Q&Aで学ぶ インクルーシブな学級づくり&授業づくり
多様性を包摂する授業UDの視点から

Q&Aで学ぶ インクルーシブな学級づくり&授業づくり多様性を包摂する授業UDの視点から

新刊

総合6位

一人ひとりが輝く教室をつくる41のやさしいヒント

学びにくさのある子もそうでない子も、安心して学べるインクルーシブな教室をつくるためのヒントを41のQ&Aでまとめました!多様性を包括する授業UDの視点から、「一人ひとりが輝く」教室をつくるためにできることを理論と実践の視点から超具体的に解説します。


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PDF
ISBN:
978-4-18-277616-8
ジャンル:
特別支援教育
刊行:
対象:
小・中
仕様:
四六判 240頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年11月22日

CONTENTS

もくじの詳細表示

はじめに
第1章 理論編 押さえておきたい!インクルーシブ教育の基礎知識
(1) 文部科学省調査「8・8%」について
Q 現場の感覚ではもっと多いように感じるのですが…
Q 支援が必要なのは発達障害の子だけですか?
Q 学年が上がるにつれて割合が減るのはなぜですか?
(2) 発達障害に関するギモン
Q 「発達障害」にはどんなものがありますか?
Q 「読み書き障害」とは何ですか?
Q 「ADHD」とは何ですか?
Q 「自閉スペクトラム症」とは何ですか?
Q 「DCD」とは何ですか?
Q 「HSP」とは何ですか?
(3) 合理的配慮とユニバーサルデザイン
Q 合理的配慮とは何ですか?
Q どんな内容や程度が合理的配慮になりますか?
Q 基礎的環境整備とは何ですか?
Q 授業のユニバーサルデザインとは何ですか?
Q 授業UDの具体的な手立てを教えてください
Q 授業UDとUDLはどこが違うのですか?
(4) 多様性を包摂するインクルーシブ学級とは
Q インクルーシブな授業や学級とはどんなものですか?
Q 「令和の日本型学校教育」と関係はあるのですか?
Q これからのUD授業づくりはどのようなものになりますか?
第2章 実践編 取り組もう! インクルーシブな学級・授業づくり
(1) UD授業づくり・学級づくり
Q UD授業づくりとは何ですか?
Q 障害のない子どもにとっても有効ですか?
Q 国語授業のUD化について教えてください
Q 算数授業のUD化について教えてください
Q 音楽授業のUD化について教えてください
Q 英語授業のUD化について教えてください
Q 学級全体をまとめるために必要なことは何ですか?
(2) 一斉授業内でできる個に応じた配慮
Q 読み書き障害のある子にはどんな配慮が必要ですか?
Q 集中が途切れることを防ぐ方法はありますか?
Q 話し合い活動を促す方法はありますか?
Q 板書で注意すべきことはありますか?
Q 漢字が苦手な子にはどんな支援ができますか?
Q 算数が苦手な子にはどんな支援ができますか?
Q 授業逸脱行動への対応方法を教えてください
Q 交流や共同学習の際のポイントはありますか?
Q ICTを活用してどんな支援ができますか?
(3) インクルーシブな学級づくり
Q インクルーシブな学級づくりのポイントを教えてください
Q 発達障害のことを他の子どもに説明すべきでしょうか?
Q 発達障害への理解を促すために何ができますか?
Q 「ずるい」と言われたらどうしたらよいですか?
Q 保護者と関わる際のポイントは何ですか?
Q 保護者に転籍等を説明する場合に気をつけることは何ですか?
Q コーディネーターの役割について教えてください
おわりに
参考文献一覧
執筆者一覧

はじめに

 子どもたちの多様な背景やニーズを理解し、すべての子どもが学びやすい授業や学級づくりを目指すことは教育者の使命です。教室の扉を開けると、そこには多様な個性をもつ子どもたちが待っています。社会はますます多様化し、様々なバックグラウンドをもつ子どもたちが1つの教室に集っているのです。ある意味で教室は社会の縮図です。そこではすべての子どもが公正に学ぶ権利をもち、それぞれが互いに学び合い成長することが求められます。そのために教師は、子どもの多様性を包摂することができるインクルーシブな学級・授業づくりを行っていく必要があります。

 インクルーシブな学級・授業づくりを行うためには、日々の授業づくりや学級経営にユニバーサルデザイン(UD)の視点をもつこと、すなわち「教育のユニバーサルデザイン」を図っていくことが求められます。UDは建築関係の用語として始まったものですが、現在は様々な分野において適用される考え方になっています。インクルーシブな社会を実現するために不可欠な理念です。

 日常的にUDと同義の用語として使われるものに、「バリアフリー」があります。研修会等でUDとバリアフリーの違いを受講者に尋ねると、多くの人が「同じ意味で使っていた」という反応を返してきますし、「バリアフリーは障害者向け、UDは万人向けという意味では」という回答を返してきます。UDとバリアフリーの違いを端的に述べるならば、バリアフリーは「既存の障壁を取り除く」ことなのに対し、UDは「最初から全員が使えるように設計する」という違いになります。例えば、段差がある箇所にスロープを設置するのはバリアフリーですが、最初から段差がないように設計することがUDということになります。残念ながら、この世界の様々なものはマジョリティの人向けにつくられていることが多く、マイノリティの人にとっては使いにくい・不便ということが多いのです。UDの本質はマイノリティの立場に寄り添って、もう一度設計段階から見直し、誰もが使いやすい、公平に利用することができるデザインを追求する、ということにあるのです。

 この“誰もが使いやすい、公平に利用することができるデザイン”というUDの理念を、学校教育における授業づくりや学級経営に導入していくのが「教育のユニバーサルデザイン」です。いうまでもなく学校教育はすべての人に与えられた権利であり義務でもあります。すべての人が、その背景や状況に関係なく、公平に教育を受ける機会が与えられることが大切です。そのためには、どのような能力や特性をもっていても、学習を進めることができる環境を整えることが必要なのです。教育におけるUDとは、先ほどのUDの本質に沿って、学校教育のあり方をマイノリティの立場に寄り添って、その設計段階から見直していくことにあります。

 本書では、これからの学校教育において不可欠となる教育のユニバーサルデザインについて、Q&Aの形式でわかりやすく解説をすることを目指しました。第1章ではUDを目指す上で前提となる基礎知識についてまとめています。発達障害に関する最新の情報や合理的配慮との考え方など、学校現場で疑問に上りやすい事柄について詳しく解説しています。続く第2章では、実際の学校現場を想定しながら、インクルーシブな学級・授業づくりについて具体的にポイントを紹介しています。インクルーシブな学級・授業づくりとはどのようなものか、ぜひ本書を通じて具体的にイメージしていただければ幸いです。


  2024年8月   /菊池 哲平

著者紹介

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熊本大学大学院教育学研究科教授

博士(心理学)、臨床心理士、特別支援教育士スーパーバイザー。九州大学大学院人間環境学府博士後期課程単位取得退学後、日本学術振興会特別研究員 PD、熊本大学准教授を経て現職。発達障害、特に自閉症スペクトラム障害のある子どもの障害特性の理解と支援方法を中心に研究しながら、地域の学校現場における授業づくり・学級づくりへの助言・アドバイスに携わる。日本授業 UD 学会理事、日本ダウン症学会理事、日本 LD 学会評議員。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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