- はじめに
- Chapter1 学級通信の役割
- 学級通信で「授業実践」を残すため!
- 「板書記録」を「実践記録」にする
- 学級通信を「アウトプットの場」にする
- 「写真に残す意識」が授業改善につながる
- 学級通信で学級に「プラスのストローク」を生む
- 学級通信で「子どもたちの成長」を伝えるため!
- 子どもの姿を「切り取る」意識が教育観を育む
- 子どもの「成長の瞬間」を語れるようになる
- 学級通信で素直に喜べる子どもたちが育つ
- 学校と家庭とで子どもを伸ばす
- 子どもたちに読み聞かせ,成長を実感させる
- 学級通信で「教育に関する情報」を共有するため!
- 「○○教室」を紹介する
- 「動画教材」を紹介する
- 「中学校の情報」を紹介する
- 「教育イベント」を紹介する
- 学級通信で「学校の様子」を知らせるため!
- 「自己開示」する
- 「お願い」を連絡する
- 「学習の様子」を伝える
- 子どもの生の声を届ける
- 学級通信で「管理職の指導」を受けるため!
- 200回の指導を受けた2年目
- 学級通信は「書き出し」で決まる
- 学級通信の「書き出し文例25」
- 所属校で学ぶ教師になろう
- コラム 子どもが書く通信
- Chapter2 発行のポイント ちょこっとスキル
- タイトルは「見た目」も「意味」も重視する!
- 「前向きな願い」をタイトルに込める
- タイトルの「意味づけ」が通信の軸となる
- 「フォント」や「デザイン」もこだわる
- 発行の「目的」をもち,「ペース」をコントロールする!
- 「発行数」は気にしない
- 学級通信に振り回されない
- 「発行頻度」で「内容」を考える
- 「読み手」を意識して書き分ける
- 学級通信作成をルーティン化する
- 「何のために学級通信を書くか?」という目的を見失わない
- 「スタイル」を決め,「見通し」をもつ!
- 「4つの型」で書き分ける
- 「4つの型」のいいとこどり「B4判6段構成型」
- 原本データを「複製」して発行を見通す
- 「見せる通信」という意識をもつ
- 学級通信で使う前提で「写真」を撮る!
- 使いたい写真を「ねらって」撮る
- 活動の「事前・事後」を写真で伝える
- 「イラスト」は大きく使う
- 「お刺身」を食べさせるつもりで書く!
- 「ネタ・醤油・わさびのバランス」を大切に書く
- 「大葉」は刺身を引き立てる
- 文章は「お刺身5ステップ」で書く
- 「挨拶文」や「導入文」を活用する
- 「文章力」が味を決める
- Chapter3 学級通信の実際と解説
- 出会いの春 実例1〜実例5
- 生き生き夏 実例6〜実例10
- 実りの秋 実例11〜実例15
- 力を蓄える冬 実例16〜実例20
- 日常と非日常 実例21
- 日々の授業 実例22〜27
- マラソン大会 実例28〜29
- 音楽集会 実例30〜31
- 運動会 実例32〜35
- 修学旅行 実例36〜39
- 校外学習 実例40〜43
- 授業参観 実例44〜47
- 始業式 実例48〜51
- 修了式・卒業式 実例52〜54
- その他(研究会など) 実例55〜59
- コラム 学級通信は製本して残す
はじめに
こんにちは。古舘良純(ふるだて・よしずみ)と申します。
共著では数冊の発刊に携わらせていただいたことがあります。しかし,単著はこれが初めてです。ひとりで本を書き上げる作業は大変孤独なものだと感じながら,コロナ禍の夏にかけて書かせていただきました。
この本は,学級通信が子どもを育てるだけではなく,教師の成長も支えるという側面を重視して書いています。つまり,「学級通信の発行」が目的ではなく,「教師自身の力量形成のために学級通信を書きませんか?」というスタンスで書かせていただきました。
私自身のキャリアの半分以上は,6年生の担任です。Chapter3の実物を見ていただければわかると思いますが,通信の内容も高学年向けが多く,「参考にしたい」と思っている方の期待に添いきれない本かもしれません。しかし,「学級通信を発行することによる教師の成長」を基本コンセプトにしていますので,そのつもりでお読みいただければ幸いです。
そんな私は,学級通信を発行すること自体に抵抗感があります。発行せずにすむのであればそうしたいと思うことがあります。
そもそも,私が本格的に学級通信を発行し始めたのは,当時(2年目)の学年主任の一言からです。私自身が発行したくて書き始めたわけではありませんでした。(今となっては感謝しかありません!)
