- はじめに
- CHAPTER 01 未来を生きる子どもたちのために大切にしたいことを考える
- /滋賀大学 岳野 公人
- 1 3つの未来観
- 2 「未来の学び方」を考えるための5つの視点
- 視点1 学びの楽しさを味わう
- 視点2 21世紀型スキルを獲得する
- 視点3 創造性を身につける
- 視点4 探究・プロジェクト型に取り組む
- 視点5 教師の役割,教育の価値観を見直す
- 3 それぞれの「未来の学び方」授業実践
- 4 一研究者として考えること
- CHAPTER 02 Apple Distinguished Educators の「未来の学び」実践集
- Part0 「学校」とはどんな場であるべきか?
- A 人生を豊かにするための場
- A 自分と対話できる場所
- A つなぐ場・つながる場
- A 多様な考えにふれ,対話を繰り返し,幸せになる力を身につける場
- Part1 立教小学校 /石井 輝義
- Q 「未来の学び」をつくるために必要なことは?
- A 学校の当たり前を問い直すこと
- 実践1 6年・総合的な学習の時間(情報)
- DQ World から学ぶデジタル・シティズンシップのまとめ直し
- 実践2 3年・総合的な学習の時間(情報)
- SDGs について考えてみよう
- Column 「教えられる」「教える」から「学ぶ」への転換
- Part2 森村学園初等部 /榎本 昇
- Q 「未来の学び」をつくるために必要なことは?
- A 発想のシフトチェンジ
- 実践1 4年・社会・総合的な学習の時間
- 誰かの役に立つアプリをつくってみよう
- 実践2 5年・国語・音楽・図画工作・総合的な学習の時間
- 身近にあるユニバーサルデザインを紹介しよう
- Column 未来の学びと思いやりの関係性
- Part3 郡山ザベリオ学園小学校 /大和田 伸也
- Q 「未来の学び」をつくるために必要なことは?
- A 学ぶ楽しさを追求すること
- 実践1 1年・国語
- 「くじらぐも」を実写化してみよう
- 実践2 2年・国語
- 物語文「スイミー」のデジタル絵本を制作しよう
- Column 子どもたちが主体的に学ぶための,環境づくり
- Part4 つくば市立春日学園義務教育学校 /藤原 晴佳
- Q 「未来の学び」をつくるために必要なことは?
- A 「やってみたい!」と思える創造力を大切に
- 実践1 特別支援・自立活動
- The Sun プロジェクト チームに分かれて発表しよう
- 実践2 4年・総合的な学習の時間
- 今わたしたちにできることは… 学校のみんなにエコ活動をすすめよう
- Column プロジェクトベースの学びでワクワクを広げる
- Part5 森村学園初等部 /不破 花純
- Q 「未来の学び」をつくるために必要なことは?
- A 教師がマインドチェンジを行い,ともに楽しむこと
- 実践1 1年・生活
- 葉っぱの世界をグループで表現しよう
- 実践2 1年・算数
- グループで考えたお話をもとに作品をつくろう
- Column 教師が楽しむ。マインドチェンジが新しい授業デザインを創る。
- Part6 近畿大学附属小学校 /外山 宏行
- Q 「未来の学び」をつくるために必要なことは?
- A 生成 AI と向き合う態度を育み,関係をつくること
- 実践1 3年・国語
- 組み立てに沿って,物語を書こう+α
- 実践2 3年・国語・総合的な学習の時間
- 物語の世界を生成AIで創造しよう
- Column 子ども自身の学習や教科の学びに戻る生成AI活用の活動設計
- Part7 瀬戸 SOLAN 小学校 /荒谷 達彦
- Q 「未来の学び」をつくるために必要なことは?
- A 「基盤となる資質・能力」の育成
- 実践1 3年・総合的な学習の時間(国語×音楽×情報)
- 愛唱歌プロジェクト SOLAN の特徴や願いを表す校歌をつくろう
- 実践2 4年・総合的な学習の時間(国語×理科×情報)
- micro:bit で学校の困り事を解決しようプロジェクト
- Column 過去の経験が未来につながる
- Part8 近畿大学附属小学校 /塚本 恵梨
- Q 「未来の学び」をつくるために必要なことは?
- A 考えることを楽しむ力を育むこと
- 実践1 5年・社会
- 未来の自動車をデザインしよう
- 実践2 6年・社会
- 歴史上の出来事を4コマ紙芝居で伝えよう
- Column それぞれの強みを生かした,考える場の設定
- Part9 熊本市教育センター /山下 若菜
- Q 「未来の学び」をつくるために必要なことは?
