- 刊行に寄せて
- /相馬 一彦
- はじめに
- /谷地元 直樹
- Chapter1 Q&Aでみる算数科「問題解決の授業」
- Q1 なぜ算数を学ぶのか?
- Q2 算数の「深い学び」を実現するためには?
- Q3 主体的・対話的に算数を学ぶためには?
- Q4 「問題解決の授業」とはどんな指導なのか?
- Q5 「問題解決の授業」を成功させるポイントは?
- Chapter2 算数科「問題解決の授業」の基本デザイン
- 1 「問題解決の授業」とは何か
- 2 「問題解決の授業」の指導過程
- 3 「問題解決の授業」と数学的活動
- 4 「問題解決の授業」における「問題」
- 5 「問題解決の授業」における「問題」の工夫
- 6 「問題解決の授業」における「問題」の提示方法
- 7 「問題解決の授業」における「予想」
- Chapter3 算数科「問題解決の授業」づくりガイド20
- 1 本時の目標の検討
- 2 課題の共有(課題提示)
- 3 個人思考のさせ方
- 4 机間指導の行い方
- 5 挙手と指名計画
- 6 多様な考えの取り上げ方
- 7 考えの比較・検討
- 8 集団解決の行い方
- 9 発問と問い返し
- 10 問題の解決
- 11 確認問題
- 12 まとめ
- 13 教科書の活用
- 14 学習の振り返り
- 15 練習問題と答え合わせ
- 16 宿題の与え方
- 17 学習評価の工夫
- 18 板書の工夫
- 19 ノート指導
- 20 ICTの活用
- Chapter4 算数科「問題解決の授業」のNG指導6
- 1 「問題解決の授業」は型にはめ込む指導法ではない!
- 2 授業のはじめの「復習」や最後に行う「予告」は必要か?
- 3 必要以上の見通しはいらない!
- 4 どれくらい考えさせればよいのか?
- 5 「速い・簡単・正確・どんなときでも」は万能なのか?
- 6 「個別最適な学び」「協働的な学び」は一斉指導で実現できない?
- Chapter5 授業改善のための教材研究5
- 1 教師自身の教材研究を深める
- 2 教科書を活用しながら授業を構想する
- 3 過去の授業例や実践研究を参考にする
- 4 子どもの反応から授業を振り返る
- 5 授業改善のために教材研究を行う
はじめに
学習指導要領が改訂されても,算数科で求められる学びは「子どもが目的意識をもって主体的に考える」ことに変わりはありません。子どもが課題を見いだし,問題解決に向けて自分なりに追究することができるような授業が求められます。そこで教師は,子どもが考えを深めながら問題解決できるように,意図的・計画的に教える必要があります。このような学習指導として代表的なものが本書の「問題解決の授業」になります。
私は中学校の現場経験での20年間,授業で日常的に「問題解決の授業」を実践してきました。また,現在は大学での初等算数科教育法や中等数学科教育法において,教員を目指す学生に「問題解決の授業」について具体的に教えています。さらに,研究会などでは授業改善を目指している先生方と「問題解決の授業」の意義や魅力について話すことが多くあります。
また,小学校算数科では,問題解決に関する書籍や授業の実践例が広く紹介されています。「問題解決の授業」を実践している,しようとしている先生方が数多くいることも知っています。しかしながら,先生方と話を重ねるなかで,次のような不安や誤解の声を耳にすることがありました。
・1つの問題を考えるだけで,学力が身に付くのかどうか不安である。
・時間がかかるので,特別な授業のときにしか行うことができない。
・授業のなかで,教師がどのように関わればよいのかがわからない。
これらの素朴な声から,学習指導としての「問題解決の授業」を初めて行う先生方に伝わるように,そしてわかりやすく説明を加える必要があると感じました。また,これから小学校教員を目指す学生の学びを深めることができるように,「問題解決の授業」の入門編として本書を作成することにしました。
本書は私のこれまでの授業実践や研究をもとにしながら,算数科における「問題解決の授業」の基本をまとめたものです。25年間の教師生活のなかで培った指導観や数学観などを授業づくりの方法としてまとめ,算数の授業において日常的に「問題解決の授業」を実践することを目指して,具体的な提案をしています。なお,「問題解決の授業」は,相馬一彦先生(北海道教育大学名誉教授)が提唱する学習指導です。相馬(1997)の書籍を参考にしながら,学習指導要領で謳われている算数科で目指す資質・能力を身に付けることができるように,私なりに提案したものになります。
本書では初めて算数の指導を行う小学校教員(若手教員や専科教員など)や小学校教員を目指している学生が「問題解決の授業」を理解できるように,具体例をもとにしながら授業づくりの説明を行います。
本書は次の5つの章から構成されています。Chapter1は,「問題解決の授業」をQ&Aの形で確認していきます。特に,算数科で求められる「主体的・対話的で深い学び」との関わりを解説します。Chapter2は,「問題解決の授業」の指導過程を確認し,主な授業の流れを概観しています。また,「問題」の工夫や「予想」について具体的に説明します。Chapter3は,「問題解決の授業」を実現するために,授業の各場面におけるポイントを説明しています。また,学習指導を成功させる工夫を紹介しています。Chapter4は,算数の授業でやってしまいがちな学習指導を例示します。それらをNG指導として,具体例をもとに改善の視点を確認します。Chapter5は,授業改善のための教材研究の方法を紹介します。「問題解決の授業」を継続して行うために必要な授業準備や授業記録について補足します。
本書が算数の授業を行う先生方の授業づくりにつながり,小学校教員を目指す学生にとって算数の指導について学ぶきっかけとなり,「問題解決の授業」が日常的に行われるようになれば幸いです。
2024年1月 北海道教育大学教授 /谷地元 直樹
見出しやレイアウトも分かりやすく、隙間時間にも読むことができます
また、NG指導も納得がいきました