- 監修のことば
- はじめに
- ―何か物足りない…という授業も,「ドラマ技法」でアクティブに!
- 1章 Q&Aでよくわかる!ドラマ技法の始め方
- Q1.「ドラマ技法」って何?
- Q2.ドラマワークって劇づくりをすることなの?
- Q3.学びとどうつながるの?
- Q4.表現するってどういうこと?
- Q5.「学びの全身化」ってどういうこと?
- Q6.アクティブ・ラーニングとどうつながるの?
- Q7.アクティビティと遊び,どう違うの?
- Q8.教師は何をすればいいの?
- Q9.ドラマ技法って広い空間がないとできないの?
- Q10.どこから始めればいいの?
- 2章 ドラマ技法&アクティビティ50
- T リラックスさせ,適度な集中を促す
- 01 王様じゃんけん 【中学校1年 数学】
- 02 歩いて集まれ 【小学校3年 国語】
- 03 拍手まわし 【小学校5年 特別活動】
- 04 アクションまわし 【小学校6年 特別活動】
- 05 先生のやるとおり 【中学校 特別活動】
- 06 いろいろライン 【小学校3年 体育】
- 07 カウントアップ 【中学校1年 理科】
- 08 白身と黄身 【中学校1年 特別活動】
- 09 猛獣狩りに行こう 【小学校4年 特別活動】
- 10 ガッチャン 【小学校3年 体育】
- U 相互理解を深め,協力する力を育てる
- 11 あっちこっち 【中学校1年 特別活動】
- 12 仲間集め 【小学校5年 社会】
- 13 4(フォー)コーナーズ 【中学校2年 英語】
- 14 ウォークで挨拶 【中学校2年 英語】
- 15 褒めちぎり 【中学校2年 英語】
- 16 みんなの木 【小学校3年 特別活動】
- 17 人間と鏡 【中学校1年 理科】
- 18 エアー手裏剣 【小学校3年 総合的な学習の時間】
- 19 イルカの調教師 【小学校2年 特別活動】
- 20 ヒューマンチェアー 【小学校5年 体育】
- V 話し合いを活性化させ,表現力を高める
- 21 2つのホント1つのウソ 【小学校6年 総合的な学習の時間】
- 22 インスタント物語の素 【小学校6年 国語】
- 23 「他己」紹介 【中学校3年 英語】
- 24 共通点探し 【中学校2年 英語】
- 25 仮想会議 【中学校3年 英語】
- 26 プロムナード 【中学校3年 特別の教科 道徳】
- 27 みんなで1人 【中学校2年 社会】
- 28 音読・群読 【中学校3年 特別活動】
- 29 体で情景描写 【小学校1年 国語】
- 30 群像づくり 【小学校5年 社会】
- W 活発な発表活動をつくり出す
- 31 世界一短いスピーチ 【小学校1年 特別活動】
- 32 1分間スピーチ 【中学校2年 英語】
- 33 ショー&テル 【小学校1年 特別活動】
- 34 なりきりスピーチ 【小学校2年 生活】
- 35 即興スピーチ 【中学校1年 理科】
- 36 CMづくり 【中学校3年 社会】
- 37 公開インタビュー 【中学校2年 総合的な学習の時間】
- 38 クイズ・ショー 【中学校3年 社会】
- 39 ニュース・ショー 【中学校1〜3年 総合的な学習の時間】
- 40 ポスター・セッション 【中学校1〜3年 総合的な学習の時間】
- X 演劇的な表現を楽しみ,想像力を培う
- 41 彫刻リレー 【小学校2年 国語】
- 42 何やってるの? 【小学校5年 体育】
- 43 ワンタッチ・オブジェ 【中学校1・2年 特別活動】
- 44 フリーズ・フレーム 【小学校6年 総合的な学習の時間】
- 45 音の風景 【小学校5・6年 特別活動】
- 46 ホット・シーティング 【中学校1年 理科】
- 47 ロールプレイ 【中学校3年 特別活動】
- 48 ティーチャー・イン・ロール 【小学校2年 生活】
- 49 心の声 【中学校2年 特別の教科道徳】
- 50 専門家のマント 【小学校5年 社会】
- おわりに
- ―アクティビティの運用能力を高めて,深みのある授業を!
