- まえがき
- 第1章 教室の環境整備
- 1 教室環境の整備原則は?
- 背景要因1 わかりにくい教室環境である
- 背景要因2 わかりにくい人的環境である
- 2 座席位置決定の配慮ポイントは?
- 背景要因1 集中できない生徒がいる
- 背景要因2 環境の変化で不安になる生徒がいる
- COLUMN インクルーシブな教育
- 第2章 コミュニケーション・自己理解
- 1 思ったことをすぐに口に出して表現する生徒への指導ポイントは?
- 背景要因1 状況理解が難しい
- 背景要因2 他者感情理解の苦手さ
- 2 困っても人に頼れない生徒への指導ポイントは?
- 背景要因1 何に困っているのかがわからない
- 背景要因2 恥や罪悪感から人に頼れない
- 3 自分自身の状況を理解しにくい生徒への指導ポイントは?
- 背景要因1 全体の状況が理解できない
- 背景要因2 状況判断ができないか,間違えてしまう
- COLUMN 通級による指導
- 第3章 生徒指導
- 1 特定の生徒や教師への攻撃がある子どもへの指導ポイントは?
- 背景要因1 攻撃することで環境が変化する
- 背景要因2 感情のコントロールができない
- 2 絶対に自分自身の非を認めない生徒への指導ポイントは?
- 背景要因1 認知の偏りがある
- 背景要因2 周囲の人にも気持ちがあることがわからない
- 3 忘れ物が多かったり,指示等をすぐに忘れてしまったりする生徒への指導ポイントは?
- 背景要因1 言語的短期記憶などに弱さがあり,言葉や数の情報を覚えておくことができない
- 背景要因2 学びの構えの歪みから,学習への興味が失せて学習準備や他者へ関心が向けられない
- 4 特別指導を受けている発達に課題がある生徒と保護者への指導ポイントは?
- 背景要因1 場の雰囲気の読み取りが苦手で,感情のコントロールに課題がある
- 背景要因2 保護者にも発達に課題がある場合がある
- COLUMN ワーキングメモリ
- 第4章 授業
- 1 英単語が覚えられない,英語の学習に苦戦している生徒への対応ポイントは?
- 背景要因1 フォニックスを知らない
- 背景要因2 英語の音節感覚がわからない
- 2 ノート等に写すことが難しい生徒への対応ポイントは?
- 背景要因1 構造的に理解していない
- 背景要因2 読み書きに困難を生じている
- 3 説明を聞くだけでは理解しにくい生徒への対応ポイントは?
- 背景要因1 言語的短期記憶や言語性ワーキングメモリに弱さがあり,言葉や数の情報を覚えておくことができない
- 背景要因2 ワーキングメモリに弱さはないが,抑制やシフトの力が弱く,注意のコントロールがききにくい
- 4 課題を提出できない生徒への対応ポイントは?
- 背景要因1 課題が能力に見合っていない
- 背景要因2 締切までに課題を出す習慣がない
- 5 固まってしまい,動けない,話せない生徒への対応ポイントは?
- 背景要因1 場面緘黙がある
- 背景要因2 カタトニア症状が見られる
- 6 自己表現が難しい生徒への対応ポイントは?
- 背景要因1 吃音
- 背景要因2 コミュニケーションの問題
- 7 入退院を繰り返すなど,学習の積み重ねが難しい生徒への対応ポイントは?
- 背景要因1 入院や療養による学習空白と意欲低下
- 背景要因2 公的な教育サポートの不足
- 8 協同的な学習,グループ活動を嫌がる生徒への支援ポイントは?
- 背景要因1 講義形式がルーティンと意識されている
- 背景要因2 協同学習への参加自体に困難がある
- COLUMN 発達障害者支援センター
- 第5章 連携・接続
- 1 学校全体で特別支援教育を進めていくための推進ポイントは?
- 背景要因1 公開授業の自己目的化
- 背景要因2 「情報量=教員のやる気」の思い込み
- 2 教科担任,関連教員間での連携ポイントは?
- 背景要因1 学年や学科を越えた情報共有がない
- 背景要因2 生徒を支援する風土が確立されていない
- 3 専門機関との連携ポイントは?
- 背景要因1 専門機関や関係機関について知る
- 背景要因2 生徒本人に関することを知る
- 4 高等学校卒業までに生徒に教えたい社会資源とその指導ポイントは?
- 背景要因1 自立への過程はイメージしにくい
- 背景要因2 当事者にとってわかりにくい制度
- あとがき
まえがき
こんにちは。青山新吾と申します。
このたび,堀裕嗣さんと一緒に『特別支援教育すきまスキル 高等学校編』を編集させていただきました。「特別支援教育すきまスキル」は,既刊の小学校下学年編と小学校上学年・中学校編に続く3冊目となります。お手に取っていただきありがとうございます。
2007年に学校教育法の一部改正があり,特別支援教育は法律に位置づけられて本格的に始まりました。それから十余年が過ぎ,時代はインクルーシブ教育システムを構築し,共生社会の形成に向けての教育を進めています。しかし,実際には,高等学校の現場で特別支援教育が十分に機能しているとは言えないように思うのです。
その理由は多岐にわたっています。中でも,その大きな理由として,高等学校の教員が,学校現場の実態に応じた特別支援に関わる基礎的なスキルを持ち得ていないことがあげられるでしょう。ここで言っている基礎的スキルとは,普通の教員が,普通に行えるレベルのものを指しています。特別支援教育を専門的に深く学んでいる一部教員だけが行えるものを指してはいません。
本書は,学校現場で日常的に目にする光景に対して,誰が行ってもこれだけはやりたいという基礎的スキルを整理し,提供することを目的としています。また,高等学校ならではの現場の実態や,生徒たちの卒業後の進路等を視野に入れた基礎的事項についても触れています。
しかし,本書は単なるスキルやアイディア紹介の書籍ではありません。学校現場でよく聞かれる「困っているのですが,どうしたらよいですか?」という問いに,すぐに応えるものではありません。そうではなく,スキルを導き出した思考の仕方も併せて示していくものになっています。
まず本書では,学校現場の日常の中で生じそうな状況をピックアップしました。そして,それぞれに応じて
・その状況の背景要因の分析
=なぜその状況が生じているのかを読み解くこと
・そのために知っておくべき知識
・その状況に対しての
@集団に対する指導スキル A個別の支援スキル
をパッケージにして示しています。これは,いかなる状況に対しても,教員が思考する手順を示しているのです。
困った状況に対して,すぐに指導や支援を行うのではなく,まずは背景を読み解いていきます。また,何でも個別に支援するのではなく,その状況が生じている集団全体にアプローチを試みます。同時に,個別の支援も検討していくのです。特別支援においては「集団の中の個」という見方が重要です。本書で私たちは,集団と個のバランスを意識して,スキルを学んでいくことを提案しています。この提案が,多くの支援を要する生徒たちだけではなく,その周りのすべての生徒たち,そして関わる多くの大人にとって,少しでも役立つものになれば幸せです。
/青山 新吾
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- 明治図書
- 教室全体の授業を進めながら、グレーゾーンの生徒をどうフォローしていけばよいか、具体的な工夫がとても参考になりました。2020/7/17匿名希望