- はじめに
- 第1章 アセスメントに基づくサポート計画づくり
- STEP1 実態把握をしよう
- STEP2 アセスメントを解釈しよう
- STEP3 指導仮説をたてよう
- STEP4 個別の指導計画を作成しよう
- STEP5 合理的配慮について検討しよう
- STEP6 特性に応じた教材をつくろう
- 第2章 発達障害のある子どもを読み解く事例研究課題20
- 本書を使った研修方法について
- 小学校
- 小学校低学年 学習面
- 事例1:小学校 2年生女子 漢字を覚えられるようになりたい子
- 事例2:小学校 3年生男子 「っ」(促音)をよく書き間違え,自信をなくしている子
- 事例3:小学校 3年生男子 計算に自信がなく,算数全般で自信をなくしている子
- 小学校低学年 行動面
- 事例4:小学校 2年生男子 気持ちのコントロールが苦手で活動に取り組めない子
- 事例5:小学校 3年生男子 友達を誘う時にうまくいかず困っている子
- 事例6:小学校 3年生女子 言葉で表現することが苦手で,友達との関係がうまくいかない子
- 小学校高学年 学習面
- 事例7:小学校 4年生男子 読み書きに自信をなくしている子
- 事例8:小学校 4年生女子 漢字を覚えて書くことが苦手な子
- 事例9:小学校 6年生男子 国語の物語文読解の心情理解が苦手な子
- 小学校高学年 行動面
- 事例10:小学校 4年生女子 友達にうまく話しかけることができない子
- 事例11:小学校 4年生女子 友達との関係で悩み,不安から登校しぶりが出てきた子
- 事例12:小学校 5年生男子 気持ちのコントロールができず,手が出てしまう子
- 中学校
- 中学校 学習面
- 事例13:中学校 1年生男子 読み書きに自信のない子
- 事例14:中学校 1年生男子 黒板をノートに書き写すことができない子
- 事例15:中学校 2年生男子 数学に苦手意識がある子
- 事例16:中学校 1年生男子 英単語の読み書きが苦手な子
- 中学校 行動面
- 事例17:中学校 2年生男子 やるべきことを忘れやすい子
- 事例18:中学校 1年生男子 落ち着きがなく,忘れ物をしてしまう子
- 事例19:中学校 1年生男子 今したいことを優先するため,状況に応じた行動が難しい子
- 事例20:中学校 1年生男子 何をするにも自信がもてず,行動に時間がかかってしまう子
- 資料
- 購入者特典について
- 参考資料
- 執筆者紹介
- おわりに
はじめに
〜発達障害のある子どもとともに学ぼう!〜
発達障害とは,発達期に生じる障害に関する総称で,その中に多種多様な状態が含まれている,いわば傘概念です。平均的なふるまいというありかたからの,大きなずれを有するところに共通点があるといえます。代表的なものとして,自閉スペクトラム症,注意欠如多動症,限局性学習症があげられますが,一人ひとりのありかたは,ずいぶん異なっています。そのように呼ばれる子どもたちに,人としての共通性はたくさんあるはずですが,発達障害と呼ばれるがゆえに,それが見えづらくなってしまうように思われます。
ふるまいの平均的ありかたからのずれが大きくなると,障害名で見てしまいやすくなり,具体的な姿を考えてみることが難しくなって,その子に合った支援や援助の手だてを考えることを避けがちになります。認知バイアスという,いわば色眼鏡をかけてしまうわけです。その色を薄めるためには,その子に関して他の人の見方も知ることが重要です。それから,今ご覧いただいている,このような書物を参考にして考えてみることも有効だと思います。
大事なことは,その子と語り合うことです(しゃべり合うこととは限りません)。子どもと大人は,立ち位置が違います。大人も,昔は子どもの時期を経てきたのですから,子どものことは理解できそうなものですが,大人,特に教師という立場にたつと,子どもの目線でものごとをみることは難しくなると言ってよいでしょう。
その子をじっくりみていくと,なんらかの気づきが生じ,ヒントを探していくと,支援・援助の手がかりがつかめるものです。その子を一緒にみている人と,その子についてともに語り合い,考えていきましょう。
本書では,WISCという知能検査を利用して認知的特性を検討し,その分析を参考にしながら,その子の支援・援助の方法を考えていきます。ですから,WISCをまだよくご存じない方には申し訳ありませんが,まずはWISCの講習会などに参加して,基本を学んでいただければ幸いです。WISCの内容について一応理解しているが,指導にどう生かしていけばよいのか……と思っている方にお読みいただければ幸いです。
もちろんWISCはたくさんある中の検査の一つですから,これによって子どものすべてを知ることはできません。しかし,子どもを知るヒントを得ることはできると思います。認知特性上,得意なことも苦手なことも,それらがその子の日常のふるまいの中にどのように表れてきているのか,よく観察してください。そして,その子のいわばバーチャルな姿を皆さんの頭の中に描き出してみてください。具体的なイメージが表れてこなければ,アセスメント結果を見直し,その子を観察し直してみてください。その子が語る内容も,貴重なヒントです。日常会話の中で,その子の言葉で語り合ってみてください。
本書は,児童・青年期の子どもに関わっておられる方々を想定して書かれています。各セクションとも,最初に仮想的事例が提示され,主訴と実態把握の内容が具体的に示されています。次に,アセスメント結果とそれに基づく解釈と指導仮説が展開されていますが,まずは結果を見てご自分の考えをまとめてから,続きをご覧ください。それが力をつけていくことにつながります。最後に,「個別の指導計画」と「合理的配慮の検討」がワークシートのかたちで提供され,教材例も示されていますので,ご参考になれば幸いです。
私たちは,WISCをベースとしたこのような研修を毎年,夏期休暇の4日間を利用して行ってきました。WISCの経験年数などに応じて数人のグループをつくり,一緒に議論しながら学び合ってきました。この本をご覧くださった方々が,ご自分の学校で,地域で,このような研修を計画され,ともに学びながら,子どもをみる力を深めていかれることを願っております。
監修者 /室橋 春光
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- 明治図書
- 支援を考えるには、何よりもアセスメント。WISCの結果を元にどう支援を考えるのか。検討のレベルを最小限にしているが、アセスメントの導入・入門編としておすすめ。2023/2/2440代・男性