- はじめに
- 1章 「情報の扱い方に関する事項」をどう指導するか
- ―「参照する力」を育む―
- 1 学習環境の情報化と言葉の学び
- 2 「参照力」とは
- 3 「情報の扱い方に関する事項」との関連
- 4 小学校・中学校9年間を見通した系統的な学び
- 2章 小学校「情報の扱い方」の全学年授業モデル
- 1年 話すこと・聞くこと 読むこと 小学校第1段階/順序 オリジナルおおきなかぶをつくろう
- 1年 読むこと 小学校第1段階/共通・相違 おきにいりののりものしょうかいをしよう
- 1年 読むこと 小学校第1段階/共通・相違 むかしばなしとおともだち
- 2年 話すこと・聞くこと 小学校第1段階/共通・相違 「同じ,ちがう」でくらべよう,ふ小とせかいの小学校!
- 2年 読むこと 小学校第1段階/順序 つたえよう! ぼく・わたしのお気に入りの草花
- 3年 話すこと・聞くこと 小学校第2段階/選択 もっと聞かせて!先生のひみつ
- 3年 書くこと 小学校第2段階/比較・分類 AとB,あなたはどっち!? 附小なるほどアドバイザーになろう
- 3年 書くこと 小学校第2段階/比較・分類 1年間のマイベストメモリー クラス詩集を作ろう
- 4年 読むこと 小学校第2段階/比較・分類 この人のこと,語り合おう
- 〜ごんぎつね〜
- 4年 書くこと 読むこと 小学校第2段階/選択 あなたのお悩み,解決します!
- 〜わたしの考えたこと〜
- 5年 読むこと 小学校第3段階/情報のつながりや関係 物語のおもしろさを解説書にまとめよう
- 6年 話すこと・聞くこと 小学校第3段階/情報のつながりや関係 宇大附小PR会議を開こう!
- 6年 読むこと 小学校第3段階/情報の組み込み方 「いいね」投稿でつながろう,せかいと,みんなと
- 6年 書くこと 読むこと 小学校第3段階/情報の組み込み方 文学作品を読み,平和について論文を書こう
- 3章 中学校「情報の扱い方」の全学年授業モデル
- 1年 書くこと 中学校第1段階/意見と根拠の区別 編集長を説得しよう
- 〜根拠を明確にして書こう〜
- 1年 読むこと 中学校第1段階/意見と根拠の区別 「読み手をひきつける文章」とは?
- 〜新聞コラムから考える〜
- 1年 読むこと 中学校第1段階/比較・分類 目的や相手に応じて情報を選択しよう
- 〜「餃子の街宇都宮」のよさを伝えるリーフレット〜
- 2年 話すこと・聞くこと 中学校第2段階/情報と情報との様々な関係 市町長になって観光客を呼び込もう
- 2年 書くこと 中学校第2段階/情報と情報との様々な関係 学校紹介文を作成しよう
- 〜ホームページに掲載する学校紹介文を考える〜
- 2年 書くこと 中学校第2段階/情報の吟味と効果的な表現 宇都宮市内観光コースの提案文を吟味しよう
- 3年 話すこと・聞くこと 中学校第3段階/自分の考えを論理的に展開する 附属中学校を紹介しよう
- 3年 書くこと 中学校第3段階/情報の信頼性 社説を書こう
- 3年 書くこと 中学校第3段階/自分の考えを論理的に展開する 答辞を書こう
- 4章 これからの時代の読み書きと「参照力」
- 1 本書で提案した授業実践の意義と成果
- 2 今後の課題
- おわりに
- 執筆者一覧
はじめに
本書は,宇都宮大学共同教育学部と附属学校園との連携研究事業による「国語科プロジェクト」の実践研究の成果を元にしています。宇都宮大学共同教育学部の附属学校園では,地域・社会の教育研究,教員養成・研修等の機能強化を目指し,2018年より大学教員と附属学校園教員による「連携研究事業」を行っています。「小中学校の学びの連続性を考えた単元・授業づくり」「大学教員の知見を生かした授業実践・分析・評価」の2点を方策とし,各教科等に分かれ13のプロジェクト(研究部会)が組織されています。本書はその一つである「国語科プロジェクト」が開発した実践事例集です。
国語科プロジェクトは,宇都宮大学共同教育学部附属小学校と中学校の国語科教諭,そして共同教育学部の教員(国語教育担当教員)とで組織されています。小学校と中学校では,当然ですが子どもの発達段階や実態が大きく異なります。授業づくりの理念や方策なども,小中でそれぞれ独自に開発・発展してきた経緯がありました。また大学教員も,実践後に「意味づけ」のような形で指導・助言することは従前からありましたが,授業構想の段階から理論面を支えつつ関わることはあまりありませんでした。
こうした状況の中で「国語科プロジェクト」は2018年に発足しました。小学校・中学校・大学の教員らがそれぞれの実践知や知見を持ち寄りつつ,互いの研究方法をすり合わせながら,小中9年間を見通した共通の研究テーマを追究することになったのです。
私たちはまず,小中9年間の言葉の学びの連続性と系統性をどのように捉え,何に焦点化して実践していくかについての議論から始めました。そこで出てきたのが「参照力」という新しい概念です。後で詳述しますが,これは高度に情報化された現代の言語環境の中で,子どもたちが主体的に読み書きしていくために必要な力だと私たちは考えています。
GIGAスクール構想により,1人1台の情報端末を活用した実践が次々開発されています。教室で扱われる言語情報は多様化し,また他者とのコミュニケーションの質も変貌しつつあります。そのような中で,子どもたちがどのように他者の言葉と向き合いながら,主体的に自身の考えを形成し,表現に組み入れていくか。「参照力」を提案した背景には,こうした問題意識があります。私たちは小中それぞれの子どもの実態を踏まえながら,「情報の扱い方に関する事項」の領域を中心に授業実践を構想し試行してきました。読み書きの有り様も学習環境も変化し続けていますが,国語教室が他者とともに言葉を育む場であることは不易です。それが本書の基本姿勢となっています。
2023年9月 /森田 香緒里
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- 明治図書