- 獲得型教育ブックガイド
監修のことば
本書は,私たち獲得型教育研究会が蓄積してきたアクティビティの中から,基本的で初心の先生にも使いやすいものを選りすぐって取り上げています。
「獲得型教育」というのは,耳慣れない言葉かもしれません。日本(あるいは,日本を含む東アジア)の教育は,黒板を使って効率よく知識を教える注入型の授業に傾斜してきました。それに対して,獲得型教育は生徒が調べ,討論し,全身を使って表現するような教育=学習を目指しています。
「教えから学びへの転換」と言うときに,「先生は教えない」「生徒が主体的に選んだものでないといけない」などとよく言われますが,私たちはそうは考えません。教師は「教えない」のではなく,注入型とは違った「教え」を行う必要があると考えます。学びのデザインをしたり,学びを誘ったり,学びのデザインを練り直したり,学びを味わい合う,これが教師の仕事になります。
まず教師は,「どんなアクティビティをしようかな」と構想を立てます。そして,おずおずとアクティビティを行います。チョーク&トークの授業とは勝手が違います。教師が投げかけたら,次は子どもに任せます。子どもが動かないと学習が成立しないのです。思惑どおりの時間配分では進まないことも多いです。子どもたちから出される言葉だけでなく,身体からの表現を受け止めながら,次の手立てを考えます。この過程で,教師は構想をその場あるいは単元の枠内で練り直します。
そして,学びの終わりには振り返りを行います。「どんなことが起こった?」(Do),「何を感じた?」(Feel),「わかったことある?」(Think)といったことを話し合って,学びの意味をみんなで味わいます。アクティビティの多くは集団で行い,その中で柔らかな雰囲気,受け止め合う関係性が育まれるように進めます。
アクティビティ上手の教師は,実はチョーク&トークも巧みです。聴き手が身をのりだす話を構想し,反応を見て内容,話し方を即座に変えるということは,アクティビティの運用と同じだからです。
アクティビティでは,子どもの反応,関係性がダイレクトに出ます。だから,かえって子どもの様子がつかみやすいですし,ともに振り返ること,後で自分の実践を振り返ることもしやすいと言えるでしょう。
けれども,若い,特に新任の先生にとってはこういった授業はハードルが高いと感じられるかもしれません。子どもの動きの予想が難しく,集団のトラブルも気にかかる。ですからまずは,ハードルをできるだけ低くし,教師にとっても子どもにとっても,安心して飛び越えられることにチャレンジしてみてください。アクティビティの中には,「これやったことがある」というものもあるはずです。この本にある一番面白くて,これならやれそうだというものから始めてみてください。始めなくては身につきません。
ドラマ技法を使った獲得型教育の究極のゴールは自律的な市民の育成です。話を黙って聞くという受け身の姿勢ではなく,自ら考え,リサーチし,仲間とともに発信していく,そのような学習を繰り返すことで自立的な学習者が育ちます。私たちは,自立的な学習者が,やがて自律的な市民として育っていくことを願っています。自律的な市民とは,思慮深く,多角的に社会のことを考え,他者と協同していくような資質と能力をもった人々です。
アクティビティを行うと,笑いが起こり,やわらかな雰囲気が生まれ,話し合いの雰囲気が生じます。例えば,フリーズフレームを1つつくるにしても,小さな話し合いが生まれてきます。そういった情動と知性の交わりのささやかな一つひとつの積み重ねが自立的学習者,自律的市民を育てるのだと私たちは確信しています。
本書はその第一歩なのです。ぜひ皆さん,小さなチャレンジを継続してみてください。
/宮崎 充治
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- 明治図書
- 授業で活用させていただいています。2024/4/940代・小学校教員
- 具体的なアクティビティがたくさん掲載されていて活用しやすかった2021/4/220代・中学校教員