- はじめに
- 「話すこと・聞くこと」 パーフェクトガイド “7”の視点
- Chapter1 クラスの雰囲気がグッとよくなる!スピーチアイデア10
- ◆明日からできるスピーチ指導
- 1 スピーチを豊かにするアイデア
- 2 わくわく くじ引きスピーチ
- 3 “聞いて,要約”スピーチ
- 4 言っちゃダメ!NGワードスピーチ
- 5 “ヒーローインタビュー”スピーチ
- 6 “今日のスター”スピーチ
- 7 つないで!スピーチ
- 8 “私はだれでしょう?”スピーチ
- 9 対話でつなぐ“相手紹介”スピーチ
- 10 “たしかに〜,しかし〜”スピーチ
- Chapter2 教科書教材でできる!「話すこと・聞くこと」指導のアイデア
- スピーチプラン
- 1 「話を組み立てる力」を付けるには…
- (1年『はなしたいな ききたいな』東京書籍)
- 2 「筋道を立てて話す力」を付けるには…
- (3年『話したいな,うれしかったこと』東京書籍)
- 3 「資料を使ってスピーチする力」を付けるには…
- (6年『今,私は,ぼくは』光村図書)
- 話し合いプラン
- 1 「話題に沿って質問する力」を付けるには…
- (1年『「すきなものクイズ」をしよう』東京書籍)
- 2 「互いの話を聞き合い話し合う力」を付けるには…
- (2年『みんなできめよう』光村図書)
- 3 「進行を考えながら話し合う力」を付けるには…
- (3年『つたえよう,楽しい学校生活』光村図書)
- 4 「自分の役割を考えて話し合う力」を付けるには…
- (4年『クラスで話し合おう』東京書籍)
- 5 「互いの立場や意図をはっきりさせて,話し合う力」を付けるには…
- (5年『明日をつくるわたしたち』光村図書)
- 6 「プロセス」「準備」「メモ」で話し合いを成功させよう
- (6年『学級討論会をしよう』光村図書)
- (6年『問題を解決するために話し合おう』東京書籍)
- プレゼンテーションプラン
- 1 「資料を活用し発表する力」を付けるには…
- (3年『しりょうから分かる,小学生のこと』光村図書)
- 2 「目的意識・聞き手意識を持って発表する力」を付けるには…
- (5年『和の文化を受けつぐ』東京書籍)
- 3 「プレゼンテーション力」を付けるには…
- (6年『町の幸福論―コミュニティデザインを考える―』東京書籍)
- Chapter3 合意形成能力を育む!「話し合い」指導のアイデア
- 1 【合意形成】話し合いのプロセスを意識した授業
- 2 【ICT・アプリ活用】アプリ「UDトーク」を活用した授業
- Chapter4 深い学びにつながる!「話すこと・聞くこと」指導のアイデア
- 1 【入門期の指導】「話すこと・聞くこと」の力を付けるには…
- 2 【思考ツール】「思考を整理する力」を付けるには…
- 3 【メモの指導】「メモをとる力」を付けるには…
- 4 【主張・理由・根拠】「『主張・理由・根拠』を意識して発言する力」を付けるには…
- Chapter5 付けた力をしっかりみとる!「話すこと・聞くこと」評価問題のアイデア
- 1 【ポイント】「話すこと・聞くこと」の指導と評価
- 2 【評価問題】「話すこと・聞くこと」の評価問題例
- @ スピーチメモから考えよう
- (3年『話したいな,うれしかったこと』東京書籍)
- A 整理することを意識しよう
- (4年『クラスで話し合おう』東京書籍)
- B 話し合いの意図に応じて自分の考えを持とう
- (6年『学級討論会をしよう』光村図書)
- (6年『問題を解決するために話し合おう』東京書籍)
- おわりに
はじめに
社会や産業の構造が変化し,予測が困難となる時代に対応できる人材,合意形成能力を併せ持つ人材などの育成が叫ばれています。このような状況下においては,今まで以上に倫理観や価値観の違う立場から,様々な意見や感想,質問を出し合い,そこで生まれた差違も含め,互いに理解や合意するための力が求められることは言うまでもありません。さらに,平成29年3月に告示された小学校学習指導要領,同年7月に示された学習指導要領解説には,「相手の発言を受けて話をつなぐ」,「異なる立場からの考えを聞き,意見の基となる理由を尋ね合うことで,互いに考えを広げたりまとめたりする」と明記されています。また,中学校学習指導要領には,「合意形成に向けて考えを広げたり深めたりすること」なども明記されました。これらを踏まえると小中学校の教育現場では,一層,話す力・聞く力・話し合う力の育成を目途に,教科書教材をベースとした系統的な指導を必要とします。
しかし,話し合いの授業に目を向けると,話し手と聞き手が,話題に沿った意見等を十分に理解し,吟味する過程を経ずして話し合いを終えるといった展開だけにとどまる授業実践も見受けられます。「話すこと・聞くこと」領域の授業で交わされる言葉のやりとり等は,瞬時に消えてなくなるといった性質を持ち合わせます。そのため,「書くこと」「読むこと」の領域に比べると,考えを音声で重ね合う授業をデザインしても「目標としている力が付いたかどうか」が学習者はもとより指導者も認識が難しくなります。そのため,「記録・保存」という指導の工夫が必要となりますが,これも機器やその使い方などを考慮しないと日常指導での活用が難しくなります。
以上のことから,よりよい話し合いの授業を展開するには,目標をできるだけ具体化することが必要だと考えました。これは,指導者が目標に向かってぶれないという点についてももちろんですが,学習者にとっても,自分の学びの状況を確認できるという点で重要な視点です。また,検討・修正できる余裕のもった指導過程も大切な視点となります。その際,日常的な機器の使い方や準備等,活用を前提とした「録音・録画」,教師や機器による「音声の文字化」等,可能な限り可視化(音声・映像・文章)した音声資料の提示が必要となるでしょう。
文部科学省は,今後目指すべき授業の在り方を大きく三つに整理し,次のようにまとめています。
○何を知っているか,何ができるか(個別の知識・技能)
○知っていること,できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)
○どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか(学びに向かう力,人間性等)
上記の三つを踏まえると,これまで以上に学びをいかに習得し活用するのか,付けたい力に迫るための学習過程をどのように組織するのかが重要視されています。
本書は,先生方が日々の授業で参考にしてほしいと考え,音声言語教育に比較的多く見られる「特別に設定した単元での指導」ではなく,「教科書教材をべースにした指導」を以下の視点を取り入れ,提示しています。
@目指す子どもの姿
A詳しくすると…こんな活動!
B単元計画
C指導のPoint
Dそのまま使える!活動の流れ
Eここが指導・評価のカギ!
@Aにおいて,「付けたい力」の確認を,BCは,それを受けた単元計画と指導のポイントを,DEにおいては,できるだけ先生方がすぐに活用できるように工夫をしています。巻末には評価問題を参考として載せています。
予測不可能な世の中を生き抜くためには,話し合いの帰着点として妥協,譲歩で終わらせるのではなく,それぞれの立場の者に新たな考えを導き出し,最終的には,未来志向のもと視点や条件を創り上げることが必要であります。
本書がそのような能力を育成する契機となることを願っております。
2019年9月 編著者 /長谷 浩也
「話すこと・聞くこと」の具体的な授業の創り方やポイントをいくつも示してくれている。一読することで何かしらのアイデアを得ることができる。読んで損なしの一冊であることは間違いない。