- 刊行に寄せて
- はじめに
- 第1章 これから求められる読解の資質・能力
- 1 「言葉による見方・考え方」を働かせ,「言語活動を通して」とは
- 変化の激しい社会を生きる子供たちにとって必要な国語の資質・能力とは/子供が「言葉による見方・考え方」を働かせる姿をどう描くか/「言語活動を通し」た授業づくりをどう進めるか
- 2 論理的思考力・豊かな想像力の育成
- 「読むこと」における論理的思考力の育成/「読むこと」における豊かな想像力の育成
- 3 読解の基礎力の育成
- 意図的・計画的な指導による多様な読書体験の確保/指導事項の趣旨の確かな理解に基づく確実な定着のための指導/子供が語彙を獲得する場をどのように構築するか/目的に応じた情報の扱い方の指導の工夫
- 第2章 「主体的・対話的で深い学び」を実現する課題追究型の学習過程
- 1 「深い学び」を実現する課題追究型の学習過程とその意義
- 2 「深い学び」につなげる教材研究
- 3 課題設定,課題追究,まとめ・発展の過程における授業改善のポイント
- T次「課題設定」過程(課題の把握,学習の見通し)/U次「課題追究」過程(教材の深い理解と考えの形成・共有)/V次「まとめ・発展」過程(振り返り・評価・活用)
- 第3章 「論理的思考力」を育成する説明的文章の授業づくり
- 1 「論理的思考力」の育成と教材の特質
- 求められている「論理的思考力」の育成/「論理的思考力」を育てる説明的文章の読解指導/構造的に捉える能力,批判的な思考力の育成
- 2 授業づくり事例
- 深い学びにつながる教材研究のポイント/学習過程のポイント/授業の展開例/授業づくりのポイント/評価のポイント
- 第1学年 「じどう車くらべ」
- 第2学年 「あなのやくわり」
- 第3学年 「すがたをかえる大豆」
- 第4学年 「ウナギのなぞを追って」
- 第5学年 「世界遺産 白神山地からの提言」
- 第6学年 「時計の時間と心の時間」
- 第4章 「豊かな想像力」を育成する文学的文章の授業づくり
- 1 「豊かな想像力」の育成と教材の特質
- 「豊かな想像力」の育成とは/文学的文章教材の特徴と扱い方/「豊かな想像力」の育成を図る授業づくり
- 2 授業づくり事例
- 深い学びにつながる教材研究のポイント/学習過程のポイント/授業の展開例/授業づくりのポイント/評価のポイント
- 第1学年 「おおきなかぶ」
- 第2学年 「お手紙」
- 第3学年 「モチモチの木」
- 第4学年 「ごんぎつね」
- 第5学年 「大造じいさんとがん」
- 第6学年 「やまなし」
- 第5章 読解の基礎力をはぐくむ授業づくり
- 1 「情報の扱い方に関する事項」の指導
- 「情報の扱い方に関する事項」の考え方と教材の特質/「情報の扱い方に関する事項」の指導の留意点/「情報と情報との関係」を扱う授業づくりの要点/「情報の整理」を扱う授業づくりの要点
- 2 授業づくり事例
- 深い学びにつながる教材研究のポイント/学習過程のポイント/授業の展開例/授業づくりのポイント/評価のポイント
- 第1学年 「どうぶつの赤ちゃん」
- 第3学年 「ありの行列」
- 第5学年 「想像力のスイッチを入れよう」
- 3 「語彙」に関する指導
- 「語彙」に関する教材の特質と扱い方/「語彙」を豊かにすることに関する事項の指導と教科書教材/本書で取り上げた教材の特質と扱い方
- 4 授業づくり事例
- 深い学びにつながる教材研究のポイント/学習過程のポイント/授業の展開例/授業づくりのポイント/評価のポイント
- 第1学年 「ものの名まえ」
- 第3学年 「もうどう犬の訓練」
- 第5学年 「注文の多い料理店」
刊行に寄せて
言葉による見方・考え方
1 各教科等の特質に応じた「見方・考え方」
平成28年12月の中央教育審議会「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(以下,「答申」という。)において,「見方・考え方」は,次のように示されている。
○子供たちは,各教科等における習得・活用・探究という学びの過程において,各教科等で習得した概念(知識)を活用したり,身に付けた思考力を発揮させたりしながら,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう。こうした学びを通じて,資質・能力がさらに伸ばされたり,新たな資質・能力が育まれたりしていく。
○その過程においては,“どのような視点で物事を捉え,どのような考え方で思考していくのか”という,物事を捉える視点や考え方も鍛えられていく。(中略)
○こうした各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方が「見方・考え方」であり,各教科等の学習の中で働くだけではなく,大人になって生活していくに当たっても重要な働きをするものとなる。(中略)
つまり,「見方・考え方」とは,各教科等の特質に応じた,物事を捉える視点や考え方のことである。