毎日,毎週,時間を割いて書き,学年主任や管理職の検閲を受け,直し,印刷し,配付して読み聞かせる。こうした一連の流れが,学校現場ではどれだけ手間のかかることか,想像すればおわかりいただけるでしょう。
特に,若い頃は直しが多く,管理職に「朱書き」された通信にテンションが下がることがたくさんありました。生徒指導やトラブルによって休み時間が削られ,昨晩必死になって書き上げた通信を出せずに子どもたちを下校させてしまう日も少なくありませんでした。どちらかといえば,学級通信を発行する大変さやコストの大きさを強く感じていました。
しかし不思議なことに,学級通信に関する書籍が出回ったり,SNSで情報発信されたりと,学級通信を発行する方は後を断ちません。それどころか,タブレットを使って手軽に作成できるようになったり,写真の取り込みや編集が楽になったりして,学級通信を発行する先生が多くなっているように感じます。また,紙媒体ではなくメール配信での実践など,学級通信の新しいスタイルが生まれ始めているのではないかとも感じます。
学級通信に関する投稿では,若い先生方を中心に書き方やテンプレートがSNS上で紹介されています。ベテランの先生も軽く100号を達成するなど,働き方改革が叫ばれる教育現場において,学級通信という文化は根強く残っていることがわかります。
本書で大切にしている考え方として,学級通信発行の良し悪しを問いたいわけではないというものがあります。学級通信の発行にはメリットもデメリットもあります。書く派・書きたい派,書かない派・書きたくない派には,それぞれの主張があり,何が正しいとは言えません。
私もときどき,「学級通信を出さなければどれだけの時間を生み出せただろう」と考えることがあります。学級通信にかけてきた時間は計り知れないからです。「もっと子どもたちのノートを見る時間を生み出せたのではないか」「もっと教材研究や授業準備に時間をかけてくるべきではなかったか」と学級通信発行のデメリットを考えてしまいます。
しかし,様々自問自答するものの,学級通信を書いてきてよかったという結論に達します。書いてこなければ,今の自分はなかったと言いきれます。それほど,学級通信は私自身の成長に欠かせないものだったからです。
学級通信を発行した年は通信を製本して手元に残しています。地域の業者に依頼して形にしています。私は,そうした学級通信集を今でも読み返すことがあります。10年前の通信でも,そのときパソコンに向かって写真を取り込んだり,文章を打ち込んだりしていた時間が鮮明によみがえってきます。
パソコンに向かって写真を眺めながら,子どもたちの成長を喜んだり,どうしたら保護者に伝わりやすくなるかを考えたりして通信を書いていました。書いている時間は,学級のこと,子どもたちのことだけを考えていました。時間が経つのを忘れ,何度も読み返して修正していました。そして,管理職のチェック通過を願うばかりでした(笑)。
今では,ちょっとした時間があれば学級通信を書き上げられるようになりました。学級に対する思いを以前よりは言葉にできるようになり,文章の調整や書き直しをせずとも,それなりに1枚に収められるようになりました。
残念ながら,若い頃の時間をかけて書き上げた達成感を感じにくくなっているのは事実で,少し寂しい気持ちもあります。だからといって,学級通信に対する熱量が下がったわけではありません。目の前の子どもたちの心に染みわたるように,保護者の心に届くようにと願って書くことにかわりはありません。そのための力を身につけたい,と今でも試行錯誤を重ねています。
これからも続く教職人生の中で,「学級通信」を書かなくなるときがくるのかな……と考えたこともあります。例えば,若手と学年を組んだ際,無理強いしてしまうのではないかと考え,発行が難しくなるかもしれません。仕事の状況によっては,「今年は書かない」と自分で決断する場合も考えられます。
でも私は,自分の未来を考えたとき,「どんな形でも書き続けていくのではないか……」と予測しています。
その1つ目の理由は,子どもたちを育てていくためです。担任は願いを込めて通信を書き綴ります。子どもたちは,その願いを必死に感じ取ろうとしながら読みます。思いつきで話した内容や,場当たり的な指導では入っていかない言葉も,通信に書くことで子どもたちの心に響き,成長させるきっかけになるからです。そして,そうした子どもたちを目の当たりにしてきたからです。
2つ目の理由は,教師を成長させてくれるからです。私の中では一番大きな理由です。先にも書きましたが,学級通信は私自身の成長に欠かせないものでした。学級通信は,私が感覚的に行っていた学習指導や学級経営を言語化し,意味づけするための場になっていました。「学級通信を書くことは教師の力量形成につながる」というメリットを大変感じています。
もしかしたら,学級通信を発行する人の多くはこのメリットにピンときていないかもしれません。通信を書き続ける中で「ああ,こうやって書く力がついてきたんだな……」「なんだか4月とは違うぞ……」と後になって感じることはあっても,学級通信を書き始める動機として,真っ先に「教師の力量形成」を掲げる人は少ないでしょう。
ではなぜ,私は力量形成のために学級通信を書くべきだと考えたのでしょうか。それは,現在の学校現場において,アウトプットの場が少なくなっていると感じたからです。これは,私が勤めてきた学校やその地域,ともに学んできた仲間からの情報です。偏った考え方かもしれませんが,1つの考え方だと思ってください。
