- まえがき
- Chapter 1 「伝え方」にこそ学級経営のカギはある
- 01 伝え方一つで学級は左右される
- 02 全体指導と個別指導を使い分ける
- 03 伝え方に必要なコツ
- 04 コツ@ タイミング
- 05 コツA 場所
- 06 コツB 回数
- 07 コツC 話す言葉
- 08 コツD 声のトーン
- 09 まずは事前指導の伝え方で種を植える
- 10 1on1で心を大きく動かす
- 11 「何を言うか」よりも「誰が言うか」を意識する
- 12 色んな配慮をした伝え方を身につける
- Chapter 2 こんなとき、どう伝える? 学級全体への「伝え方」
- 01 学級開きで担任としての思いを伝えたいとき
- 02 自ら整理整頓ができるようにさせたいとき
- 03 時間を守らせたいとき
- 04 ルールの大切さを伝えたいとき
- 05 言葉遣いが気になるとき
- 06 挨拶を習慣にさせたいとき
- 07 男女の壁を壊しておきたいとき
- 08 特定の子への不平・不満が募ってきたと感じたとき
- 09 忘れ物が目立ってきたとき
- 10 学級代表や委員会などに立候補する子を募りたいとき
- 11 差別や偏見をなくしたいとき
- 12 運動会などの行事で気持ちを高めたいとき
- 13 修学旅行など宿泊を伴う行事を迎えるとき
- 14 特定の子ばかりが頑張っているとき
- 15 他の先生と上手くいっていない様子が見えたとき
- 16 物損があり、誰がやったか分からないとき
- 17 誰かのものが見当たらなくなったとき
- 18 こそこそ話が見られるとき
- 19 片付けができていないとき
- 20 孤立する子が出てきたとき
- 21 「いじめはダメ」と伝えたいとき
- 22 クラス全体をグッとまとめたいとき
- 23 クラスメイト同士での注意が激しくなってきたとき
- 24 自信がない子たちに一歩を踏み出させたいとき
- 25 長期休み明けに学校生活をリスタートするとき
- Chapter 3 こんな子に、どう伝える? 子ども個別への「伝え方」
- 01 みんなの前で発表したいけれどなかなかできない子
- 02 リーダーになりたいけれど空回りしてしまう子
- 03 友だちとよく喧嘩になってしまう子
- 04 なりたい係や委員になれなかった子
- 05 学級リーダー(学級委員)になった子
- 06 宿題忘れがなかなか減らない子
- 07 忘れ物が多い子
- 08 思いもよらない形で友達を傷付けてしまった子
- 09 教師の言うことをなかなか聞けない子
- 10 怒りの感情が前面に出てしまう子
- 11 一生懸命友達を助けている子
- 12 友達への注意がついキツくなってしまう子
- 13 発言内容が気になる子
- 14 相手によく手が出てしまう子
- 15 習い事が多くて忙しそうにしている子
- 16 受験勉強に必死になっている子
- 17 上から目線のような言動が目立つ子
- 18 遊びや授業での勝敗へのこだわりが強い子
- 19 反抗的な態度を繰り返す子
- 20 授業で活躍した子
- 21 宿泊体験学習中に指導が必要になった子
- 22 誰も見ていないところで素敵なことをしている子
- 23 教室で一人で読書をすることが多い子
- 24 成績を見て落ち込んでいる子
- 25 新年度になっても会いに来る昨年度のクラスの子
- あとがき
まえがき
皆さんは、伝え方を意識して子どもたちに話をしていますか?
