- はじめに
- 序章 今さら聞けない道徳の授業の5つの常識
- 1 「要としての道徳の授業」とは
- 2 「道徳の時間」から「道徳科」へ
- 3 「特別の教科 道徳」へ込められた願い
- 4 目標を簡単に読み解く―四つの様相と四つの学習活動
- 5 知っておくべき道徳の歴史
- 第1章 道徳の授業開きがもっとうまくなる5の技
- 1 「道徳の時間とは?」を子供に問う
- 2 リクエスト方式で教科書と出合わせる
- 3 学級全員を授業に参加させる手立てをもつ
- 4 意見をつないで子供をつなぐ
- 5 30秒間の静寂を楽しむ
- 第2章 オーソドックスな道徳の授業がもっとうまくなる8の技
- 6 「基本型」を熟知する
- 7 「基本型」の意図を授業づくりに生かす
- 8 45分間を大まかにシミュレートする
- 9 導入を使い分ける
- 10 子供の発言を資料につなぐ
- 11 気持ちを直接問わず、行為の理由を問う
- 12 悩んでいる場面では、取りうる行為を問う
- 13 授業の最後に余韻を残す
- 第3章 教科書を使った道徳の授業がもっとうまくなる10の技
- 序 主たる教材としての教科書
- 14 挿絵からスタートする
- 15 読みのバリエーションを増やす
- 16 授業前日に宿題を与える
- 17 教材のリアリティを子供に伝える
- 18 発問づくりは「矛盾」をつく
- 19 アドバイス発問で人生を語る
- 20 「いい子の意見」をまず認める
- 21 実在する人の気持ちは、聞かずに調べさせる
- 22 心に残った場面を問う
- 23 時には即実践へと結びつく授業を行う
- 第4章 リアルとファンタジーを見極めた授業構成がもっとうまくなる7の技
- 24 教材の背景にあるリアリティを見抜く
- 25 ファンタジーの世界を壊さない
- 26 ファンタジーを壊さずに人物に共感させる
- 27 序章であらすじを示す
- 28 美しいラストシーンへつなげる
- 29 リアルな世界でファンタジーを感じ取らせる
- 30 いいお話をいいお話として子供たちに伝える
- 第5章 道徳の授業の幅を広げることがもっとうまくなる7の技
- 序 貧弱な思い出に頼らない
- 31 定番を崩す
- 32 導入に意外性をもたせる
- 33 物の後ろに見える人の心に注目させる
- 34 ネタの旬を生かす
- 35 資料から安易に離れない
- 36 教科書を終末で使う
- 37 教科書を導入で使う
- 第6章 道徳の授業に深みを出すことがもっとうまくなる8の技
- 38 多面的に考察させる
- 39 多角的に考察させる
- 40 「価値葛藤」に惑わされない
- 41 セオリーを超える
- 42 情報モラルは「そもそも」を考えさせる
- 43 教師の体験談を教材にする
- 44 チョーク1本で授業をする
- 45 最小限の資料で1時間の授業を組み立てる
- 第7章 道徳の評価がもっとうまくなる4の技
- 46 目標が達成されたかどうかは評価しない
- 47 四つの学習活動に注目する
- 48 通知表所見の3つのタイプを使い分ける
- 49 不定期で学習のまとめや振り返りを書かせる
- 第8章 全ての技を支えるたった1つの思い
- 50 子供たちの幸せを願う
はじめに
教師であれば、だれもが「よい授業をしたい」という思いをもっています。
でも、その思いだけでは、授業の腕は上がりません。どんな職種であれ、自分がその道のプロであるためには、そのための技を習得しなければなりません。
職人の世界には、「技は師匠から盗むもの」という暗黙の了解があります。
教師は、教育の職人(プロ)です。若手教師は、身近にいる尊敬できる先輩教師から、様々な技を学び―時にはこっそりと盗み―、教師としての力量を高めてきました。
しかし、それは、古き良き時代の光景になりつつあります。
この本を手に取った先生方もおそらく実感しているように、教育現場は10年、20年前とは比べようがないほど忙しくなりました。
本来であれば若手育成にも尽力してほしいベテラン教師は、自分の仕事だけで精一杯。若手教師は、教材の準備や授業の展開について相談したくても、だれに相談したらいいのかがわからない。残念ながら、そんな現状が広がっています。
昨今、マネジメントという言葉―もともとはビジネス用語です―を教育界でもよく見聞きするようになりました。マネジメントとは、経営・管理という意味で、最も効果的な方法で目標を達成しようとする営みを指します。
じっくりと子供と向き合い自分自身の指導方法を生み出したり、先輩教師からていねいな指導を受けて指導技術を磨いたりできるのであれば、それに越したことはありません。
けれども、現実は、厳しい状況です。悩んでいても、次の授業はやってきます。準備不足で授業に臨めば、その粗さを子供たちは見抜きます。
『道徳の授業がもっとうまくなる50の技』
道徳授業を毎週行っている先生方に、最も効果的に道徳の授業の技を身に付けてほしい。
そして、子供たちが「道徳っておもしろい」と感じてほしい、
そんな願いを込めて、私はこの本を書きました。
平成30(2018)年は、道徳科元年です。道徳教育史上、最大級の変革がなされる記念すべき年です。前年度との大きな違いは、検定教科書が無償配付されることです。教材が確保されることによって、道徳授業の量的(授業時数の)確保はなされるでしょう。
けれども、領域なのか、教科なのか、特別の教科なのかというのは、道徳授業の枠組論に過ぎません。大切なのは、その中身です。すなわち、授業実践そのものです。
主たる教材である教科書をどのように使えば、魅力ある道徳授業になるのか。
さらに道徳授業を活性化させるために、教科書以外の教材―教師が子供たちのために開発した自作教材―をどのように創り出し、活用していけばいいのか。
本書では、それらの具体的方策を「技」という形で50項目にまとめました。
授業の腕を上げる技は、盗むものではありません。自らが学び、身に付けるものです。
道徳授業ができるのは、私たち教師だけです。
「特別の教科」として道徳授業が注目されている今だからこそ、教室現場から、子供たちの心に響く本物の道徳授業を創出していきましょう。
本書が、子供たちの幸せにつながる道徳授業づくりのお役に立てるのなら幸いです。
2018年4月 /佐藤 幸司
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