例えば,授業研究会における学習指導案の簡略化が進んでいます。枚数を減らして3ページ程度にまとめるという流れでした。理由は「先生方の負担になるから」でした。もちろん,学習指導案作成にかける時間は少なくないはずです。学習指導案作成が簡単にすめば,時間を生み出すことができます。多忙を極める現在の学校現場において,学習指導案を簡略化することは,致し方ないことなのでしょう。
しかし,負担を減らすことと学習指導案のページ数を減らすことは,別の問題ではないかとも考えます。子どもたちと向き合い,学級を俯瞰し,自分の指導観を磨くチャンスを自ら減らしているのではないかと思うからです。
学習指導案をはじめ,学級経営案や目標申告書など,公的に行っていた書く活動(アウトプット)が簡略化され,減っているように感じます。
また,私たち教師の学びがインプットに偏りやすくなっているという理由もあります。スマホで「ポチッ」とすれば簡単に本が手に入るようになりました。カスタマー同士で本のやりとりができるアプリもあり,読んだ本を手軽に売って違う本を手に入れることもできます。
電子書籍も普及し,本を持ち出しやすくなりました。オーディオブックがあれば,本を開かなくても読書できるようになりました。また,SNS上での実践紹介やオンライン勉強会が日常的になり,セミナー等への参加も圧倒的に負担が減りました。今,身の回りには教育に関する情報があふれかえっており,簡単にインプットの機会を得られるようになっています。
もちろん,インプットによる学びは貴重で,学んだ方法や考え方が学級に大きく影響することは知っています。しかし,学んだ内容を取り入れ,咀嚼し,血肉にしていくためには,アウトプットが必要なはずです。抽象的な学びを教室の具体で示し,自分自身の言葉で語れてこそ,力量形成につながっていくと考えています。
そのために「学級通信をアウトプットの場」にしてみてはいかがでしょうか。1回に書く分量は少なくても,1年間書き続けることでまとまった形になり,力量形成につながるはずです。
本書は,そのようなアウトプットを通した教師の成長を願って構成してみました。
Chapter1では,学級通信の役割について考えてみました。学級通信には必ず読み手がいます。教師の成長のためとはいえ,読み手を考えない通信は自己満足にすぎません。授業実践や教室の様子を届けるための視点について示しています。また,管理職の指導を受ける場になるという視点でも書きました。管理職の先生方は,少なくとも私たちよりも多くの文書に目を通しています。誤字脱字の指導以外にも,適切な表現方法の指導もしてくださいます。素直に指導を受けることで,大きく成長できると考えています。
Chapter2では,学級通信作成のポイントをまとめてみました。発行の頻度や,通信のスタイルについて考えてみました。量と質の両面を求めるためです。これらの内容は,すでに実践ずみの方もいるかもしれません。私も,これまで発行してきた過去の通信集を分析しながら意味づけしてみました。Chapter1の視点を受け,いかに効果的に表現するかと同時に,自分らしいスタイルの確立を目指しています。その分析の中で気づきがありました。通信を発行しようと決めたとき,「楽しんで」通信を書いていたということです。教師が成長するとき,苦しいながらも「楽しんでいる」ことが必要であると感じます。これは,コツ(ポイント)以前の問題です。
Chapter3では,これまで発行してきた学級通信の実物を紹介しています。季節ごとや行事ごとに内容を分類して紹介しています。先にも書いたように私のキャリアの半分以上が6年生担任です。実物の内容に偏りがあることはご理解いただきたいと思います。しかし,そこに込められた願いや思い,楽しみながら積み重ねていく重要性を感じていただけると幸いです。
また,Chapter3の実物に関しては,私がこれまでお世話になった先生方にご協力いただき,実物のサンプルを提供していただきました。どの通信もその先生らしい書きぶりでした。読ませていただきながら心躍る思いでした。本当にありがとうございました。
学級通信を本格的に発行しようと決めた2年目の春。十数年後に,こうして学級通信の書籍を書いているとは,夢にも思いませんでした。そう考えると,いろいろな思いを抱えながらも書き続けてきてよかったと思います。
私の本棚には,過去の学級通信集が並んでいます。それは,子どもたちとの思い出であるとともに,私自身の成長の記録でもあります。学級経営,授業実践,学級に対する思い……など,たくさんの視点で書いてきました。
それに付随する資料や写真なども,どうしたら子どもたちが輝くか,どの瞬間を切り取ったらより成長が浮き彫りになるかを考え,何枚も撮りました。
学級通信という「実践」が,私自身を育ててくれたと思っています。それは「仕事」とは違う,「学びの場」だったと感じます。ぜひ,みなさんも力量形成の意味にもウエイトを置き,学級通信を書いてみてはいかがでしょうか。
最後に,学級通信は読み手がいて初めて送り届けることができます。これまで,何度も学級通信を手にとってくださった保護者の方々に心から感謝申し上げます。そして,学級通信の事実を生み出してくれたこれまでの古舘学級の子どもたちを心から誇りに思います。ありがとうございました。
/古舘 良純
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