました。「名札をつけられないならなくしてしまえばよい」というのは逆転の発想ですね。それで,困らないならばなくしてしまうのも1つの手です。ただし,反対意見として,「上履きに名前が書いてあったとしても運動場では名前がわからないのでは? 運動場で大きなケガをしたときにパッと名前がわからないのは困るのでは?」という意見が出てきて,また悩みました。
Bに関しては,大切なことだと思いました。教職員みんなが指導の方針を同じ方向に向ける。これが,徹底されると学校全体で「名札はつけなくてはならないもの」という意識が定着しそうです。でも,はたしてうまくいくのか。それでうまくいくのならばそもそも議題になっていないのではとも思いました。
この後も,議題に対して熱い意見が飛び交っていました。最終的に「AかBか,どっちが大切なの?」という論調になりヒートアップ。私は,悩んでいたので,なんとも言えずに成り行きを静観していました。
この会議が終わった後も,私の中のモヤモヤは続いていました。「どちらが大切なんだろう……」と。
でも,冷静に考えて気づきました。「この2つの主張を二項対立にすることがおかしなことなのではないか」と。
考えてもみてください。Aは「仕組み」を変えることを主張しています。一方で,Bは教職員の「意識」を変えることを主張しています。この2つは本当にどちらか1つしか変えられないのでしょうか。いえ,そんなことはないはずです。「仕組み」と「意識」,このように分けて考えると,どちらも変えられるということに気がつくはずです。
「仕組み」と「意識」どちらの方が大切なんでしょうか。答えは簡単です。どちらも大切にきまっています。
もし,この議題がまたどこかで提案されたら,私はきっと次のように言うでしょう。
「今の提案の中には,『仕組み』に関するものと『意識』に関するものが混ざっています。それらを整理した後,まずはよりよい『仕組み』について考えて,その後『意識(声かけ等)』について考える。このように順番に考えてみてはどうでしょう」
どうですか。ずいぶんとスッキリしたと思いませんか。
一例として,職員会議での議題が「仕組み」と「意識」に分けられて,そのどちらも大切であるということを紹介しました。
実は,これは学級経営にも当てはまると思っています。学級経営をする上で,「こういうルールをつくるのが大切なんだよ」と先輩が言っている。その一方で「子どもたちが○○という意識を高めてくれたらな」とも言っている。このような会話が日常的に,職員室でよく聞こえてきます。ここまで読み進めてくださった読者のみなさんなら,もうおわかりですよね。そうです。この2つは「どちらかが大切」ではなく,「どちらも大切」なんです。むしろ,そのどちらかが欠けていると学級経営はうまくいきません。
さて,ここまで「仕組み」と「意識」という言葉で書いてきましたが,学級経営における「仕組み」の中には,「ルール」「制度」「方式」など,たくさんの意味が含まれそうです。そして,「意識」という言葉の中にも「心構え」「精神」「価値観」などの意味が含まれそうです。これらの言葉の意味が含まれるような言葉を辞書で探してみました。私なりに考えた結果,ふさわしいと感じた言葉が「システム」と「マインド」という言葉です。
『デジタル大辞泉』によるとシステムとは,
1 制度。組織。体系。系統。
2 方法。方式。
3 コンピューターを使った情報処理機構。また,その装置。コンピューターシステム。
このように定義されています。学級経営では1と2が当てはまりそうですね。
同じくマインドとは,
1 心。精神。意識。
2 好み。意向。
と定義されています。こちらもどちらかというと1の方でしょうか。
そこで本書では,これらの意味を含みながら述べるために,
「仕組み」のことを「システム」
「意識」のことを「マインド」
このように呼ぶこととします。
本書では私が学級経営において大切にしている,
「システム」×「マインド」
を紹介していきます。
前置きが長くなりました。学級経営に対する考え方は正解が1つではありません。むしろ,正解は無数にあると思います。私が紹介する考え方は正解ではないかもしれませんが,読者の方が学級経営について考える一助となれば幸いです。
/森岡 健太
聞いたことある話ばっかりだな〜
と思いきや、中盤からマインドにシフトチェンジしてきます。
著者の道徳教育に関する見地から語られているので、
とても参考になります。
「真似をしよう」
ではなく
「自分の強みはなんだろうな」
と、自分を振り返るきっかけになりました。
読み終わって気づいたのですが、
この本そのものが
「システム」×「マインド」
で構成されていました。これはうまい!
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