- まえがき
- 第1章 情報を活用する力を育てる「読むこと」授業のつくり方 5つのポイント
- 1 読むことの授業で情報を活用する
- 2 〈原情報〉としての教材文を多面的,多角的に捉える
- 3 教科書教材文以外のテクストを様々にプラスする
- 4 〈産出情報〉を常に更新する
- 5 根拠に基づく情報の産出を意識させる
- 第2章 新教科書の授業づくりガイド 説明文編
- 1年
- 1 うみの かくれんぼ(光村)
- 2 どうぶつの 赤ちゃん(光村)
- 3 いろいろなふね(東書)
- 2年
- 4 どうぶつ園のじゅうい(光村)
- 5 ロボット(光村・New)
- 6 どうぶつ園の かんばんと ガイドブック(東書・New)
- 3年
- 7 すがたをかえる大豆(光村)
- 8 せっちゃくざいの今と昔(東書・New)
- 9 カミツキガメは悪者か(東書・New)
- 4年
- 10 未来につなぐ工芸品(光村・New)
- 11 風船でうちゅうへ(光村・New)
- 12 くらしの中の和と洋(東書)
- 5年
- 13 インターネットは冒険だ(東書・New)
- 14 固有種が教えてくれること(光村)
- 15 「弱いロボット」だからできること(東書)
- 6年
- 16 『鳥獣戯画』を読む(光村)
- 17 「考える」とは(光村・New)
- 18 「永遠のごみ」プラスチック(東書・New)
- 第3章 新教科書の授業づくりガイド 文学編
- 1年
- 1 くじらぐも(光村)
- 2 ずうっと,ずっと,大すきだよ(光村)
- 3 おとうとねずみチロ(東書)
- 2年
- 4 お手紙(共通)
- 5 みきのたからもの(光村・New)
- 6 ニャーゴ(東書)
- 3年
- 7 モチモチの木(共通)
- 8 春風をたどって(光村・New)
- 9 ワニのおじいさんのたから物(東書・New)
- 4年
- 10 ごんぎつね(共通)
- 11 友情のかべ新聞(光村・New)
- 12 スワンレイクのほとりで(光村・New)
- 5年
- 13 大造じいさんとガン(がん)(共通)
- 14 銀色の裏地(光村・New)
- 15 たずねびと(光村)
- 6年
- 16 海の命(いのち)(共通)
- 17 ぼくのブック・ウーマン(光村・New)
- 18 模型のまち(東書・New)
まえがき
小学校では,2024(令和6)年から新しい教科書となりました。学習指導要領改訂に伴うものではありませんので,各社共に大きなコンセプト,編集方針の変化はないでしょう。それでも読むこと領域では,文学,説明文共にいくつかの教材の差し替えが見られます。本書では,そうした新教材を中心に,教材研究や授業づくりの手がかりを,「情報を活用する力を育てる」という観点から,わかりやすく示しました。
教科書教材には,「ごんぎつね」や「大造じいさんとガン(がん)」のように,時を超えて残っている定番教材と呼ばれるものがあります。しかし,その他の教材は,時代が変わり,社会のあり方が変わり,内容的に新鮮さがなくなったり,ふさわしくなくなったりして,入れ替わっていきます。とりわけ説明文は,日進月歩の科学技術,新たな見方や考え方を伝えることが中心となる文章でもあるため,どうしてもそうした新陳代謝の度合いが増します。
教材が新しくなるというのは,教える側にとっては,教材研究を一からしないといけないということですので,負担感の増加につながります。また,どのように解釈し,指導すればよいのだろうという不安も生じます。
いっぽうで,既に発表された多くの実践報告等による「このように教えなければならない」といった制約めいたことからは解放されます。「どうも授業がマンネリ,ワンパターンになっていて,わくわくした感じがないな…」と思っている先生方にとっては,自身の授業に変化をもたらす絶好の機会だと考えることもできます。
とは言え,勝手気ままに教材解釈をしてよい,ことばの力を付けることを軽視した授業づくりになってしまってよい,ということにはなりません。教材研究する糸口,ヒントのようなものを手がかりにして,より深く教材を捉えていくようにしたいものです。また,授業づくりについては,せっかくの新教材です。脱マンネリ,脱ワンパターンを図るために,何かの切り口,アプローチの観点をもってのぞみたいところです。
このことについて,本書では「情報を活用する力を育てる」ことを目指しています。情報を活用する国語科授業に関しては,たくさん研究,実践がなされています。最近では,ICTを使っての提案も多くなされています。しかしながら,本書では,第1章でも述べているように「情報」を以下のように整理しました。
・教材文や教材文以外の本等にある事柄〈原情報〉
・自分自身が読み取った内容〈産出情報〉
・級友の発言や教師の発問・指示,板書にある事柄等〈参考情報〉
・授業や生活のなかで得た経験や事柄〈根拠情報〉
教材文を読み深めるには,教材文はもちろん教材文以外にもいろいろな文章を目にし(読み),聞き,書きとめ,あれこれと思いを巡らせて,「こういうことなのかな」と自分の考えを徐々に(ときには一気に)形成する過程が大切です。目の前,身の回りにある文章や事柄(情報)をしっかりと生かした読むことの授業づくりに,改めて取り組んでみたいと思います。
第2章,第3章には,若い先生方を対象に,授業づくりのポイントや,具体的なプランを示しました。しかし,中堅,ベテランの先生方にも,読むことの授業づくりを見直し,再構築・再創造するために,本書の「情報」を存分に活用いただければと思います。新教材に一から挑戦する,ということでは,若い先生方も中堅,ベテランの先生方も,大差はないとも言えますから。
本書は,大阪・国語教育探究の会の会員が執筆しました。わたしが代表を務める国語教育探究の会の大阪支部です。若手,ベテランの教員,指導主事,大学教員が一緒に,月例研究会で国語科実践について議論しています。様々にご意見を賜れば幸いです。
2024年5月 兵庫教育大学大学院教授 /吉川 芳則
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- 明治図書
- 実践例が多く参考になった。2024/8/3070代・嘱託指導主事
- ストンと落ちたことがいろいろありました!2024/7/1330代・小学校教員