- はじめに
- 第1章 めあてと振り返りのあり方を考える
- めあてとは何か
- 振り返りとは何か
- 第2章 めあてと振り返りで見る算数授業のつくり方
- 1年 たし算
- 0のたし算は書かないといけないの?
- 1年 たし算
- なんのためにさくらんぼで分けるのかな?
- 1年 ひき算
- 減った残りを求めるのは何算?
- 2年 長さをしらべよう
- どちらがどれだけ長いかな?
- 2年 ひき算のひっ算
- 答えが一番小さくなる筆算をつくろう!
- 2年 三角形と四角形
- 三角形ってどんな図形?
- 2年 長さ
- どこが一番近いかな?
- 3年 わり算
- わり算になることを線分図を使って説明しよう!
- 3年 1万より大きい数
- 10倍の10倍はいくつ?
- 3年 あまりのあるわり算
- あまりはどうする?
- 4年 四角形を調べよう
- いろいろな図形を見つけよう!
- 4年 割合
- どのお店が一番値上がりしたのかな?
- 4年 直方体と立方体
- どうしたら,緑のピースの位置が伝えられるかな?
- 5年 小数のかけ算
- 80×2.3ってどういうこと?
- 5年 図形の角
- □角形の内角の和はどうやって求めるの?
- 5年 整数の性質
- どのグループに入る数かな?
- 5年 四角形と三角形の面積
- 面積の一番大きな図形はどれかな?
- 5年 表や式を使って
- 対角線の本数を求めよう!
- 6年 比と比の値
- おいしい味噌汁と同じ味はどれかな?
- 6年 拡大図と縮図
- 長方形の旗はどうやって拡大する?
- 6年 並べ方と組み合わせ方
- 暗証番号は何種類?
はじめに
1時間の授業の中で,めあてを子どもに伝え,それが達成できたかどうか,または何を学習したかを振り返るというパターンの授業づくりがあります。
この考え方は,全国学力・状況調査の質問紙調査にも表れています。児童への質問に,次のような問いがあります。
5年生までに受けた授業で扱うノートには,学習の目標(めあて・ねらい)とまとめを書いていたと思いますか
この質問について,「当てはまる」または「どちらかといえば,当てはまる」と答えた児童は,88.6%(平成29年度)にのぼります。このことから,日本のほとんどの小学校でめあてやまとめを板書する授業が行われていることがわかります。
振り返りについても,次のような質問があります。
5年生までに受けた授業の最後に学習内容を振り返る活動をよく行っていたと思いますか
この質問についても,「当てはまる」または「どちらかといえば,当てはまる」と答えた児童は,76.2%(平成29年度)にのぼりました。
質問紙にこのような設問をつくるということは,文部科学省の考えとして,授業のめあてを確認し,授業の最後に振り返りをすることを推奨していると解釈できます。
しかし,教室現場では,「めあてとは何か」「振り返りとは何か」という問いや,「なぜめあてを書くのか」「なぜ振り返りをしなければならないのか」という問いに対する議論が不十分と感じます。そういったことを理解しないで形ばかり真似しても,子どもたちにその意義が伝わることはありません。
例えば,めあて1つとってみても,それを教師が決めるのか,子どもが決めるのかで大きく異なります。教師が決める場合,子どもは問題もめあても与えられることになります。よく「問題発見を大切に」と言いますが,与えられる授業が続けば,発見どころではないでしょう。
では,子どもの言葉を用いてめあてをつくる授業はあり得るのでしょうか。そう考えたとき,「めあてとは何か」という問いに行き着きます。めあてを「子どもの問い」や「子どもの困り」とした場合,子どもの言葉でめあてをつくる具体的なイメージをもつことができます。
文章題を出したときに,立式で困った子どもがクラスに半分いた。または,式が多様につくられ,どの式がよいかわからない。そんな状況をとらえて,「どんな式になるのかな?」というめあてができます。
または,ほとんどの子どもたちが式をつくることができた。ところが,答えを導く方法がわからずに困っている。そこで,「どうやって計算すればよいのかな?」というめあてがつくられます。
こう考えると,めあては子どもとの対話の中で引き出せるものと言えます。
改めて,めあてや振り返りの意味や意義を吟味する必要がある。そう考えていたときに,明治図書の矢口氏から月刊誌『授業力&学級経営力』への連載を依頼されました。算数授業のめあてと振り返りについての連載です。これを機に勉強しようということで,志の算数教育研究会で受けることにしました。その連載を進めながら会として学べたことに心から感謝しています。
連載を進めている最中にデンマークに出かけて授業を拝見する機会がありました。そのときも,めあてや振り返りが意識されるのかという視点で見ましたが,意識されることはありませんでした。調べたところ,欧米の算数・数学の授業でめあてや振り返りが意識されることはほとんどないようです。そのことがわかったとき,改めて次の問いが生まれました。「なぜ,日本の授業では,めあてを書くのか,振り返りをするのか」
このたび,連載を大幅増補する形で1冊の本にまとめる機会をいただきましたが,まとめてみても,まだめあてや振り返りについての明確な答えを得たわけではありません。我々はこれからも,めあてや振り返りについての問いを忘れることなく実践していきたいと考えています。
2019年1月 /盛山 隆雄
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