- はじめに
- 私たちと現代社会 私たちが生きる現代社会と文化の特色
- 人生一〇〇年時代は空き屋だらけの時代?!
- 人工知能(AI)には確定した定義はない?!
- これからの日本の課題はずばり「相利共生」だ?!
- 「起立、礼、着席」は全国共通じゃない?!
- 私たちと現代社会 現代社会を捉える枠組み
- ネット通販での購入は、クーリング・オフで取り消せる?!
- 私たちと経済 市場の働きと経済
- 「経済学の父」と「日本資本主義の父」は似ている?!
- 時代はダイナミックプライシング?!
- りんご価格の変化は、一本の供給曲線では表現できない?!
- 「中学生はお金がない」から、映画館の料金も安い?!
- 一〇〇年企業の業種別第一位は、貸事務所?!
- 日本は起業に関心のない人が八割?!
- エー、公民的分野で企業会計の学習?!
- 株式投資を考えることは、生き方を考えることだ?!
- 人の経済行動は感情には逆らえない?!
- 「株価の暴落が世界的な恐慌につながった」では納得いかない?!
- 私たちと経済 国民の生活と政府の役割
- 家畜が絶滅しないのは、「財産権」のおかげ?!
- フランスの付加価値税、バターは五・五%でマーガリンは二〇%?!
- MMTが、財政政策の新しい「見方・考え方」?!
- シンガポールの救急車の料金は医師の判断で決まる?!
- 若くして年金を受け取れる制度があるって本当?!
- 成年年齢引き下げで、高校生もローンが組める?!
- 自給率の数値だけで、食の安定供給や豊かさは評価できない?!
- 私たちと政治 人間の尊重と日本国憲法の基本原則
- 基本的人権の尊重、国民主権、平和主義が三大原理じゃなかった?!
- 「新しい人権」はそんなに新しくない?!
- 私たちと政治 民主政治と政治参加
- 二院制のG7参加国は世界では少数派?!
- 多数決では決められない場合がある?!
- 「天皇の国事行為」で衆議院解散?!
- サミットに出席するのは、国王?! 大統領?! 首相?!
- 裁判員選任手続きの無断欠席者は三割超え?!
- 選挙の洗礼なしに町村議会議員になれる?!
- 生徒会選挙でおなじみの立会演説会、かつては認められていた?!
- 七〇歳と二〇歳では、三倍の票数の差がある?!
- 一八歳選挙権は上から降ってきた?!
- 私たちと国際社会の諸課題 世界平和と人類の福祉の増大
- 外交のパーティーには悩みがつきもの?!
- 「国旗」「国歌」にはトリセツがある?!
- 「東京五輪音頭」の歌詞は公募で決まった?!
- 「フェアトレード」と「公正取引」は意味が違う?!
- 「戦争の放棄」をうたった条項を有する憲法はけっこうある?!
- 私たちと国際社会の諸課題 よりよい社会を目指して
- すべての幸福な国は互いに似かよっている?!
- 持続可能な社会の実現は三つの不等式から構想すべき?!
- おわりに
はじめに
先日、高等学校で担任をしていた学年の同窓会が開かれました。元生徒たちは三〇代後半、仕事も私生活もそれぞれに充実している様子でした。
この会に参加していた一人が、次のように言ってくれました。
「先生の授業の内容はほとんど忘れたけれど、国連の話だけは覚えています。『United Nationsを〈国際連合〉と訳して誰も不思議に思わないけど、これを直訳すれば〈連合国〉だよね。だって、United Kingdomは〈連合王国〉と訳すのが普通でしょう。ちなみに、中国では、United Nationsは〈聯合国〉です』と説明してくれましたね」と。
どういう状況の中でこの話をしたのか、まったく記憶にありません。おそらくは、「政治・経済」の国際政治の単元で、雑談として話したのではないかと思います。それにしても、二〇年近く前のことを覚えている生徒がいたなんて、教師冥利に尽きます。
雑談は、英語で言えばアイドル・トーク(idle talk)です。アイドルはアイドリングのアイドル、つまり、暖機運転です。自動車のエンジンが、最適に駆動できる温度になるまで暖めるのがアイドリングです。
おそらく、先生が語る雑談も、暖機運転、アイドリングかもしれません。授業前、あるいは授業中に、生徒が学習に意欲的に取り組めるように、教室の雰囲気を暖めるために話すのが雑談です。
雑談は「雑ぱくな談話」ですから、文字通りアイドル(くだらない、無意味な)な内容でもよいのかもしれません。しかし、先生方が授業中に語る雑談には、学習内容の中核に関わる内容が含まれているはず、と考えます。
例えば、経済単元の授業で、次のような雑談をする先生もいらっしゃるでしょう。
「外国為替相場、昨日は一ドルいくらだった? 為替相場は、毎日、変動しているよね。だから、変動相場制と言います。でも、一九七一年までは、一ドル=三六〇円でした。ドル円相場は固定されていたのです。資料集のグラフを見ると、そうなっているよね。これを、固定相場制と言います。では、なぜ一ドルは三六〇円だったのでしょう? そうだよね、日本の通貨単位は円だから」。
この話に、生徒はすぐに「へぇー」と反応してくれるでしょうか。期待したような反応がなければ,「この話はなぜおもしろいかというと…」と直ちに説明する必要が生じます。当然、話題は国際通貨基金(IMF)やドッジライン、ニクソンショックなどに及ぶことでしょう。
本書には、日々の授業内容に直結し、公民的分野に対する生徒の学習意欲を喚起するような雑談ネタを集めました。どうぞ本書を参考に、先生方それぞれにアレンジを加えて、生徒の皆さんに雑談を披露してください。それによって毎日の授業が活性化し、「公民好き」の生徒が一人でも増えてくれたら、著者としては最高の喜びです。
なお、本書は、二〇二一年から全面実施される中学校の新学習指導要領に基づいた内容構成になっています。公民的分野の「深い学び」を実現する一助となれば幸いです。
/栗原 久
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- 明治図書
- 授業で話したくなり、なおかつ内容の理解に役立ちそうな話がたくさんあり、参考になった。2020/2/420代・中学校教員