- はじめに
- 序章 本書の活用のために
- 1 「社会性」と「感情」を育てる重要性
- 2 SELとは
- 3 ワーク活用のポイント
- 第1章 「自己の感情理解」を促すワーク
- 「自己の感情理解」を育てるポイント
- 1 今の感情状態を知る(中級,20分)
- (複数の出来事によって生徒が落ち着かない状態がみられたとき)
- 2 感情の変化に気づく(中級,20分)
- (イライラや不安で落ち着かない状況が見られたとき(大きな行事の前など))
- 3 感情日記(中級,合計20分(10分+10分))
- (いつでも実施可能。感情に関する言葉の乏しさを感じたとき)
- 4 感情のサイコロトーク(上級,25分)
- (複数の出来事によって生徒が落ち着かない状態がみられたとき)
- 5 捉え方のクセを知ろう!(初級,30分)
- (相手を傷つける言動などのネガティブなかかわりが増えてきたとき)
- 6 適応的な思考(中級〜上級,25分)
- (ネガティブな捉え方がみられたとき)
- 第2章 「他者の感情理解」を促すワーク
- 「他者の感情理解」を育てるポイント
- 7 感情語の算出ゲーム(初級,20分)
- (気持ちの行き違いによるトラブルが増えてきたとき)
- 8 感情語の分類(中級,30分)
- (感情語の乏しさが気になるとき)
- 9 相手の様子を確認しよう(上級,20分)
- (一方的な表現が目立つとき,協働学習を始める前)
- 10 声から感情を読み取る(中級,15分)
- (他者の感情理解が乏しいと感じられるとき)
- 11 状況から感情を読み取る(中級,15分)
- (状況に応じた行動ができていないと感じられるとき)
- 12 感情4択ゲーム(初級,15分)
- (学級開きの段階,自己中心的な行動が多くみられたとき)
- 第3章 「自己の感情コントロール」を育てるワーク
- 「自己の感情コントロール」を育てるポイント
- 13 怒りの強さを知る(中級,25分)
- (衝動的な言動が目立つとき)
- 14 不安(緊張)の強さを知る(中級,25分)
- (落ち着きのない言動が増えたとき,不安や緊張を感じる大きな出来事の前)
- 15 深呼吸をしよう(初級,10分)
- (不安や緊張を感じる大きな出来事の直前)
- 16 グーパー体操をしよう(初級,10分)
- (不安や緊張を感じる大きな出来事の直前)
- 17 気をそらそう(中級,25分)
- (不安や緊張を感じやすい生徒が多いと感じるとき)
- 18 ストレス解消法を知ろう(中級〜上級,20分)
- (不安や緊張を感じる大きな出来事がある数か月前)
- 第4章 「感情表現を含む社会的スキル」を育てるワーク
- 「感情表現を含む社会的スキル」を育てるポイント
- 19 上手な自己表現をしよう(初級,30分)
- (表現の仕方でトラブルが起きたとき,周りに気を遣う様子が見られたとき)
- 20 上手に聞こう(初級〜中級,20分)
- (相手の話をいい加減に聞いている様子が見られたとき,学級開きの段階)
- 21 話に加わる時のひと声(初級,20分)
- (学級開き直後,学級内のグループが固まってきた後)
- 22 感謝の気持ちを伝えよう(中級,20分)
- (感謝の言葉がクラス内で少ないと思われるとき)
- 23 きちんと謝ろう(中級,20分)
- (いい加減な謝罪をするなど中途半端な人間関係が見られたとき)
- 24 確認と質問をしよう(初級,25分)
- (学級開き直後,一方的に自分の意見を伝える場面が見られたとき)
- 第5章 「問題解決スキル」を育てるワーク
- 「問題解決スキル」を育てるポイント
- 25 自由な発想力を身につける(初級,15分)
- (柔軟な考えが必要な場面)
- 26 たくさんの解決方法を考えよう(初級,20分)
- (トラブルが多くなった場面)
- 27 結果を予測しよう(中級〜上級,20分)
- (トラブルが多くなったとき,軽率なトラブルが増えたとき)
- 28 問題を解決しよう(中級〜上級,25分)
- (トラブルが増えてきたとき,学級全体で1つのことを決めるとき)
- 29 友達の問題を解決しよう(上級,25分)
- (協力的な関係ができ始めたとき)
- 30 身近なサポート源を知ろう(上級,25分)
- (年度初め,学期初め,長期休みの前後など)
- おわりに
はじめに
本書は,中学生の対人関係能力の育成をテーマにしたワーク集である。思春期を迎えた中学生は,最も重要な存在となる友人とのやり取りを通して,社会で生き抜く力を少しずつ身につけていく。例えば,自己中心的な言動によって友人から嫌われたり,互いの意見が食い違いケンカに発展することもある。こうした経験を通して,少しずつ自分の自己中心的な言動を控えたり,自分の意見を譲歩するなどの術を身につけ,対人関係における処世術を学んでいく。こうした紆余曲折を経て,親友と呼べる存在が生まれる。そして,親友にしか相談することのできない悩みを共有したり,自分たちだけの秘密や共通言語によって一体感を経験することで,心の安定を獲得し,健康的で適応感の高い中学校生活を支えることとなる。
一方で,友人関係のトラブルはいじめ,不登校などの学校不適応の課題へとつながることがある。毎年文部科学省が報告している「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」では,ここ数年10万人以上の不登校生徒が報告されている。そのうち,不登校になる要因では,学校での友人関係をめぐる問題が占める割合が最も高くなっている。これは,友人関係上の悩みによって学校不適応になるケースが少なくないということを示している。
こうした課題については,対人関係能力の未熟さが一因として必ず指摘されている。これは不登校となった生徒だけの対人関係能力が未熟であるということを指摘しているわけではない。全ての生徒の対人関係能力の未熟さによって学校不適応の問題が起きていると捉えるべきであると考える。つまり,自分だけが中学校生活に適応すればよいわけではなく,クラスの仲間が学校に適応できるように互いに支えあい助けあえる関係を構築するためのスキルを身につけることが必要となる。そこでキーワードになるのが,本書で注目している「感情」である。クラスの仲間が苦しんでいる「感情」にどれだけ気づくことができるのか,また,自分の苦しい「感情」をどれだけクラスの中に伝えることができるのか。これらの「感情」に関するスキルの育成が,多感な思春期を乗り切るために重要な視点であると考える。
本書では,対人関係能力の中でも,重要な役割を果たしている自他の感情理解,自己感情のコントロール,自己感情の表現といった感情機能に着目し,こうした力を育成するためのワークを紹介している。本書が中学生の健康的で適応的な学校生活の一助になることを願っている。
2020年6月 /山田 洋平
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