- 刊行に寄せて
- /嶋野 道弘
- はじめに
- /田村 学
- 第1章 これから求められるスタートカリキュラムとは
- 1 第3ステージのスタートカリキュラムを全ての先生方が実現するために
- 2 第3ステージのスタートカリキュラムとは?これから求められるスタートカリキュラムのイメージ
- 3 ゼロからのスタートじゃない!たっぷりと学んできている子どもたち
- 4 スタートカリキュラムはこうやってつくる!スタートカリキュラムの魂を形にする
- 第2章 週ごとによく分かる!活動アイデア
- 第1週
- 第1週目の週案例
- 1 【安心をつくる時間・学校行事】安心してね(入学式) ともだちいっぱいできるかな?
- 2 【あそびタイム】朝の遊び きょうは なにしてあそぼうかな
- 3 【安心をつくる時間】なかよしタイムの取組 なかよしタイムで もっとなかよく
- 4 【生活】学校のはてな はてなをかいけつ みんなでかいけつ
- 5 【学級活動】帰りの支度・下校指導 みんなでなかよくかえろう
- 6 【音楽】歌を歌おう・名前遊び うたでなかよし
- 7 【学級活動・学校行事】避難訓練 ひなんくんれんってなあに?
- 8 【生活】学校探検 がっこうのなかを ぼうけんしたいな
- コラム 入学式後の言葉かけ
- 9【生活】学校探検 こんなことあったよ
- コラム 松村先生の学級だより〜その1〜
- 10 【国語】ひらがなの学習 「あいうえおうさま」であいうえお
- 11 【学級活動・学校行事】着替え・身体測定 きがえてみよう
- 12 【算数】数の学習(仲間づくり) どんななかまができるかな?
- 13 【国語】お話しよう きょうのテーマはなあに?
- コラム 松村先生の学級だより〜その2〜
- 第2週
- 第2週目の週案例
- 1 【生活】学校探検 きゅうしょくのはてな
- 2 【図工】大きな紙で遊ぼう おおきなかみでわっくわく
- 3 【体育】みんなで遊ぼう ひろいこうていでいっぱいうんどうしよう
- 4 【算数】数の学習 10までのかず
- 5 【生活】学校探検 がっこうを たんけんしよう
- 6 【国語】よろしくね めいしをつくってこうかんしよう
- 7 【生活・国語】学校探検 めいしをわたしてなかよくなろう
- 8 【図工・算数】わたしのこと教えるね じこしょうかいカードをつくろう
- 第3週
- 第3週目の週案例
- 1 【安心をつくる時間】なかよしタイムの取組 なかよしタイムで もっとなかよく
- 2 【道徳】ようこそ1年生 がっこうでたのしみなことはなあに?
- 3 【国語】言葉を見付けよう あいうえおからはじまることばをみつけよう
- 4 【国語・算数】ひらがな・数の学習 「あいうえおうさま」であいうえお・10までのかず
- 5 【生活】学校探検 がっこうを もっとたんけんしよう
- 6 【学級活動】仕事見付けをしよう クラスにはどんなしごとがあるかな?
- 7 【図工】粘土で遊ぼう みてみて いっぱいつくったよ
- 8 【生活】学校探検 3かいや4かいも たんけんしよう
- 9 【音楽】歌を歌おう・名前遊び うたでなかよし
- コラム 寳來先生の学級だより〜その1〜
- 第4週
- 第4週目の週案例
- 1 【生活・図工】春の学校こんにちは こうていのはるをみつけよう
- 2 【学級活動】クラスのめあてを決めよう どんなクラスにしたいかな?
- 3 【道徳】勉強が始まるよ じかんをまもるといいことなあに?
