- 序 地図からはじまる社会科に
- 第1章 地図の学力
- ――空間認識力を育てる7つの秘訣
- 1 まずは,『地図帳』の使い方の指導時間を確保しよう
- 2 第3学年の入門期では方位距離シートを使おう
- 3 生活科第2学年「まちたんけん」で短冊用紙に通学路地図を描かせよう
- 4 第4学年では地図上で指旅行を楽しませよう
- 5 第5学年では日本や世界の白地図に矢印をつけてモノの動きをつかませよう
- 6 第6学年では歴史の舞台を地図で確かめさせよう
- 7 地球儀の球面ならではの特色を生かそう
- 第2章 空間認識力を育てる!おもしろ「地図」授業スキル[3年]
- ――五感で地図を読む!地図指導の基礎基本
- 1 「8方位体操」でつかみは万全
- 2 教室内の座席の位置表現は方位の名称で
- 3 地図帳配布の授業開きはドローン目線で
- 4 市と学校住所の地名由来から
- 5 地図指導の基本は方位→地図記号→縮尺→土地利用の順で
- 6 学区の白地図は空中写真とのコラボで
- 7 心的な動線:鉄道や海岸線,幹線道路で市のメンタルマップに枠組みを
- 8 新単元「市の様子のうつりかわり」は交通と地図で
- 9 大火災の際の消防署の協力体制も地図で
- 10 スーパーで売られているキウイフルーツはどこから来たの?
- 11 地図上で楽しむ指旅行の効果
- 12 五感を個別に意識させつつ地図帳を読ませると地図から風景が想像できる
- column 生活科でもできる!「地図」活用授業@
- 学校たんけんは一本のラインで校舎内の空間認識力をつくる
- 第3章 空間認識力を育てる!おもしろ「地図」授業スキル[4年]
- ――「もっと地図に親しもう!」47都道府県を確実におさえる指導術
- 1 都道府県の名称指導は声に出して北から・臨海県からスタートする
- 2 「日本の屋根」を地図帳を傾けて実感させる
- 3 羽田空港発・那覇空港行きの航空アナウンスで「あたたかい土地のくらし」のつかみを
- 4 等高線の指導は粘土山と富士山の地形図で
- 5 水滴を擬人化しつつ水の旅を地図帳で発言させる
- 6 過去の災害履歴を県の地図に記入する
- 7 防災のための土木工事の様子を地図に記入する
- 8 簡単な防災図上訓練は避難経路を学区の白地図に記入させることから
- 9 自県の特色ある地域の学習は「観光」で
- 10 観光の花びらで資源を6分類し地図で確認する
- column 生活科でもできる!「地図」活用授業A
- ニョロニョロ地図づくりで町たんけん
- 第4章 空間認識力を育てる!おもしろ「地図」授業スキル[5年]
- ――見方・考え方でここまで変わる!世界と日本を感じる指導術
- 1 日本の略地図の描かせ方
- 2 地図帳を丸めて簡易円筒地球儀に
- 3 地球儀と紙テープで方位と距離のおもしろ学習を
- 4 6大陸名と3大洋名の地図を使った教え方
- 5 アフリカ大陸の大きさを『地図帳』と地球儀で比べっこ
- 6 アフリカのガーナ沖に経緯線の座標原点あり
- 7 教師が演じる北極点到達のパフォーマンスで経緯線に興味を
- 8 日本の米どころ理解は雪解け水と夏のフェーンが決め手
- 9 りんごとみかんを対比させて日本の気候と農業を理解させる
- 10 温暖湿潤・寒冷多雪の8文字で日本の気候は表現できる
- 11 季節風とからっ風,海流を合わせた板書方法はこれだ!