私たちは、毎日たくさんのことを子どもたちに伝えていますよね。教科に関する内容はもちろん、生活指導から雑談まで、様々なことを子どもたちに話し、子どもたちはそれを聞いています。だからこそ、伝え方を意識し、身につけておくということは、教師にとって必要なことの一つです。
テレビの連続ドラマや映画を見ていると、そこから何かしらのメッセージを受け取ることがありますよね。例えば、「この映画から友情のすばらしさを感じられたな」「このテレビ番組からは、改めて命の大切さを学んだな」といった感じです。これらは、脚本や演出を通して、それらのメッセージを見ている人たちに届けているわけです。しかし、一気に人気が出るか、そうでないかを左右するのは、その「伝え方」です。伝え方一つで、見ている人や聞いている人の心を動かすことができるのですから、内容はもちろんのことながら、その方法を磨くことは教育のプロとしては欠かせないと思うわけです。
また、伝え方を通して子どもとの関係をより良いものにしていくことが可能だと考えています。教師であれば誰もが、子どもたちの気持ちを引き出して、それに対して的確なアプローチをしていくことを目指して関わっていることと思います。しかし、実際には簡単なことではありません。子どもも人間ですし、感情が伴ってきます。教師と児童・生徒という関係性であるからこそ伝わっている部分も少なからずあると思いますが、学級経営力を高めていく上では、立場だけに頼っていては難しい局面が必ずやってきます。そのときに頼りになるのが伝え方というわけです。
一つ例に挙げて考えてみましょう。「整理整頓をしましょう」というメッセージを子どもたちに届けたいとき、皆さんならどのように伝えますか? シンプルに、そのままストレートに伝えますか。それとも、実際のものを見せながら伝えますか。話の内容に深みを持たせて伝えますか。まず、ここでお伝えしておきたいのは、一つの正解があるわけではないということです。目の前の子どもを見て、その子たちに合った伝え方を選ぶことはとても重要です。ただ、伝え方の選択肢をたくさん持っておくというのは教師として必要だと思っています。先にお尋ねした「整理整頓をしましょう」というメッセージを届けたいときに、ストレートな伝え方しか知らなければ、それが上手く伝わらなかったときに次に打つ手がなくなってしまいます。そうならないように、色々な引き出しを持っておくというのはとても重要なのです。本書では、皆さんに様々な引き出しを増やしていただけるよう、「伝え方大全」という形でいくつもの例を紹介しています。恐らく、皆さんがすでに持っておられる引き出しと異なる伝え方もあるのではないかと思っています。その場合は、ぜひ本書をもとに引き出しとして持っておいていただき、ここぞのタイミングで使っていただければ幸いです。
また、本書の特徴の一つとして、「全体での伝え方」と「個別での伝え方」に章立てを分けています。ここは私なりにとてもこだわっている部分で、全体で話す内容と個別に話す内容で、その伝え方は大きく変わると考えているからです。全体で伝える場合は、全体に一つの色を浸透させるイメージで話しますが、個別に伝える場合はその子に合わせて色を変えていく感覚です。こうすることで、伝え方の内容も大きく変わってくるでしょう。ここでの使い分けも、伝え方においてはポイントになります。自分のクラスの子どもたちを想像しながら読んでいただければと思います。
「伝え方」というのは、子どもとの関係だけでなく、大人同士の関係性の中でもとても大切な働きになりますよね。同じことを伝えるのにも、言葉一つでその伝わり方は大きく異なります。「言い換え」をするだけで伝わり方が滑らかになることも明らかですし、敬語を使うというのは、まさにその一つに当たるでしょう。伝え方の根源にあるのは、言葉そのものです。言葉というのは人の心を豊かにするものです。ですから、伝え方を学ぶ中で、「どのような言葉を使えば、より子どもたちの心を動かせるのかな」と考えることを忘れてはいけません。何度も言いますが、言葉が伝え方を形作るのです。本書の伝え方の紹介の中でも、色々な言葉を使いながら載せています。正直、実際に音声を通してお伝えしたいくらいです。文字だけではなかなか伝わりにくいこともあるかもしれませんが、それでも実際に話をするときを想像しながら読んでいただくだけで、イメージが具体的になると思います。つまり、本書を読み進める中で大切なのは、皆さんが自分の目の前にいる子どもたちを想像するということです。場所、雰囲気などその全てを想像しながら読んでいただくと、皆さんの伝え方は子どもに合ったものになっていくことと思います。本書を読み終えたとき、皆さんの中の引き出しがより充実したものになっていることを願っています。
2024年12月 /山田 航大
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- 明治図書