『特別支援教育 苦手さのある子も夢中になる　算数遊び＆教材アイデア』の詳細情報

　「子どもとの信頼関係を築きながら，子どもが安心して楽しく学び，子どもの成長へ適切につなげていく」。そんな理想的な学習を実現するためにどうすれば良いかを具体的に示したものが本書で紹介する教材やアイデアです。その根底には「遊びで学ぶことが非常に重要である」という考えがあります。では，なぜ遊びで学ぶことが重要なのでしょうか？それは遊びで学ぶことによって，子どもが「主体的な学習者」となるからです。

　「アクティブ・ラーニング」という言葉が広まり始めてから，教科書やプリントの問題を提示し，大人が一方的に解き方や答えを教授する学習方法からの脱却が日本各地で図られてきました。しかし中には「活動あって学びなし」と言われるような，ただ子どもが楽しんだだけで終わってしまっているものもあります。まるで先生が子どもにショーを見せたり，子どもが楽しく学べるよう「おもてなし」をされたりしているかのような活動です。これは授業者が悪いのではなく，それだけ一方的な教授に慣れてきている大人や子ども達にとってアクティブ・ラーニングへの変革が難しいということです。しかしこれでは，せっかくがんばって準備をしても子どもはお客様になってしまい，「主体的な学習者」になりません。

　そこで僕は，大人が何も指示しなくても子どもが主体的に取り組む「遊び」の要素を学習に取り入れようと考えました。この14年間でミニバスケットボールクラブ，進学塾，小学校，療育施設など様々な場所で，のべ数千人以上の子ども達に「遊びで学ぶ夢中体験」を届けてきましたが，その効果は僕の想像以上のものでした。公式戦で１勝もしたことがないミニバスケットボールクラブが３年で県大会に出場したり，発達検査で「グレーゾーン」と診断されて公立高校の進学は難しいと言われた中３の生徒が第一志望の公立高校に合格したり，反復学習が大嫌いで授業も宿題も落ち着いて取り組めなかった小２の児童が夢中になってあっという間に九九を習得したりと，保護者も目を疑うほど成長した子ども達が何人も現れました。

　子ども達の様子を観察していると，遊びで学ぶことによって楽しく笑顔になっている他に，自分から頭を捻って考え始めていることに気づきました。どうすればクリアできるかな？もっと早く正確にするには？他に方法はない？と大人が指示しなくても次々と考えを巡らせ始めるのです。そして目標を達成できた時には大きな達成感を感じます。その一連の流れは強く記憶に残り，一方的に教える方法よりも圧倒的に記憶に残っているということにも気づきました。子どもが自ら楽しく学び始め，高い学習効果も得られる。そのためのアイデアをぜひ本書から吸収し，あなたの目の前にいる子どもの成長に役立てていただければ，心から嬉しく思います。

　　　著者　／中道　貴洋