- はじめに
- 序章 説明文ではぐくむ言葉の力
- /二瓶 弘行
- 説明文の授業で教えるべきこと
- 説明文ではぐくむ言葉の力@―伝えたいことを正確に受け取る力
- 説明文ではぐくむ言葉の力A―伝えたいことの伝え方を検討する力
- 説明文ではぐくむ言葉の力B―伝えたいことに対して感想を表現する力
- 第1章から第11章は、それぞれ以下のような構成になっています。
- 1 教材分析と単元構想
- @教材分析と説明文を読み解くための中心課題
- A単元構想と発問
- B発問で見る単元の見取図
- 2 発問を位置づけた単元計画
- 3 授業展開例
- 第1章 じどう車くらべ
- /広山 隆行
- 第2章 ビーバーの大工事
- /弥延 浩史
- 第3章 「しかけ絵本」を作ろう
- /藤原 隆博
- 第4章 すがたをかえる大豆
- /小林 康宏
- 第5章 めだか
- /青木 伸生
- 第6章 ウナギのなぞを追って
- /小林 康宏
- 第7章 くらしの中の和と洋
- /比江嶋 哲
- 第8章 想像力のスイッチを入れよう
- /宍戸 寛昌
- 第9章 和の文化を受けつぐ
- /嵐 直人
- 第10章 『鳥獣戯画』を読む
- /河合 啓志
- 第11章 イースター島にはなぜ森林がないのか
- /小林 康宏
はじめに
教室にいる5年生の子どもたちに問うてみます。
「あなたは、なぜ説明文を学ぶのか」
当たり前ですが、指導者の教師にはわかっています。一編の説明文を学習材にして、どんな説明文の読みの力を獲得させるのかが明確でなければ単元計画も立てられず、1時間の授業も構想できません。けれども、その学び手である子どもたちは…。
例えば、富山和子氏の説明文『森林のおくりもの』と、教室にいる5年生の子どもたちがはじめて出合います。高学年にふさわしい教科書11ページに及ぶ文章です。
みんなで全文を音読することから始めます。段落を意識しながら交代で読み進めます。
しばらく音読が続く中で、教師は、ふと気づきます。
あの席のあの子、すでに目がうつろになっている。こっちの子は鉛筆をいじり始め、どこを読んでいるかわからなくなっている。さらにあの子が、あの子が、バタバタと「倒れる」。文章の途中で学級の半数以上の子が倒れている。彼らは読み続けることを拒否している。
その後の十数時間の学習によって、さらに子どもたちは次々に倒れていきます。
そうして、単元の最終段階、筆者・富山和子さんの伝えたいことを読み取り、要旨をまとめ、さらに、筆者への自分の意見を文章化するという授業。その学習が成立するのは、「生き残った」わずかな子どもたちのみ…。
そんな説明文の授業から脱却するために、説明文とはそもそもどのような文章なのか、物語と何が違うのか、子どもたちは学ばなければなりません。そして、私たち教師は、その説明文の確かな読み方を獲得させる、説明文の授業をつくっていかなければなりません。
授業の命は、「発問」です。この「発問」が、教師が精一杯の教材研究から生み出す「子どもに発する問い」にとどまることなく、学習者の子どもたち自身が「自らに発する問い」となったとき、真の「主体的・対話的で深い学び」は、きっと実現します。
本書では、教科書掲載の様々な説明文について、綿密な教材研究を基に、どんな発問を設定していけばよいのか、若い先生方にも受け取っていただけるよう丁寧に解説しました。
説明文の「明日」の授業づくりに、少しでもお役に立てることを心から願っています。
2021年7月 /二瓶 弘行
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