- はじめに
- 第1章 教科書アレンジで,「学びに向かう力」を育てよう!
- 1 教科書アレンジの目的
- 2 教科書アレンジの視点とその具体
- 3 「学びに向かう力」を育てる
- 第2章 学びに向かう力を育てる教科書アレンジ事例34
- 【1年】
- 答えが?になる式は?
- あわせていくつ,ふえるといくつ[きまりを仕組む,パズル形式にする]
- 隠れた時計は何時かな?
- なんじ,なんじはん[隠す]
- おはじきの数が伝わるように並べよう!
- おおきいかず[考察の視点を与える]
- 隠れた数はいくつといくつ?
- おおきいかず[隠す][きまりを仕組む]
- 全部で何人並んでいるのかな?
- たしざんとひきざん[迷う場面にする][考察の対象をつくる]
- 【2年】
- どんな問題にする?
- 長さのたんい[隠す]
- どの遠足なら行けるのかな?
- 時こくと時間[考察の対象をつくる][迷う場面にする]
- どんな式になるかな?
- かけ算[比べる場面にする]
- はみ出してしまうなら,表を広げよう!
- かけ算[パズル形式にする][考察の対象をつくる]
- ドーナツを仲良く分けるには?
- 分数[考察の視点を与える][視覚化する]
- 【3年】
- 卵は何日分あるのかな?
- あまりのあるわり算[比べる場面にする]
- 0は省略してもいいのかな?
- かけ算の筆算(1)[比べる場面にする]
- もとの大きさを考えて大きさを比べよう!
- 分数[迷う場面にする]
- ジュースはあわせると何Lかな?
- 分数[迷う場面にする]
- 0をつけるってどういうこと?
- かけ算の筆算(2)[隠す]
- あたりはどんな形かな?
- 三角形と角[ゲーム化する]
- 【4年】
- もし□が5だったら迷うなぁ…
- がい数の使い方と表し方[条件を変える][迷う場面にする]
- 何を買ったかわかるかな?
- 計算のきまり[オープンエンドにする][条件を変える]
- あたりの共通点はなんだろう?
- 分数[きまりを仕組む][ゲーム化する]
- マッチは何本?
- 変わり方調べ[隠す]
- L字型の図形の面積を求めよう!
- 面積のはかり方と表し方[隠す][考察の視点を与える]
- リボンは何本とれる?
- 小数のかけ算とわり算[考察の対象をつくる]
- 【5年】
- 一番大きな箱をつくるには?
- 直方体,立方体の体積[考察の対象をつくる]
- 同じ三角形を見つけよう!
- 合同な図形[迷う場面にする]
- しきつめることができる四角形は何種類?
- 図形の角[迷う場面にする]
- どちらが多くカードをとれる?
- 偶数と奇数,倍数と約数[ゲーム化する]
- 優勝するのはどの先生?
- 割合[考察の視点を与える]
- 二等辺三角形が集まると?
- 正多角形と円周の長さ[逆をたどる][考察の視点を与える]
- 【6年】
- バランスのよい形はどれ?
- 対称な図形[考察の対象をつくる]
- どの考え方を使っているのかな?
- 文字と式[考察の視点を与える]
- 逆数の意味や仕組みを考えよう!
- 分数のかけ算[きまりを仕組む]
- かけて1になる組み合わせを見つけよう!
- 分数のかけ算[ゲーム化する]
- なぜこの式になるのかな?
- 分数のわり算[視覚化する][比べる場面にする]
- 3倍の面積を求めよう!
- 円の面積[オープンエンドにする]
はじめに
2021年は丑年です。丑は食料にするだけでなく,荷物の運搬や農作業など人間の生活に欠かせない存在として敬われてきました。そういったことから「誠実」の象徴として十二支に加えられたという話があります。また,丑は最も遅いのんびりとした動きをします。その姿から,粘り強く一歩一歩進むことが大切な年と言われています。
昨年から流行し始めた新型コロナウイルスの猛威は依然衰えず,社会生活を根底から覆すような事態に発展しようとしています。
そのような中でも「子どもたちの学びを止めてはならない」という考え方で,日本の学校教育は踏ん張っているのです。2021年は,まさに教師の誠実さと粘り強さが求められているように感じます。
コロナ禍においては,オンラインの活用など,工夫した授業が開発されており,意義があることと思います。しかし,そのことによって逆にわかったのは,やはり初等教育では集団の中で学ぶ対面の授業こそ,子どもを育てるのに適しているということです。子どもは教師からほめられることも大切ですが,それ以上に仲間と共感したり,仲間から認められたりすることで自己肯定感を覚え,自信をつけていきます。そして,友だちの思いや考えを聞くことで刺激を受け,新たに自分の世界を拡げようとするのです。
2020年に完全実施された新しい学習指導要領には,「学びに向かう力」を育てることが謳われています。子どもたちが主体的に学びに向かうためにはどのような授業をすればよいのか。今後は,全国の多くの学校で研究課題となることでしょう。そのヒントとなるのが,先ほど述べた,友だちとのつながりだと思います。
本書は,志の算数教育研究会のメンバーで,いかにして子どもの学びに向かう力を育てるのか,実践レベルで協議してきた内容をまとめたものです。特に,教科書教材に何らかのアレンジを加えることで,子ども同士のつながりをつくったり,教材へのかかわりをつくったりしました。具体的には,第1章で紹介する12の視点から,教科書の問題をアレンジすることにチャレンジしています。第2章以降の各事例は,「元の問題」と「アレンジした問題」の姿をわかりやすく示しています。
本書の実践は,実際に子どもたちと授業をすることでまとめたものですから,読者の先生方の授業づくりにも,すぐに生かすことができるものと思います。
子どもに学びに向かう力を育てるには,おもしろい授業を通して子ども同士のつながりをつくり,資質・能力を伸ばすことが大切です。本書がそのためのお役に立つことができれば幸甚です。
なお,明治図書出版の矢口郁雄氏には,日頃から志の算数教育研究会の活動を応援していただくとともに,本書をまとめるに際して,大変お世話になりました。心から感謝を申し上げます。
2021年1月 /盛山 隆雄
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