- はじめに
- Chapter1 ボイスアンサンブルでインクルーシブ教育を実現!
- 1 ボイスアンサンブルdeインクルーシブ教育
- 2 音楽が苦手でも,音が聞こえなくてもOK
- 3 合唱はクラスが一つになれる!でもハードルが高い……
- 4 楽しいだけではだめ,そこに「知」がほしい
- 5 ボイスアンサンブル作品は「導入でグッと引き込む!」
- 6 ボイスアンサンブルの指導ポイント
- Column 谷川俊太郎先生との共演がボイスアンサンブル作品の礎
- Chapter2 すべての子どもが参加できる!ボイスアンサンブル&ボディパーカッション
- 学校生活
- 1 楽しい学校生活
- 2 楽しい文房具ワンダーランド
- 3 楽しい読書“Fun reading”
- 4 食べたい!なつかし!学べる!給食
- 乗り物
- 5 乗り物大好き
- 6 いろんな新幹線
- 7 新幹線ヒストリー
- 自然
- 8 お花大好き4シーズン
- 9 野菜のお祭りパート1
- 10 野菜のお祭りパート2
- 11 お魚シリーズ
- 12 かわいい虫さん
- 観光・グルメ
- 13 ボイスdeお出かけグルメ旅 東北・北海道編
- 14 ボイスdeお出かけグルメ旅 関東・甲信越編
- 15 ボイスdeお出かけグルメ旅 北陸・東海編
- 16 ボイスdeお出かけグルメ旅 関西編
- 17 ボイスdeお出かけグルメ旅 中国・四国編
- 18 ボイスdeお出かけグルメ旅 九州・沖縄編
- 古今東西
- 19 世界遺産に行ってみよう
- 20 世界の偉人
- 21 オーケストラの楽器
- 22 和楽器ア・ラ・カルト
- 23 春の七草知ってるかい?
- 24 秋の七草知ってるかい?
- 25 和風月名
- 26 楽しい世界のパン祭り
- おわりに
はじめに
本書『ボイスアンサンブル&ボディパーカッションdeリズム合唱』を初めて手に取った方の中には,「ボイスアンサンブルって何?」と思った方もおられると思います。
「ボイスアンサンブル」とは,言葉を組み合わせて,音程を気にせずリズミカルに声を出す活動です。音程を気にせずにすむので,すべての子どもたちが楽しめるリズムでつくる合唱曲というイメージです。本書で紹介する曲は,2パートのものから5パートのものまでありますが,いずれもコール&レスポンス形式になります。言葉が重なる楽しさや,言葉のもつリズムの楽しさも生まれて,初めて演奏したときにはきっと不思議な感覚になると思います。
本書のテーマは,「言葉とリズムで友達とコミュニケーション」です。「歌が苦手でも」「楽譜が読めなくても」「楽器がなくても」「間違いを気にせず」みんなで楽しめるインクルーシブ音楽教材です。
ボイスアンサンブルに取り組んだきっかけは,「指導時間が足りない! もっと手軽に楽しめる教材が欲しい!」と思ったことでした。小学校通常学級や特別支援学校(知的障害)で様々な子どもたちの合唱,合奏指導をした経験から感じていたことは,指導の導入段階では「楽譜が読めない」「音程がわからない」「曲が長いと覚えられない」ということ。さらにもっとがんばろうとすると「声量,音色,ブレスが合わない」「頭声発声指導は限界がある」「ハーモニーが難しい」といった問題が出てきました。しかし,指導時間は限られています。そこで「指導時間を短く効果的に仕上げたい!」と考えるようになりました。
そうして誕生したのがボイスアンサンブルです。ボイスアンサンブル教材は音程がないので,元気に声を出せればOKです。2パートの簡単な曲ならすぐにできてしまうので,授業の導入にもピッタリです。子ども同士が一体感を感じ,団結力を育むことができる魅力的な集団活動です。短い曲は3分ほどでできます。
子どもたちの多くは,「元気一杯声を出したい!」と思っています。歌うことが苦手な子どもや,気づかないうちに音程が外れてしまう子どもたち(聴覚障害の子どもも含みます)も,自分の声で表現することは大好きです。しかし,歌声を重ねて美しいハーモニーを重視する合唱になると,指導するにも時間がかかってしまいます。
みなさんは,野球,バレーボール,サッカー,バスケット等の様々なスポーツ観戦に行ったとき,みんなで声を合わせて応援した経験はありませんか?「言葉を合わせると不思議と一体感を感じる!」「言葉のコール&レスポンスは楽しい!」という感覚になったのではないでしょうか。
本書で紹介している教材のテーマは,「学校生活」「お花」「文房具」「給食」「新幹線」「乗り物」「野菜」「お魚」「各地方の観光&グルメ」「偉人」「楽器」「パンの種類」です。それぞれの曲で,テーマに関連する言葉や数字等をリズムアンサンブルとして組み合わせています。いろいろな言葉で知識を広げながら,声を合わせる楽しさを体感してください。
また,本書で紹介する曲は,ボイスアンサンブル作品の中に,簡単なボディパーカッションの部分を入れています。「ボディパーカッション」とは,手拍子や足ぶみ,体の様々な部分をリズムに乗ってたたいて音を出す活動です。ボディパーカッションは,インクルーシブ教育や合理的配慮の点から取り入れました。脳性麻痺や言語的に「言葉が上手に発音できない」子どもたちも,手拍子や体をたたく(おなかをたたく,ひざ打ち)ことで,ぜひ演奏に参加してもらいたいと考えたからです。「上手に打てなくても」「音がずれても」構いません(参照:拙著『特別支援教育deボディパーカッション』明治図書)。実は本書で示している参考音源の中で,私の演奏も曲によって少し間違えています! また,お手伝いしてくれた学生のみなさんの演奏にも「少し間違えても,笑ってエンディング」を迎えている作品もあります。それでも楽しく終わっています。最後はうまくできた子もできなかった子もみんな笑顔になって「楽しかったね!」と体感して頂けるのが本書の一番の願いです。
ボイスアンサンブルやボディパーカッションによりみんなで一緒に演奏することで,みんなと一緒に同じ空間を共有することが大切です。そのことで,一体感や連帯感が生まれ,楽曲や行事を通した“望ましい人間関係づくり”が生まれると思います(参照:拙著『ボディパーカッションdeクラスづくり』)。
現在,一つの教室の中で健常児と共に様々な障害をもった子どもたちが一緒に学ぶ機会が増えてきています。中には言葉をうまく相手に伝えられない児童生徒もいます(理解はできているが,発語が難しい子も含みます)。ボイスアンサンブル曲は,問答形式(コール&レスポンス)のリズム遊び感覚で取り組んでみてください。うまく言葉が出ない子どもでも,リズムに乗って身振り手振りの身体表現ができます。手拍子や体をたたくボディパーカッションの部分にぜひ参加してください。本書で紹介している曲は,すべての子どもたちが一緒に参加することが目標です。ぜひ,インクルーシブ教育を実現してください。
音楽が苦手でも,音が聞こえなくてもOKです。クラスが一つになれるリズム合唱で,子どもたちをグッと引き込んでみてください。授業の導入や学級活動,学校行事,特別支援学級との交流活動,異学年交流活動等の様々な機会に,合理的配慮ができる教材としてぜひ活用していただきたいと思っております。
2021年9月 /山田 俊之
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- 明治図書