- はじめに
- 第1章 オランダで見てきたイエナプラン教育
- 01 オランダとイエナプラン教育
- 02 衝撃的な「ブロックアワー」の取り組み
- 03 20の原則から教師としての生き方を振り返ろう
- 04 私の教師としての根っこ
- 第2章 単元進度表のつくり方・週計画の立て方
- 01 つくってみよう単元進度表
- 02 どうやってつくっているの?
- 03 単元進度表を活用した学習の進め方
- 04 週計画の立て方
- 05 週計画のチェックポイント
- 第3章 学ぶ文化を育む教室環境づくり・掲示物
- 01 ミネソタニューカントリースクールを訪れて
- 02 心理的安全性を育むためのポイント
- 03 学ぶ価値観づくりの実践
- 04 学ぶスキルや遊びの実践
- 05 学ぶ環境について
- 06 サポート活動について
- 第4章 ブロックアワーの始め方
- 01 ブロックアワーの4つのステップ
- 02 「学びのバランス」と「かしこいワード」
- 第5章 インストラクションの始め方
- 01 インストラクションの意義や目的
- 02 インストラクションで大事にする4つの「は」っきり伝えること
- 03 教師主体で行うインストラクション
- 04 子ども主体で行うワクワクするインストラクション
- 05 教科書活用型インストラクション
- 第6章 子ども一人一人への目の向け方
- 01 子どもを見る解像度を高める
- 02 ブロックアワー導入期の取り組み
- 03 日々の振り返りで一人一人の解像度を高める
- 第7章 ブロックアワーを取り入れた授業例
- 01 ブロックアワーを取り入れた国語の授業例
- 02 ブロックアワーを取り入れた社会の授業例
- 03 ブロックアワーを取り入れた理科の授業例
- 04 ブロックアワーを取り入れた算数の授業例
- 第8章 学級を安心できる場にするサークル対話
- 01 やってみよう!サークル対話
- 02 サークル対話はバリエーションが豊富
- 03 サークル対話の8つの実践例
- 第9章 探究の柱となるワールドオリエンテーション
- 01 ワールドオリエンテーションを参考に探究する
- 02 ワールドオリエンテーションの7つのステップ
- 03 ワールドオリエンテーションを参考にした探究活動
- 第10章 楽しみ,悲しみを共有する催し
- 01 イエナプラン教育の「催し」
- 02 「催し」を通した学級づくり・学年づくり
- COLUMN
- イエナプラン教育はコンセプトである
- ナゴヤ スクール イノベーションとともに
- どうやって学年で進めてきたのですか?
- スポーツで解像度を高めることを学ぶ
- 単元進度表はどれにするか考えよう 社会編
- ファミリー・ワールドオリエンテーション
- 働き方は変わるのか
- おわりに
- 参考文献
はじめに
私は,名古屋市教育委員会の新しい学校づくり推進室という所で指導主事をしている岩本歩と言います。
きっとこの本を手に取った方は,イエナプラン教育に関心があったり,イエナプラン教育の実践が気になったりする方ではないでしょうか。私が赴任していた名古屋市立山吹小学校はイエナプラン教育を参考にした学校づくり・授業づくりが行われています。公開授業をすると一度に150人近くの先生が集まったり,県外からも多数の視察が行われたりしています。
「公立小学校でここまでのことができるとは!」
「子どもが自立しています。」
といった声が多数届けられています。
公立小学校の取り組みの中で,イエナプラン教育の理念を参考にしながら,子ども中心の学びづくりを進めてきた成果とも言えます。特に注目されているのがイエナプラン教育の「ブロックアワー」という時間です。子ども自身が自ら時間割を組んで,学ぶ場所・学び方・学ぶペースを自分で選んで学んでいく時間です。ブロックアワーでは,子どもたちが目を輝かせて主体的に学びを進めています。
イエナプラン教育には4つの基本活動があります。対話,仕事,遊び,催しです。今回は,ブロックアワーの取り組みに焦点をあてながら,私が教室で行ってきた実践について紹介していこうと思います。宜しくお願いします。
2019年12月11日の中日新聞に,河村たかし市長が私の授業を参観したことを報じる記事が掲載されました。
子どもたちが黒板に貼られた各教科の到達目標を確認するなどしながら,自らいつ・どの教科を学習するかを決め,輪になるなどして学ぶ姿を見て,市長は「楽しそうに授業ができていた。今の制度の中でもできるということ。先生の中からこういうことをやろうという雰囲気が出てきたのは良いことだ」と話されたとのことでした。
名古屋市の河村たかし市長が教室に訪れたことで,教室で行われていたイエナプラン教育の「ブロックアワー」が注目され,テレビ番組や新聞の取材が続きました。
「みんな一緒に同じことを」という画一的な授業を行うのではなく,子どもたち一人一人が時間割をつくって授業を進めていることが名古屋市の公立小学校で取り組まれていると大きく注目されました。
子どもたちは,各科目の単元目標と学習内容を見ながら自分で計画を立て,それぞれのペースで好きな順番に学んでいきます。最初は,このやり方に慣れなくて,「この学び方は本当に大丈夫?」という心配の声もありました。
しかし,ブロックアワーを進めていくと,「このやり方なら『みんな違うから,人と比べなくていい』という気持ちになる。先生,この勉強方法がいろんな学校に広がっていくといいのになあ。」と子どもたちは目をキラキラ輝かせて話してくれるようになりました。
また,何より先生である私も幸せになりました。
ブロックアワー中は,子ども一人一人に目配りしながら,単元のポイントを解説。各自の進度を把握し,サポートに徹することができます。じっくりと子ども一人一人と話しながら授業が進められる幸せを日々味わえました。
教室に入って,「先生だぞ!!」という管理的な私の姿ではなく,「一人の人間としての私」が教室にいました。いつも自然体でにこやかに教室にいられるようになりました。
ブロックアワーが終わると,子どもたちも先生も「あっという間に終わった。」や「この続きを家でもやりたい。」と話すようになります。先生がぐいぐいと引っ張っているようなことはなく,子ども自身が自分のやる気スイッチを押して,学びに向かっていきます。
一人一人の子どもに応じた学びを深める方法を模索していた時に出会ったのが,オランダで普及する先進教育イエナプランでした。
名古屋市では,1つの学級で行われていたブロックアワーという取り組みが,学年全体で,学校全体で,そして自治体のいくつかの公立学校で大きく広がっています。
私が学級で取り組んできた実践が,今では市内の多くの先生方や学校に配信されています。
また,中央教育審議会の「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して〜全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現〜(答申)」も追い風となっています。
イエナプランは,ブロックアワーだけが全てではありません。4つの基本活動の中に,コミュニティづくりを行うサークル対話,ワールドオリエンテーションという世界に目を向けて学ぶ探究学習,子ども同士の関係性を育む遊びなどの多種多様な教育活動があります。
また,どんな子どもに育てていきたいのか,どんな社会にしていきたいのか,どんな学校にしていきたいのかという明確な理念をもった教育でもあります。
本著で紹介した取り組みが「イエナプラン教育だ!」というわけではありません。
私自身がイエナプラン教育のコンセプトを学び,多くの諸先輩方の実践などを参考にしながら,私の目の前にいるクラスの子どもたちとともに取り組んできた実践をご紹介しています。
ぜひ,本書を軸に,イエナプラン教育のコンセプトを大事にした公立小学校での取り組みが進んでいきますように。
著者 /岩本 歩
まずは毎時間でなく,一週間の中で1時間でも実践できたらいいと思った。