- 4 【体育】みんなで遊ぼう くふうしたりちょうせんしたりしよう
- 5 【生活】大きくなあれ おはなをそだててみよう
- 6 【国語】絵を見て話そう えをみながらしつもんしたりこたえたりしよう
- 7 【算数】数の学習(仲間づくり) 0をさがそう
- コラム 寳來流 学びの足跡が分かる教室掲示の工夫
- コラム 寳來先生の学級だより〜その2〜
- 参考文献
- おわりに
- /松村 英治・寳來 生志子
刊行に寄せて
『明日も学校だ!』
元文教大学教育学部教授 /嶋野 道弘
子どもの育ち(成長)と学びの物語
入学当初の「なかよしタイム」でのこと。「私ね,回せる(フラフープ)ようになったの。幼稚園でもやったけどできなかったの。ゆみちゃんがやるのを見ててね,やってみたらできたの。今度はね,足でもできるようになりたいの」この子どものできた「今(現在)」はできなかった「過去」から引き継がれています。そして,できた今はもっとできるようになりたい「明日(未来)」に引き継がれていきます。また,この子どもは自分を感じ,自分の立場において,感じ,考え,判断し,行動しています。これは,主体的な子どもの育ちと学びの物語です。
(子どもに限らず)私たちは何かの出来事に出会ったときやそれを誰かに語るときには,認識や行為の主体者である自分を感じながら,いくつかの場面を組み合わせ,何かのつながりをもったものとして筋書きを描きます。それは主体的な人間の育ちと学びの自然の理です。今改めて求められている「スタートカリキュラム」の編成・実施に当たっては―幼児期の教育と小学校低学年の教育を形式的につなぐことに留まらず―こうした人間観や子ども観に立って取り組む必要があると思います。
【安心・発揮・自立】の理念と生成のプロセス
「スタートカリキュラム」は小学校入学当初の子どもを対象にした,目標,時間,活動・内容で編成された教育計画のことで,それは一つの「形」です。実施に当たっては,「スタートカリキュラム」の理念(本書では「魂」)―どうあるべきかについての根本的な考え方―を形に具現し,これを共有して「実践」しなければなりません。理念の無い形は形骸です。形にされない理念は霧散します。どちらにしても実践の効果は期待できません。
小学校に入学してくる子どもたちは,期待―ワクワク,ドキドキ―をもちながらも不安と緊張に包まれています。先ずは,不安を解消し,安心できる世界に導く必要があります。新しい環境に入っても,「(園で)やったよ」というように,【やっていたことができる】という空気を感じて子どもは安心するでしょう。また,【楽しい! 面白い!】と夢中で活動することで緊張感を忘れるでしょう。これらは,小学校に入学する子どもの不安と緊張を解消し,安心して生活できるようにする妙薬です。
学校は安心して生活できる場であることを感じ取った子どもは,「それならできるよ」「見てて。してみせるよ」と喜んで自己発揮をするようになるでしょう。子どもが生き生きと活動するようになる瞬間です。さらに子どもは,「自分で考えたよ」「自分でやってみる」と,他人に頼らず,自分自身で,自分からやってみることを喜ぶようになるでしょう。入学した子どもの自立的生活の始まりです。それは自覚的な学びの始まりでもあるわけです。
入学当初の子どもたちにふさわしい学校生活を創り出すためには,【安心】【発揮】【自立】の理念をスタートカリキュラムという形に具現し,これを実践していかなければなりません。
生きて働く教師の力
スタートカリキュラムは実践して意味をもちます。生きた実践の場で生きて働く教師の力(知・情・意)というものは,実践の場での時間をかけた子どもとの関わり合いを通して生まれて確かなものになっていきます。生きた実践の場で直面する現実は,それぞれに固有で多様ですが,生き生きとした具体的な事実との関わり合いを通して立ち上がってきた力こそが真に子どもを育てる力になっていきます。
本書の2人の著者は立場も経験も違いますが,共通して,低学年の実践経験とそれを通した研究を重ねています。そうした著者が紹介する活動は,具体的で時々の子どもの姿や教室の空気までも伝わってきます。紹介される活動と全く同じ世界はどこにもありません。しかし紹介されるどれかはどこの世界にもあります。「どこにもないけれども,どこにもある世界」こそが,現実感と真実性に富む生きた実践の場なのです。本書を活用されて『明日も学校だ!』と眠りにつく子どもの世界を実現させましょう。
2019年12月
初めて1年生を担任する人は必読だと思います。
理論的な部分についてはあまり書かれていないので、公的な文書などと合わせて読むのがおすすめです。