- まえがき
- 第1章 学級会のシステムづくり
- 学級会の目的を語る
- 学級会のやり方を指導する
- 問題意識をもてる議題を用意する
- 子どもに任せる流れをつくる
- 学級会までの流れと原則
- コラム 道徳と学級活動の違い
- 第2章 学級会の指導のポイント
- 1 計画委員会の指導のポイント
- 計画委員会の役割分担
- 計画委員会の交替システム
- 学級会の進行マニュアル
- 司会への指導のポイント
- 黒板書記への指導のポイント
- ノート書記・計時・計画委員会全体への指導のポイント
- 2 事前指導のポイント
- 問題の発見@ 子どもから問題を集める
- 問題の発見A 教師から課題を提案する
- 議題の決定
- 活動計画の作成
- 議題への関心を高める
- 提案理由の設定
- 3 「学級会の時間」の指導のポイント
- 机の配置
- 提案理由を意識させる
- 教師の位置と指導・支援
- 板書の指導
- 合意形成の仕方
- 先生の話
- 4 事後指導のポイント
- 決めたことの実践
- ふり返り
- 次の課題発見へ
- コラム 発言するのは教師でさえ尻込みする!?
- 第3章 学年別 学級会の指導のポイント
- 1 低学年の学級会の指導
- 絵本や写真を活用し,話し合うテーマについての問題意識を高める
- 2 中学年の学級会の指導
- 子どもたちが中心になって運営できる学級会をめざす
- 3 高学年の学級会の指導
- 子どもたちだけで運営できる「学級会システム」
- コラム 多数決の怖さ
- 第4章 学級会の実際
- 1 学級や学校における生活上の諸問題の解決
- 【低学年】立場を明確にして,全員参加の学級会にする
- 【中学年】臨時学級会で子どもの切実な思いに応える
- 【高学年】問題に対する切実感を高める
- 2 学級内の組織づくりや役割の自覚
- 【低学年】自分たちに必要な係だと実感させる話合い活動
- 【中学年】不十分さを自覚させてから,学級会のテーマを提示する
- 【高学年】「具体的な行動」について検討させる
- 3 学校における多様な集団の生活の向上
- 【低学年】異学年交流の場を生かす
- 【中学年】子どもの力で話合いができる工夫を!
- 【高学年】全校で取り組む活動をダイナミックに話し合わせる
- コラム 国会のヤジと学級会
- 第5章 学級会をさらに円滑にするアイデア
- 1 話合いを活性化させるアイデア
- 自分の考えを発表できない子への支援のアイデア
- 話合いが停滞してきた時のアイデア
- 「意見を言う」から「説得する」へ
- 子どもの意識を高めるアイデア
- 2 話合いをスムーズに進行させるアイデア
- 論点がずれ始めた時に修正するアイデア
- 論点をずらさないための「メモ力」を高めるアイデア
- 時間内に話合いを終わらせるようにするアイデア
- 3 話合いにつまずきを見せる子への指導・支援アイデア
- 思いついた時にすぐ発言する子へのアイデア
- 仲のよい友達に反論できない雰囲気を打破するアイデア
- 折り合いをつけられない子を納得させるアイデア
- コラム 書記長って!?
- 第6章 いろいろな話合い活動
- 1 ディベート
- ディベートとは?
- ディベートの攻防
- 審判団による判定
- 2 クラス会議
- クラス会議とは?
- クラス会議の実践
- こんな時どうする?
- 3 ファシリテーション
- ファシリテーションとは?
- ワールド・カフェの手法
- 学級会とファシリテーション
- あとがき
まえがき
学級会をしていますか?
あなたの教室では,学級会をしていますか?