2 国語科における「見方・考え方」
「答申」を踏まえ,平成29年3月に告示された「小学校学習指導要領」(以下,「新学習指導要領」という。)の国語科の目標は,次の通りである。
言葉による見方・考え方を働かせ,言語活動を通して,国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 日常生活に必要な国語について,その特質を理解し適切に使うことができるようにする。
(2) 日常生活における人との関わりの中で伝え合う力を高め,思考力や想像力を養う。
(3) 言葉がもつよさを認識するとともに,言語感覚を養い,国語の大切さを自覚し,国語を尊重してその能力の向上を図る態度を養う。
柱書に示された「言葉による見方・考え方を働かせ」ることについて,「新学習指導要領解説国語編」(平成29年6月)では,次のように解説している。
言葉による見方・考え方を働かせるとは,児童が学習の中で,対象と言葉,言葉と言葉との関係を,言葉の意味,働き,使い方等に着目して捉えたり問い直したりして,言葉への自覚を高めることであると考えられる。
このことは,私たちが日常的に行っていることでもある。例えば,話す時に,分かりやすく正確に伝わるように,相手や状況に応じて,言葉を選ぼうとすること。ある文章を理解する時に,一つ一つの言葉の意味を機械的にひろうのではなく,全体の文脈からその内容を把握しようとすることなどである。
つまり,「対象と言葉,言葉と言葉との関係を,言葉の意味,働き,使い方等に着目して捉えたり問い直したりする」とは,言葉で表されている話や文章を,意味や働き,使い方などの言葉の様々な側面から総合的に思考・判断し,理解したり表現したりすること,また,その理解や表現について,改めて言葉に意識的に着目して吟味することを表したものと言える。
なお,このことは,話や文章を理解したり表現したりする際に必要となるものであるため,これまでも国語科の授業実践の中で,児童が言葉に着目して学習に取り組むことにより「知識及び技能」や「思考力,判断力,表現力等」が身に付くよう,教師の発話やワークシートの工夫などの授業改善のための創意工夫が図られてきたところである。
3 「深い学び」と「見方・考え方」
「答申」において,「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善を進めるに当たり,特に「深い学び」の視点に関して,各教科等の学びの深まりの鍵となるのが「見方・考え方」であるとされていることから,「新学習指導要領」では,第3の1の (1)の「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善に関する配慮事項においても,「見方・考え方」を働かせることについて,次のように示されている。
(1) 単元など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,児童の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。その際,言葉による見方・考え方を働かせ,言語活動を通して,言葉の特徴や使い方などを理解し自分の思いや考えを深める学習の充実を図ること。
指導事項に示す資質・能力を育成するため,個々の教師が「主体的・対話的で深い学び」の視点から授業改善を図ることが期待される。その際,これまでも国語科の授業実践の中で取り組まれてきたように,児童が言葉に着目し,言葉に対して自覚的になるよう,授業改善が図られることが望まれる。
4 育成を目指す資質・能力と「見方・考え方」
育成を目指す資質・能力と「見方・考え方」の関係については,「答申」において次のように示されている。
○(中略)既に身に付けた資質・能力の三つの柱によって支えられた「見方・考え方」が,習得・活用・探究という学びの過程の中で働くことを通じて,資質・能力がさらに伸ばされたり,新たな資質・能力が育まれたりし,それによって「見方・考え方」が更に豊かなものになる,という相互の関係にある。
つまり,資質・能力と「見方・考え方」は,密接に関わり合っていると言える。
国語科においては,例えば,言葉の意味,働き,使い方などは,各学年の指導事項として系統的に学習していく。こうした指導事項に示す資質・能力を身に付けることで,「見方・考え方」がより豊かになり,より豊かになった「見方・考え方」を働かせることで,より資質・能力が身に付くようになることを目指すことが重要である。
文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官/国立教育政策研究所 教育課程調査官・学力調査官
/菊池 英慈
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- 明治図書
- とても参考になりました。2020/10/420代・小学校教員