- A 学び続ける力を育成すること
- 実践1 教員研修・国語(4年)
- ことわざや故事成語を動画にしよう
- 実践2 教員研修・国語(2年)
- つながりからお話を想像≠オて創造≠オよう
- おわりに
- 参考文献・資料一覧
- 執筆者一覧
はじめに
今,この本を手に取ってくださった方々の中には,現職教員の方やこれから教員を目指そうとしている方,そして現代の教育に関心がある方々が多いのではないでしょうか。この10年で,教育現場はめまぐるしい変化を辿っているのはご存知の通りです。「ICT」という言葉が存在感を増してきたと思いきや,教員の成り手不足が叫ばれ,「ブラック」という言葉が様々な場所で走り出しています。そのような状況の中,「探究」「情報」「AI」と新しい言葉が次々と教育現場で取り上げられるようになり,変化の速度も日に日に加速しています。きっとこのような環境の中,日々の授業に不安を抱えたり焦りを感じたりする先生方や,教員になることを躊躇している学生の皆さん,自分の子どもが通っている学校教育が気になる保護者の方々も多いのではないでしょうか。
この本は,そんな皆さんの不安や悩みを取り除くためのヒントとなるよう,10名の ADE(Apple Distinguished Educator)が集まり,「頑張っている皆さんを応援するような本にしたい」というコンセプトを掲げて誕生しました。そのため,いろいろなところで ICT に関わる言葉が登場します。だからといって,何がなんでも毎時間 ICT を使って授業をすることを推進しているわけではありません。詳しくは,これから登場するいろいろな話を読んでいただくとおわかりになると思います。子どもたちの未来を考えた時,要所要所で ICT ツールを使うことは当たり前であり,特別でないことは皆様も想像の通りではないでしょうか。すでに ICT ツールは,現代を生きる我々にとって必要不可欠なツールとなり,スマートフォンをはじめ,それらを使わない日はもはや考えられなくなってきています。
もちろん,日々の授業や学校生活で様々なデジタル端末が活用されるのも当たり前になっており,1人1台端末整備を掲げた GIGA スクール構想により,いよいよ日本の教育も世界の時代の流れに追いつくことができました。
しかしながら,その流れの重要性に気づいていても,これまでの方法を大切にするあまり,現代の流れに少し目を背けてしまっている人がいるという現実も理解しています。そのため,読者の皆さんの中には,挑戦したい企画を躊躇したり,なかなか変わっていかない現実にもがき苦しんだりと,心が折れてしまいそうな方も多いのではないでしょうか。そのような環境下では,きっと1人1台配られた端末も十分に活用されていない現状も多いはずです。そして,何よりも学校という組織が旧体制のまま,なかなか変革されていかないのではないでしょうか。
しかし,この本を手に取っている皆さんは,学校教育の現状に問題意識をもち,どのようなことがこの本の中に書かれているのか気になったというその時点で,未来の教育を変えられるキーパーソンなのです。
この本では,そんな皆さんをしっかりと応援できるよう,直面しているありとあらゆる問題に対応するために,「公立」「私立」「男性」「女性」「年齢」「地域」等に囚われない,様々な実践や考え方を紹介しています。裏を返せば,どんな状況下でも子どもたちの未来のために前を見て,取り組んでいる方々がたくさんいらっしゃるということでもあります。もちろんここに登場する ADE ではなくとも,「子どもたちの未来のために」とやる気に満ち溢れ,挑戦されている方々はたくさんいらっしゃいます。そして,今この本を手に取って読まれている皆さん自身も,きっとその「仲間」のはずです。
今回,登場している ADE も,皆さんが今感じているような同じ悩みを抱えながら,日々の授業を振り返り,さらなる挑戦をしては反省し,これを何度も繰り返されているのです。時代のニーズ,学校のニーズ,子どものニーズ,保護者のニーズなど,様々なニーズを踏まえた授業を展開するのはなかなかハードなものです。少なくとも私は,毎日完璧な授業で文句なしと言えるようなスーパーティーチャーではありません。今回実践や考え方を紹介している先生もまだ完成形ではなく,試行錯誤を繰り返しながら挑戦し続け,世間の常識と学校の常識のギャップをなんとかしていきたいと考えている段階です。
この本を読まれた後,皆さんが同じような実践に取り組んでみようと思っていただけたらもちろん嬉しいですが,それ以上に「明日からまた頑張ろう」と前を向いていただけたら幸せの極みです。なぜなら,子どもたちのための未来の教育を考えた時,まずは子どもたちを未来へと導くための,変化に柔軟な先生の存在がとても大切だと考えているからです。そして,そのような先生方がチームとなり,常に現状に満足することなく,未来をイメージして新しい手法を模索し,率先して時代の先を進んで行くことで未来は変えられると信じています。そのためにもまずは,皆さんの周りにいらっしゃる仲間を探し出し,「未来の教育」についてざっくばらんに語り合うことから始めてみませんか。今この本を手に取った皆さんが私たちの「仲間」であるように,皆さんのすぐ近くにも実は「仲間」がいるのかもしれません。
「未来の教育」とは,結局のところ様々な視点によって,多様な捉え方ができると思います。ただ,おこがましい言い方かもしれませんが,未来を生きる子どもたちのために,本当に今のままの教育でいいのかと問い続けなければならない責任が,私たち大人にはあるのではないでしょうか。つまり,真摯に子どもたちの未来のことを考えているからこそ,このままでいいのだろうかと自問自答し,授業の試行錯誤を積み重ねていくのだと思います。教員が授業づくりでトライアンドエラーする姿を子どもたちに見せてこそ,子どもたちも失敗しても挑戦し続けることに意義があると考えられるようになるのではないでしょうか。そして,その結果,子どもたちの大きな成長につながっていくのだと思います。だからこそ,今の状況に負けずに,子どもたちの未来のために,一緒に前を向いて取り組んでいきましょう。この本を手に取って,気になってくださった皆さんのような方が,リーダーシップを取って学校改革を行った時,子どもたちのたくさんの笑顔がどれほどまでに素晴らしいのか楽しみで仕方ありません。
2024年8月 /大和田 伸也
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- 明治図書