- まえがき
- 第1章 理論編 「対話的な学び」を促すストラテジック・リスニング
- 1 「きくこと」を指導する意義
- 2 ストラテジック・リスニングとは
- 3 「対話的な学び」との関連
- 4 「訊く力」を高める指導の必要性
- 第2章 指導編 ストラテジック・リスニングの力をつける「トークタイム」
- 1 トークタイムのねらい
- 2 トークタイムの年間指導計画例(低学年・中学年・高学年)
- 3 トークタイムの指導手順
- 4 トークタイムテーマ33(紹介型・対立型・追究型・学習活用型)
- 5 +αで行う日々のちょこっと指導7
- 第3章 実践編 学習プログラム「トークタイム」の実践事例
- 1 低学年 わたしのすきなキャラクター
- 2 低学年 優しい人ってどんな人?(振り返り)
- 3 中学年 大人になるってどういうこと?
- 4 中学年 大人になるってどういうこと?(振り返り)
- 5 高学年 住むなら都会か田舎か
- 6 高学年 住むなら都会か田舎か(振り返り)
- 7 他の学習場面での子ども達のきく姿
- 第4章 資料編 すぐ使える!ワークシート集
- 1 引き出し言葉の表
- 2 低学年用座席の形カード
- 3 中学年用座席の形カード
- 4 高学年用座席の形カード
- 5 低学年用トークタイムカードA
- 6 低学年用トークタイムカードB
- 7 中学年用トークタイムカードA
- 8 中学年用トークタイムカードB
- 9 高学年用トークタイムカードA
- 10 高学年用トークタイムカードB
- 11 高学年用トークタイムカードC
- あとがき
まえがき
教師となり初めて子ども達の前に立った日から,私は「対話のあるクラス」を常に目指してきました。考えと考えが伝わり合う,心と心が通じ合う,そして子どもと子どもが高まり合う,そんなクラスをつくりたかったのです。教師が教室の前に立って延々と学習上で大切なポイントを講義したり,一部の「賢い」子どもだけが持っている知識をとうとうと語ったりする教室にも「声」はあります。ですがその「声」の届く先,きき手の表情やしぐさはどうなっているでしょうか。本当に自分の一部として友達の考えを取り込むかのようにきいているかいないかは,きき手の姿を見れば一目瞭然ですよね。これではその教室に本当の意味での「対話」はありません。私はそのような教室から脱却したいと思い,本当の「対話」が生まれる教室を求めてこれまで実践を重ねてきました。その追究の過程で,今私が取り組んでいるのが「ストラテジック・リスニング」です。ストラテジック・リスニングを指導するうえで教師として意識しておきたいことは,普段私たちがよく目や耳にする「聞くこと」を「聞く」「聴く」「訊く」とその機能に着目して使い分けることです。本書ではあえて「きく」と表記することで,これまでの一般的な「聞くこと」の指導と分けています。詳しくは理論編でご説明いたします。
ストラテジック・リスニングの指導を通して,私は子ども達に他者の話を「どうきくか」を教えています。本書ではその取り組みを中心にご紹介します。第1章では「理論編」として,「きくこと」の指導に関わる先行研究や私がストラテジック・リスニングを考案するに至った経緯をまとめています。「きくこと」の指導はその先生の感覚に左右されることが多いと思われます。また評価する手立ての開発もこれまで不十分でした。「話し手の方を見る」「うなずきながら聞く」「手遊びせずに聞く」など,態度面の指導に終始することも少なくはありません。そのような段階から少し次の段階に進んでみたいと思います。第2章では「指導編」としてストラテジック・リスニングの力を育む学習プログラム「トークタイム」の指導の流れや留意点をご紹介します。手順を明確にし,初めて取り組む先生でも実践していただきやすいようにと心がけています。第3章では「実践編」として子ども達が実際に「トークタイム」を行った事例の紹介や,これまで私が行ってきた子ども達への指導のポイントをまとめています。ストラテジック・リスニングは完成された理論ではもちろんなくて,今後たくさんの実践を通して知見を集積したり,現場の先生方と意見交換したりしながら,改善を加えていくべきものだと考えています。本書をお読みになった先生方,実践されてみた先生方とぜひ意見交換の場を持ちたいと思っています。読者の先生方からのご意見をお待ちしております。第4章では,「資料編」として「教室で明日からすぐに使えるように」を意識してワークシートやカードを掲載しています。まずは子ども達とやってみる,そしてストラテジック・リスニングで実現できる学びを,子ども達と実感されることをおすすめします。
近頃のニュースを見ていると,他者と対話的な関係を築くことがいかに難しいかを痛感させられます。相手に指摘されることを嫌って,どう相手を言いくるめようか,自分の不備をどう隠すか,そんなことに躍起になってしまうことは対話の本来の目的を失わせてしまいます。それにそのような人間同士のつながりに,どこか悲しい気持ちを感じてしまうのは私だけでしょうか。子ども達の前に立つ一人の大人として,子ども達には人と心を通わせる「対話」の楽しさをぜひ感じ取ってもらいたいと思います。また,「対話」を通して他者と何かを創り上げることができる人になってほしいと思います。そんな願いの実現に向けた取り組みの1つが,「ストラテジック・リスニング」です。私と同じ願いを持つ先生方がこの本を手に取っていただけること,そしてそんな先生方のご指導に少しでも本書がお役に立てるのであれば,私にとってこれ以上の喜びはありません。
2020年6月 /友永 達也
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- 明治図書
- 対話話し合いの授業を行う上で、「聞くこと」がベースとなります。その「聞くこと」や「話すこと」の力をどのように育成するか、そのヒントを得ることができました。2021/3/2130代・小学校教員