- 巻頭言
- はじめに
- 第1章 オンライン学習で大切にすること
- 【オンライン学習の意義】
- なぜ,オンライン学習が必要なのか
- 子どもたちの安全確認としてのオンライン
- 学習の保障としてのオンライン
- 新しい学びを生み出すチャンスとして
- 【オンライン学習の定義】
- オンライン学習のあり方を広く捉えよう
- 3つの視点と4つの枠でオンラインを捉えよう
- 【校内のオンライン化】
- 学校をオンライン化するために
- 自分たちの学校にしかできないモデル
- 教職員同士の情報格差を埋めるために
- 【学校の姿勢】
- 情報モラルとどのように向き合うか
- 【オンラインの学びのポイント】
- 対面授業ではないことを自覚する
- もう一工夫加えた学習支援
- 様々なツールで学びの組み合わせを考えよう
- 子どもの振り返りから授業を修正する
- 通学での学びとの差異を活かす
- 第2章 オンライン学習のつくり方
- 【オンライン学習システムの構築論】
- プラットフォームを整える
- できるところから始めることが大切
- 学習内容の配信方法を考える
- 双方向のシステムを考える
- 【家庭環境の是正】
- アンケートを使い,状況を把握する
- 家庭への参加の呼びかけと対応
- 家庭における情報環境の整備とサポート
- 【共同性】
- 教職員をネットワークで結ぶ
- 苦手な教員が安心できる工夫を
- 【働き方】
- 今あるコンテンツを最大限活かす
- リモート(在宅)でもできる工夫をする
- 【配信方法】
- 動画配信の効果的な方法
- 動画配信の時間的目安
- 動画配信で留意すること
- プリント,ノートとの連動を考える
- 第3章 プラットフォームを整える
- 【配信の多様性】
- 配信方法の前に伝えたい「思い」を明確に
- 【学校ホームページの活用】
- 学校ホームページを課題提示サイトとして活用する
- 学校ホームページをコンテンツサーバーとして活用する
- 学校ホームページの活用上の課題
- 【プラットフォームの活用】
- 無料プラットフォームの活用
- メール配信サービスの活用
- 新たにプラットフォームを立ち上げる
- 【プラットフォーム使用の留意点】
- 著作物の利用について気をつけること
- 個人情報の取り扱いで気をつけること
- 管理者を増やし,複数でトラブルの対応を
- 第4章 非同期の配信を考える
- 【非同期配信の定義】
- 非同期配信のメリット・デメリット
- 【動画のつくり方】
- 動画コンテンツを活用しよう
- NHK for Schoolを活用しよう
- 動画コンテンツをつくろう(準備編)
- 動画コンテンツをつくろう(撮影編)
- 動画コンテンツをつくろう(編集・アップロード編)
- 子どもが見たくなる動画コンテンツ
- 動画教材と授業をどうつなぐのか
- 【協同学習ソフトの活用】
- 双方向型授業支援システムで主体的・協働的に学ぶ
- 双方向型授業支援システムとWeb会議システムの併用
- 授業以外の双方向型授業支援システムの活用法
- 双方向型授業支援システム活用の留意点
- 【動画以外の非同期配信】
- オンライン学習におけるプリントのつくり方
- プリントをどのように配付するか
- 【非同期型の学習評価】
- 非同期型での学習評価を考える
- 第5章 双方向システムの工夫
- 【双方向学習の意義】
- 双方向学習とは
- 双方向学習のメリットを活かす
- 【双方向学習の留意点】
- 双方向学習の留意点(家庭の準備)
- 双方向学習の留意点(フォロー体制)
- 双方向授業の留意点(授業づくり)
- Web会議システムでの画面共有の注意点
- 【教科外活動における双方向の活用】
- 授業以外の双方向の活用
- まずはホームルームをやってみよう
- みんなで楽しめるホームルームレクリエーション
- みんなで楽しめるホームルームの体操
- 教科以外でのオンライン学習
- オンラインで心身の悩みを相談
- 【非同期との連動】
- Web会議システム以外の双方向ツール
- 同期・非同期を組み合わせた授業設計
- 【双方向での学習評価】
- 双方向学習での学習評価を考える
- 第6章 これからの教師に求められること
- 学校に『黒船』がやってきた……
- オンライン動画づくりを通して授業力を高める
- オンラインだからこそ子どもの意見を取り入れる
- デメリットよりもメリットに目を向ける
- 家庭と共に学びをつくっていく
- 教職員全員がオンライン学習への意識を高める
- オンラインで学びを豊かにする
- 新しい学びを模索する勇気
- 新しい学校づくりを模索する勇気
- ティーチングからコーチングへ
- 付録 Web会議システム導入教員研修資料
- おわりに
巻頭言
「オンライン学習」の先に何を見るか
今私はパソコンで原稿を書いています。大学3年生の時,パソコンでレジュメを巧みにまとめる友人に触発され,初めてパソコンを購入し,文章はパソコンで書くようになりました。そして今はパソコンが手放せません。文章の推敲も容易で,インターネットで様々な情報を検索することで,使い方や意味があいまいな概念や知見なども即座に確認しながら,考えをスムーズに形にすることができます。ただ,当時はパソコンを巧みに使いこなすことが輝いて見えましたが,かつても今も,どんな道具を使って書いたのかで,書いたもののよしあしを競うことはありません。
オンラインという技術も同じです。オンラインを使いこなせるかどうかが個々の学校や教師の教育活動の質を決めるわけではありません。しかし,このコロナ禍で,オンライン環境が標準装備されることは,パソコンで書くことが普及することで,研究活動等の生産性が格段に上昇したように,学校教育の当たり前を変えて,学校という制度がもつ様々な機能を増強する可能性があります。
特に,オンラインが増強するのは,学びの深さや授業の質というより,学習支援の手厚さという点ではないかと思います。本書のタイトルが「オンライン学習」であることは,そのような意味において理解される必要があります。新しい技術の使い方で個々の教師がオンライン授業の技を競うこと以上に,また,オンライン学習を有事への一時的な対応手段に留めるのでもなく,「はじめに」にもあるように,いつでも,どこでも,だれとでも学ぶことが保障される,学校という制度のそもそものあり方に関わるものとして,「オンライン学習」を捉えていくのです。
対面のコミュニケーションで教え学ぶ「授業」と,「自学自習」の両極の間に,オンラインのつながりやツールに支えられながらの「オンライン学習」という機能が加わって,より多くの子どもを救える,学習支援機能において「大きな学校」を展望すること,遠隔での学習支援では,「おわりに」にあるような,対話や質問を通して,子どもたちの視野の外部を指さしたりしながら,学ぶ意欲を触発し励ます,コーチとしての教師,教え導くより傍らで学びに寄り添う,伴走する教師のあり方が大事になってくるでしょう。
「オンライン学習」という学習支援機能を学校に増設する作業には,内向きなシステムや情報セキュリティポリシーの根本的な見直しなど,国や自治体の条件整備が不可欠です。加えて,各学校現場の発想の転換や努力も求められるところです。本書は,そうした学校の大規模なインフラ整備を,主に現場レベルにおいてどのように進めていけばよいのか,それを具体的に示すものとなっています。それは,コロナ禍の中で,目の前の子どもたちの学びやつながりや安心・安全をなんとか保障したいという執筆者の試行錯誤の挑戦の結晶です。本書を手がかりに,それぞれの学校で小さな挑戦が生まれ,それが公教育のバージョンアップへの大きな流れとなることを期待します。
/石井 英真
オンライン学習に取り組んでいこう、とするならば、手元に置いておきたい一冊には間違いないだろう。
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