- はじめに
- アセスメント
- Q1 子供の状態を把握するにはどのような方法がありますか?
- Q2 障害の特性による困難さとはどのような状態ですか?
- 指導計画・方法・内容
- Q3 個別の指導計画をどのように作成したらよいですか?
- Q4 指導内容をどのように精選するとよいですか?
- Q5 小集団の指導ではどのようなことを工夫していますか?
- Q6 小集団を編成する際にはどのような配慮が必要ですか?
- Q7 コミュニケーションの指導ではどのように授業を組み立てるとよいですか?
- Q8 身体の動きを高める指導ではどのように授業を組み立てるとよいですか?
- Q9 苦手さに応じて指導の参考になるものを教えてください
- Q10 在籍学級を過ごしやすくするにはどのようにしたらよいですか?
- Q11 評価や指導の見直しはどのようにするとよいですか?
- Q12 学習障害傾向の子供にはどのような指導をするとよいですか?
- Q13 多動傾向の子供にはどのような指導をするとよいですか?
- Q14 不注意傾向の子供にはどのような指導をするとよいですか?
- Q15 選択性かん黙や不安傾向が強い子供にはどのような指導をするとよいですか?
- Q16 衝動性が強い子供にはどのような指導をするとよいですか?
- Q17 身体の動きがぎこちない子供にはどのような指導をするとよいですか?
- Q18 自閉症傾向の子供にはどのような指導をするとよいですか?
- Q19 中学校生活につなげるにあたってどのような配慮が必要ですか?
- 指導スキル
- Q20 子供にはどのようなかかわり方をするとよいですか?
- Q21 どのようなことに気を付けると子供を認めて伸ばす指導ができますか?
- Q22 子供に指示を出すときにはどのようにするとよいですか?
- Q23 通級指導について本人にどのように説明するとよいですか?
- Q24 専門的な知識をどのようにして学んでいったらよいですか?
- 在籍学級との連携
- Q25 どのタイミングで在籍学級の様子を見に行ったり,担任と話すとよいですか?
- Q26 通級指導について在籍学級の子供にどのように説明するとよいですか?
- Q27 通級指導の内容を在籍学級で生かすにはどのようにしたらよいですか?
- Q28 在籍学級・通級・保護者の連絡帳にはどのようなことを書くとよいですか?
- Q29 担任との面談ではどのようなことに配慮するとよいですか?
- Q30 通級指導をすすめるにはどのようにしたらよいですか?
- Q31 通級指導の終了はどのように考えたらよいですか?
- 保護者との連携
- Q32 保護者との面談はどのように進めたらよいですか?
- Q33 保護者の心情を理解するにはどのようにするとよいですか?
- Q34 保護者に通級指導の内容をどのように説明するとよいですか?
- Q35 保護者との信頼関係をどのように築くとよいですか?
- Q36 保護者に子供の様子をどのように伝えるとよいですか?
- Q37 保護者からの相談にはどのように対応するとよいですか?
- 専門家との連携
- Q38 関係機関とどのように連携していくとよいですか?
- 用語ミニ解説
- Q39 「感覚統合」とは何ですか?
- Q40 「ビジョントレーニング」とは何ですか?
- Q41 「ソーシャルスキルトレーニング」とは何ですか?
- 資料
- 1 教育課程の届け出の例
- −1 情緒障害
- −2 自閉症
- −3 学習障害
- −4 注意欠陥多動性障害
- 2 個別の指導計画の例
- −1 情緒障害傾向
- −2 自閉症傾向
- −3 学習障害傾向
- −4 注意欠陥多動性障害傾向
- 3 自立活動の学習指導案の例
- 4 授業評価シートの例
- 5 教室案内の例
- 6 通級指導教室ガイドラインの例
- 7 時間割の例
- おわりに
- 参考文献
- 執筆者紹介
はじめに
通級による指導は,平成5年に小・中学校で制度化されて以来,平成18年に学習障害・注意欠陥多動性障害が新たな対象として加わり,平成29年度には通級による指導担当教員の基礎定数化がなされました。平成30年度からは高等学校においても通級による指導が制度化され,順次拡充されています。全国的には自閉症・情緒障害特別支援学級が増加しており,その成果も認められるところですが,通常の学級に在籍しながら障害の特性に応じた指導を受けられる通級による指導は,大変に期待されています。
通常の学級に様々な子供が在籍していることは周知の事実ですが,その子供に対し,学級担任だけではなく,通級による指導の担当者がかかわりながら,健やかな成長を促していくことは,これからのインクルーシブ教育を進めていく上で非常に有効なことだと思います。
現在,東京都では,通級による指導を子供が自分の在籍している学校で受けることができるよう,通級による指導の担当教員が巡回して指導する「特別支援教室」の形をとっています。平成30年度で既に,東京都全ての小学校で巡回での通級による指導が始まっており,続いて中学校も,平成33年度には全校で導入される計画となっています。このことにより,通級による指導を受ける児童生徒数は爆発的に増加しています。全国では,学校基本調査によると平成29年度には100,000人(全児童生徒の1.11%)を超え,この10年間で2.4倍に増加したのに対し,東京都では,平成30年度には23,000人を超え,この10年間で3.2倍に増加しました。やはり,自校で通級による指導を受けられるということのメリットが大きく影響しています。
調布市では,東京都の動向を受け,平成24年度から通級による指導の巡回指導を段階的に実施し,平成28年度から市内全小学校で本格的に実施しています。この間,調布市教育委員会からの指導はもとより,市内の小学校長会あげての取組がありました。教育委員会からの明確な方針,通級指導教室を設置している学校の校長同士の連携,市内全小学校長の理解と協力等により一歩ずつ進めてきました。巡回指導の試行を始めた平成24度には,通級による指導を受ける児童生徒が200人程でしたが,平成30年度には650人を超えています。調布市の小・中学生が約15,000人であることを考えると,かなりの割合の子供が通級による指導を受けていることがわかります。
これだけ急激に指導する子供が増加するということは,その指導を担当する教員も増加するということで,平成30年度は,調布市で通級にかかわる教員も60人以上となっています。特別支援教育の専門性が高い教員ばかりが存在するわけではなく,新規採用の若手教員や通常の学級から異動してきた教員など様々であるのは他の地区でも同じだと思います。しかし,せめてせっかく配置された教員には,特別支援教育に携わる意欲と誇りをもってもらいたい,それが本書を執筆することになったきっかけです。通級による指導,特に発達障害のある子供への教育は,まだまだ歴史が浅く,確固たるものがないといえます。自立活動を主とした指導といっても,特別支援学校で行われている自立活動をそのまま導入すればよいわけではありません。また,医師や心理職の方々と同じことをするわけでもありません。通常の学級の担任と連携しながら,子供が自分の力を発揮し,生活しやすくするにはどうしたらよいのか,実践をまだまだ積み上げていく必要があります。
調布市においても,通級による指導を担当する教員の研修の在り方や,教員同士のOJT,通常の学級における通級による指導の理解等,模索中です。それでも,通級による指導の成果が実感できるからこそ,担当している教員の取組は前進していると感じます。特別支援教育について,新学習指導要領の中では子供のマイナスな課題ばかりに目を向け改善を図ろうとするのではなく,プラス面である得意なことや好きなことを伸ばしていくという視点が明確に表れています。大きくいえば,通級による指導が発展していくことは,多様性を認める社会につながっていくことだと思います。
全国で様々な工夫が実践され,各地で報告され,ますます通級による指導が充実していくことを期待して,今後も日々,実践を重ねていきます。
東京都調布市立飛田給小学校長 /山中 ともえ
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