- 12 京浜工業地帯ってどこ?工業の盛んな地域の地図指導
- 13 日本と外国との間の貿易は工業製品記号の地図への貼り付けで
- 14 楽しいアメリカ大陸横断地図旅行
- 15 国旗への興味付けはブラジル国旗から
- 16 情報ネットワークも地図つながりで
- 17 単元「自然災害の防止」は日本列島の地勢図で
- 第5章 空間認識力を育てる!おもしろ「地図」授業スキル[6年]
- ――地図で歴史が深く分かる!歴史を紐解く指導術
- 1 日本の政治は地図帳掲載の東京中心部の地図で―官公庁の場所調べから―
- 2 邪馬台国はどこにあったの?
- 3 木簡の旅を日本地図で再現
- 4 鎌倉幕府建設と鎌倉の地図
- 5 戦国大名の領地理解と天下取りは地図で
- 6 幕藩体制は五街道と大名行列を地図で理解することから
- 7 ザビエルの日本への旅とキリシタンによる反乱も地図で
- 8 ペリーはどうして太平洋を渡って来なかったの?
- 9 生麦事件は地図帳を使うと必然的だった!
- 10 太平洋戦争の範囲を地図でつかむと原爆投下の背景も読み取れる
- 11 オリンピックを地図帳で理解し,開催都市の分布にも着目する
- 12 地図帳片手に仮想で外国人観光客を観光ガイドする
- 13 「日本とつながりの深い国」は『地図帳』で
- 14 地球温暖化の理解も地球儀(地勢)で
- 15 世界遺産の分布を地図で学ぶ
- 16 仮想「家族で図上の海外旅行をしよう!」
- 結語 グローバル化する社会を理解するために
序
地図からはじまる社会科に
本来,児童は地図が大好きです。自分の周りの世界が見えるため,また,想像の世界をイメージできるため,地図を見つめることに興味深々なのです。もし地図嫌いがいるとしたら,案外大人たちのせいかもしれません。2020年度から小学校第3学年からの『地図帳』使用が開始されます。大げさかもしれませんが,我が国の初等教育史で第3学年からの使用は画期的な出来事です。児童は『地図帳』と出会うことで,身近な市や県だけでなく日本や外国などグローバル化した社会の理解に生きて働く汎用的な力を身に付けるでしょう。世の中の出来事はどれも場所との関わりが深いものです。テレビのニュースで知った事件や明日の天気,選挙報道,旅番組などは,地図なくしては理解できません。加えて,地図は歴史の舞台も想像できます。有名な人物が過去にどこでどう生きていたかをイメージできるのです。
さらに地図は国語で登場する文学や説明文教材の舞台,音楽の生まれた国,家庭科で扱われる土地の料理や住まい,理科で登場する気象や山岳,海洋・河川・湖沼,地層,生き物の生態地などを理解する上でも活躍します。
ところで,本書は小学校の第3〜6学年までの社会科で培う,学力としての「地図」をどのように育んでいったらよいのかを空間認識力の観点から記述した教育書です。読みやすいように授業スキルを,基本的に各項目見開き2頁ずつで解説しました。それらは準備物が要らないか,1つ2つの少ない準備で行える簡単な指導術ばかりです。本書で主張した「空間認識力を鍛えるポイント」は,英米圏で新しい学力として注目を浴びているグラフィカシーと呼ばれる画像やチャート,地図,統計などの非連続型テキストの活用力にも通じます。さらに,低学年の生活科における地図活用もコラムで論じてみました。本書でおもしろ「地図」授業スキルを磨いて下さい。
/寺本 潔
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- 明治図書
- 普段使いができる、とても使いやすい本です2021/5/2220代・小学校教員
- 事例が具体的でわかりやすいです。社会科教師は必読です。2020/11/1550代・大学勤務
- 新学習指導要領が,小学3年生から初めて地図帳を活用することになり,そのための入門期としての取り組みを知りたいと思い,本書を購入した。具体的な指導,そのための工夫など分かりやすく説明している。本書を読み進めながら,実践を通し楽しんで「空間認識力」を育てていきたいと思えた。2020/5/840代・小学校管理職