学級会とは,学級活動の活動形態の1つであり,子どもによる司会によって学級全員で行う話合い活動です。しかし,私の周りにいる教師や,知り合いの教師に聞いてみると,定期的に学級会を行っている教室はほとんどありません。あっても,代表委員会の議題を学級で検討する時だけです。それも,話合いの指導がなされないままに行われるので,意見が活発に出ることもなく,「原案どおり」で終わることがほとんどです。
2018年に小学校で,2019年に中学校で道徳が教科化されましたが,その理由の1つに,年間35時間の道徳授業がきちんと実施されていないということがありました。ところが,きちんと実施されていなかったのは,道徳だけではなかったのです。学級活動の時間に行われる「学級会」も,実は多くの教室できちんと実施されていないのです。(不思議なことに,そのことはあまり問題になっていませんが)
なぜ,学級会は実施されていないのでしょうか。
学級会が行われない理由
まず,教師が
学級会の指導の仕方がわからない
ということが大きいでしょう。
やり方がわからないのであれば,学級会を避けるのは当然です。初任者研修でも,学習指導要領に関する学級活動の目標は学んでも,実際の学級会を運営するところまでは面倒をみてくれません。手取り足取り教えてくれる同学年の教師がいればよいのでしょうが,そこまでやる教師は少ないでしょう。
次に,
学級会の指導は,面倒くさい
と感じている教師が,実はかなり多いからです。
学級会は,突然,教師が議題を提示し,「今からこのことについて話し合いなさい」と言っても,できません。無理やりやっても,子どもたちはなかなか発言しないし,司会は全然進められないでしょう。そうしているうちに,時間がたりなくなって次の時間も使わなくてはならなくなる……。
このような「学級会あるある」をなくすには,綿密な計画による子どもたちの準備や教師の仕掛けが必要です。しかしそれは,学級会指導に疎い教師や関心の低い教師にとっては,大変面倒なことです。教師が主導して結論を出す方が,よほど手っ取り早いのです。
最後に,
学級活動の時間が「何をやってもよい時間」になっている
からです。
学級活動も各校にカリキュラムがあり,年間35時間(1年生は34時間)行うことになっています。しかし実際には,学校行事の準備や感想を書く時間に使われたり,席替えや教科の学習の補充の時間になったりしています。
それは,「学級活動」という名称により,何をする時間なのかがあいまいになり,「これも学級活動の時間でいいだろう」と考えてしまいがちになるからです。いっそのこと,「学級会の時間」という名称だったらわかりやすいのですが,「学級活動」の時間のすべてが学級会ではありません。その内容は非常に多岐にわたっており,給食指導を含めた食育指導や清掃,学校図書館等の活用などもすべて「学級活動」に含まれているのです。およそ教科以外の内容をすべて含めてしまっているということも,教科に入りきらない雑務を「学級活動」で処理しようとする遠因になっています。結果,「学級活動」を複雑であいまいにしてしまい,学級会の時間が減ってしまっているのです。
以上のような理由から,学級会が行われていない現状があります。そして,その結果,話合いの文化が根づいていない教室が全国にあるのです。
教室に「話合いの文化」を
本書では,「学級会の指導のやり方がわからない」という教師のために,学級会の基本的な指導方法やその考え方を示しました。「わからない」「面倒くさい」と思っていた教師も,やり方がわかれば「やってみようかな」と関心を示すかもしれません。なにより,年間を通して学級会を行っていくと,子どもたちの育ちがよく見えてきます。子どもの成長を実感すれば,より積極的に学級会に取り組もうとする意欲がわくでしょう。
2020年度から小学校で完全実施される新学習指導要領では,「主体的・対話的で深い学び」が求められています。国語や算数など,教科の授業でも積極的に対話活動が取り入れられています。それなのに,話合い活動の主な活動である「学級会」がおざなりにされている現状を,そのままにしておくわけにはいきません。本書が学級会の指導に躊躇していた教師が,少しでも学級会の指導に取り組むきっかけになれば幸いです。
教室に「話合いの文化」が定着することを願ってやみません。
/辻川 和彦
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- 明治図書
- 国政研の特別活動のの資料とリンクしている点が多く、わかりやすかった。2024/8/540代・小学校教員
- 学級会のマニュアル作成に活かすことができ、児童が主体的に会を運営することができた。2024/5/2650代・小学校教員
- 今後の参考にします。2023/8/541歳 中学校教師
- とても参考になりました。2022/4/620代・小学校教員