- はじめに
- 1章 ツールを使えば必ずできる!「考え,議論する道徳」の授業づくり
- 考え,議論するためのツールの必要性
- ツール活用の面白さ・楽しさ
- 2章 活用方法がすぐわかる!考えるツール&議論するツール
- 考えるツール
- ウェビング
- 座標軸
- ランキング
- ベン図
- スケール
- Xチャート・Yチャート
- 熊手チャート
- データチャート
- クラゲチャート
- ピラミッドチャート
- バタフライチャート
- キャンディチャート
- フィッシュボーン
- コンセプトマップ
- 心情円
- 議論するツール
- 付箋によるKJ法
- 聴き合い活動(シェアリング)
- ビンゴ
- 宿題の活用(事前学習)
- トーキングサークル
- 役割取得
- ペアトーク
- ディベート
- コミュニケーションボード
- 3章 考えるツール&議論するツールでつくる新授業プラン
- 事例1(内容項目 D-(21)感動,畏敬の念) 宿題・ウェビングを活用した授業―七つの星(2年生)―
- 事例2(内容項目 B-(7)親切,思いやり) 座標軸を活用した授業―島耕作 ある朝の出来事(6年生)―
- 事例3(内容項目 C-(12)規則の尊重) ランキング・付箋を活用した授業―おくれてきた客(5・6年生)―
- 事例4(内容項目 B-(10)友情,信頼) ベン図を活用した授業―およげないりすさん(2年生)―
- 事例5(内容項目 B-(10)友情,信頼) スケールを活用した授業―泣いた赤おに(4年生)―
- 事例6(内容項目 B-(10)友情,信頼/C-(15)家族愛,家庭生活の充実) Xチャートを活用した授業―なくしたかぎ(5年生)―
- 事例7(内容項目 C-(12)規則の尊重) Yチャートを活用した授業―雨のバス停留所で(4年生)―
- 事例8(内容項目 C-(12)規則の尊重) 熊手チャートを活用した授業―図書館はだれのもの(5年生)―
- 事例9(内容項目 B-(10)友情,信頼) データチャートを活用した授業―絵はがきと切手(4年生)―
- 事例10(内容項目 C-(18)国際理解,国際親善) クラゲチャートを活用した授業―外国から来た転校生(5・6年生)―
- 事例11(内容項目 C-(14)勤労,公共の精神) ピラミッドチャートを活用した授業―母の仕事(5年生)―
- 事例12(内容項目 C-(12)規則の尊重) バタフライチャートを活用した授業―おくれてきた客(5・6年生)―
- 事例13(内容項目 B-(9)礼儀) キャンディチャートを活用した授業―人間をつくる道 剣道(6年生)―
- 事例14(内容項目 C-(14)勤労,公共の精神) フィッシュボーンチャートを活用した授業―仕事のやりがいってなんだろう?(5・6年生)―
- 事例15(内容項目 D-(19)生命の尊さ) 付箋を活用した授業―お母さんへの手紙(6年生)―
- 事例16(内容項目 D-(22)よりよく生きる喜び) 聴き合い活動を活用した授業―四本の木(6年生)―
- 事例17(内容項目 C-(16)よりよい学校生活,集団生活の充実) ビンゴを活用した授業―学校のぶどう(3年生)―
- 事例18(内容項目 A-(1)善悪の判断,自律,自由と責任) トーキングサークルを活用した授業―よわむし太郎(3年生)―
- 事例19(内容項目 D-(20)自然愛護/C-(17)伝統と文化の尊重,国や郷土を愛する態度) 役割取得を活用した授業―ぼくらの村の未来(5・6年生)―
- 付録 授業づくりシート
はじめに
「考え,議論する道徳科の授業をどうやってつくることができるか」――今,全国の小学校,中学校で多くの先生が,頭をひねっておられます。
それに対する私たちの本書での提案は,「ツールを使おう!」です。
「考えるツール」とは,たとえば,そのワークシートに沿って書き込んでいくだけで,子どもがおのずと,様々な視点から多角的に考えていくことができるような工夫がなされているツールのことです。いや,おのずとそのように考えていかざるを得ないような工夫がなされたツールのことです。
「議論するツール」とは,そのやり方にしたがって,子どもたちの考えを板書に整理していくだけで,おのずと,子どもたちの話し合いが,より多角的な話し合いとなり,深まっていくような,そのようなツールのことです。
「ツールを使えば,ふつうの力量のふつうの教師が,それを用いることで,誰もが,考え議論する道徳科の授業の名手になることができる。しかも自然に!」
これが私たち千葉グループ(千葉大学の土田雄一先生や千葉市の尾高正浩先生,諸富などを中心にした新しい道徳授業づくりの研究会)の提案です。このグループでは,すでに約20年にわたって(!)今でいう「考え,議論する」タイプの新しい道徳授業を開発し,創造してきたのです。
現場の先生方は経験的にわかると思いますが,今,学習指導要領に示されているような「子どもが主体的に自分で考え」「十分に話し合い」「その中で自分の考えをさらに深めていく」という授業は,「力量のあるすぐれた教師」であれば,もう何十年も前から,ずっと行ってきたことです。
逆に,あまり力のない先生は,たとえば道徳科の授業でも,それまでの子どもたち同士の話し合いのプロセスをほとんど無視して,「ところで,〇〇さんはどんな気持ちで……」「あなたが親切にしたいと思うのは」と半ば強引に授業を予定していた方向に引っ張っていくのが常でした。
これでは,子どもたちが「真剣に考えるのは馬鹿馬鹿しい」「一生懸命話し合っても,結局先生の好きな方にもっていかれてしまう」「だから本気で考えたり,本音で語るのはやめにして,先生がどのような方向に授業を進めようとしているのか,それを推測して,それに沿うように発言しなくては」…このように思うようになるのも当然のことです。
では,そのような「特別な力量のある教師」でなければ,「自分で考え,議論を重ね,その中で自分の考えが深まっていくような道徳の授業」を行うことは不可能なのでしょうか。
「自分のような,特に思考を深める力も,話し合いを深める力ももっていない平凡な教師は,やはり,主体的で対話的な道徳の授業を行うことなどできない」とあきらめざるを得ないのでしょうか。
私たちの答えはノー!です。
「ほんの少しの工夫さえすれば,平凡な教師でも,自分で考え議論するタイプの道徳の授業を行うことはできるのでしょうか」
私たちの答えはイエス!です。
なぜなら,本書で紹介する「考えるツール」「議論するツール」の中には,授業の名人が,これまで発問の工夫や話し合いの工夫として行ってきたようなすぐれた工夫が,すでにその中に含まれ仕掛けられているからです。
「考えるツール」「議論するツール」は,ただそれを使うだけで,授業の名人の発問によって子どもたちが導かれていくような思考を行い,話し合いを行うことができるようになっています。ツールの中にその工夫が,すでに仕掛けられているのです。
そのポイントは「視覚化」です。
多様な角度から考え,話し合いを重ねていくことができるような「視覚的な工夫」がツールの中でなされているのです。
これさえあれば,百人力。
もう,何も怖いものはありません。
「考えるツール」「議論するツール」を使うことで,あなたは明日からおのずと,子どもたちが自分で考え,話し合いを重ねていく中で自分の考えを深めていくことができるような,そんな授業ができる教師になれているはずです!
/諸富 祥彦
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