- まえがき
- 第1章 世界と日本を融合する歴史授業デザイン
- 1 世界と日本の歴史を融合する視点と方法
- ――第1章の読解のための総説
- 2 学びの意味の視点からの歴史授業デザイン
- ――「私たち」に歴史を取り戻す:歴史学習のコペルニクス的転回
- 3 コモン・グッドの視点からの歴史授業デザイン
- ――「教室外の価値(Value beyond schools)」を問う
- 4 持続可能な社会の視点からの歴史授業デザイン
- ――現代の課題から歴史の授業へ
- 5 「見方・考え方」の視点からの歴史授業デザイン
- ――歴史総合が目指す授業の条件
- 6 「主体的・対話的で深い学び」の視点からの歴史授業デザイン
- ――探究の明確化と可視化を目指して
- 第2章 世界と日本を融合する「歴史総合」授業モデル
- 1 「歴史総合」指導計画作成の視点と方法
- ――第2章の読解のための総説
- 2 「歴史の扉」の教材と授業モデル
- 1 歴史と私たち
- ――現在と過去につながりを見出す学習
- 2 歴史の特質と資料
- ――「歴史」を描く活動を始める前の準備運動
- 3 「近代化と私たち」の教材と授業モデル
- 1 近代化への問い
- ――問いの探究学習
- 2 結びつく世界と日本の開国
- ――18・19世紀の世界を郷土資料から解き明かす
- 3 国民国家と明治維新
- ――国民をつくる/国民になるとはどういうことか
- 4 近代化と現代的な諸課題
- ――何気ない日常の行為から歴史を考える
- 4「国際秩序の変化や大衆化と私たち」の教材と授業モデル
- 1 国際秩序の変化や大衆化への問い
- ――資料を読み取り,時代の変化に気づく
- 2 第一次世界大戦と大衆社会
- ――総力戦が変えた社会
- 3 経済危機と第二次世界大戦
- ――開戦,憲法,当時の国民の意思は?
- 4 国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題
- ――歴史から学び,現代的な課題を展望する
- 5「グローバル化と私たち」の教材と授業モデル
- 1 グローバル化への問い
- ――世界経済の劇的な変化を「問い」にする
- 2 冷戦と世界経済
- ――史資料を批判的に読む練習
- 3 世界秩序の変容と日本
- ――「逆向き設計」論による授業デザイン
- 4 現代的な諸課題の形成と展望
- ――学習の全体計画と教師の支援が重要
- あとがき
まえがき
中学や高校・大学の社会系教師の間で,地理歴史科の新設科目「歴史総合」への関心が高まっている。その多くは「様子見」といったところであろうが,実際に担当することになる教師の多くは期待と不安の入り混じった複雑な心境でいるにちがいない。日本史・世界(外国)史という枠を取っ払った近現代史の必履修科目は,学制発布以来一度もなかったことを考えれば,不安の大きさは十分に想像できよう。だが,不安と同等か,それを上回る期待もあるのではなかろうか。なぜなら,学習指導要領では内容の大枠は示されているものの,追究のための問いの設定や資料の選択は従来以上に各学校に委ねられているからである。それだけ教師のカリキュラム・マネジメント能力が問われてくるわけであるが,やりがいもまたあるのである。
しかし,何事であれ,期待通りにことが運ぶとは限らない。そうすると,期待が大きかった分,失望は増幅されて返ってくる。その時,人間の弱い心に悪魔がささやく。「所詮,総合など無理なんだから,大学受験科目に合わせて日本近現代史と世界近現代史に分けて教えればいいんだよ」と。そして,歴史教育はいつか来た道を歩み出す。その先は,多分「破滅」以外にない。日本は,自由で開かれた社会のはずである。折角,個々の学校,教師に委ねられたカリキュラム・マネジメントの権限を,自ら放棄する手はない。とはいえ,孤軍奮闘にも限界がある。やはり,志を共有する者同士で学び合い,鍛え合って,実践に備える必要があろう。そうした教師たちの一つの,しかし強力な武器たることを目指して本書は編集されている。是非,手にとって,歴史総合の理論武装や,授業づくりの武器たり得るか,試していただきたい。編者としては,それに耐えうる陣容で臨んだつもりである。
本書が「歴史総合」の理念の実現に寄与することを願ってやまない。
/原田 智仁
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- 明治図書
- 事例が多く、掲載されており、役に立つ。2022/2/21ponta