- はじめに
- 1章 「特別の教科 道徳」の評価
- 1 「特別の教科 道徳」学習評価の考え方
- 2 道徳教育と道徳科授業及び1時間の評価
- 3 生徒のパフォーマンスに着目した学習評価
- 4 パフォーマンス・データの収集・活用で進める評価
- 5 道徳科学習評価を生かした授業改善の視点
- 6 通知表と指導要録の違いを踏まえた道徳科学習評価
- 2章 「特別の教科 道徳」の所見の書き方のポイント
- 1 所見の構成要素
- 2 所見の組み立て方
- 3 所見作成時の留意事項
- 3章 「特別の教科 道徳」の通知表記入文例 NG文例付
- 記入文例の考え方・見方・使い方
- A−(1) 自主,自律,自由と責任
- A−(2) 節度,節制
- A−(3) 向上心,個性の伸長
- A−(4) 希望と勇気,克己と強い意志
- A−(5) 真理の探究,創造
- B−(6) 思いやり,感謝
- B−(7) 礼儀
- B−(8) 友情,信頼
- B−(9) 相互理解,寛容
- C−(10) 遵法精神,公徳心
- C−(11) 公正,公平,社会正義
- C−(12) 社会参画,公共の精神
- C−(13) 勤労
- C−(14) 家族愛,家庭生活の充実
- C−(15) よりよい学校生活,集団生活の充実
- C−(16) 郷土の伝統と文化の尊重,郷土を愛する態度
- C−(17) 我が国の伝統と文化の尊重,国を愛する態度
- C−(18) 国際理解,国際貢献
- D−(19) 生命の尊さ
- D−(20) 自然愛護
- D−(21) 感動,畏敬の念
- D−(22) よりよく生きる喜び
はじめに
2018年度4月より小学校を皮切りに,中学校でも2019年度4月より「特別の教科 道徳」=道徳科の授業が始まりました。「特別の」という冠はあるものの,従前の「道徳の時間」とは一線を画す教科教育型の道徳科がスタートしたのです。そして案の定と言うべきか,然るべくしてと言うべきか,全国の小・中学校で学校種を超えて指導に対するとまどいとその学習評価を進めることへのためらいと不安が交錯して少なからぬ混乱状況にあることはまぎれもない事実となっています。
道徳の時間が「特別の教科」である道徳科へ移行・転換したことで混乱している背景には,これまで自由に選択できた道徳教材が道徳教科書によって縛りがかけられたこと,道徳科の指導に伴う学習評価が導入されたこと,この2点が主因とされていることのもつ意味は少なくありません。学校の教育課程に位置づけられた各教科であれば当然のこととなっている,教科書を用いた指導とその成果としての学習評価による生徒の道徳学びの見取りに対して,教師側が自作自演で狂騒劇を演じているのです。つまり,これまで指導をしたらその教育的営みと表裏一体的なものとして進めてきた学習評価を,道徳科についても同じように実施してよいのかというためらいと,その手法を巡る困惑とで足踏み状態となっているというのが昨今の道徳科事情です。
確かに,各教科と同様に道徳科の学習評価をしてよいはずがありません。中学校学習指導要領にも,「生徒の学習状況や道徳性に係る成長の様子を継続的に把握し,指導に生かすよう努める必要がある。ただし,数値などによる評価は行わないものとする」と明記されています。ならば,「どう生徒の道徳学びを見取ったり,どう道徳的に成長したことを見取ったりすればよいのか」「道徳的成長といっても,姿形があるわけでもないから見取りようがないではないか」等々の不安やとまどいが生ずるのは致し方ないことなのです。ならば,学習評価はしないですまされるのか。そんなことは決して許されるはずもありません。学習指導をした以上,その学びを見取ることは「指導と評価の一体化」という視点からすれば当然のことなのです。「道徳科の指導も,道徳科学習評価も自信がない。いや,一体どうやって道徳科を進めたらよいのやら皆目見当もつかない」とおなげきの中学校教師にとっての福音書となることが本書の意図するところです。
本書では,「評価の前に指導あり,指導の結果としての評価あり」をモットーに,道徳科学習評価を展開するための指導の進め方,生徒の道徳学びを引き出して高めていくための効果的な在り方について実践経験豊富な執筆者がわかりやすく解説しています。本書は,読者に道徳科指導と道徳科学習評価への自信をお届けします。ご期待ください。
/田沼 茂紀
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