- はじめに
- 本書の特徴と使い方
- 第1章 発達と障がいを理解する10のポイント
- 01 発達と育ち
- 〜過程の捉え方〜
- 02 発達の七五三
- 〜育ちの方向と順序〜
- 03 発達の節目は危機?チャンス?
- 〜ヴィゴツキーの発達の最近接領域〜
- 04 人は死ぬまで発達?
- 〜エリクソンの自我の発達〜
- 05 遊びは発達の源
- 〜アクティブ・ラーニング〜
- 06 障がいと個性
- 〜特性の捉え方〜
- 07 特性を測るものさし
- 〜子どもを理解するための視点〜
- 08 長所を伸ばし,短所に目をつぶる
- 〜LD・ADHD対応の基本姿勢〜
- 09 こだわりにこだわらない
- 〜ASD対応の基本姿勢〜
- 10 お助けグッズでOK
- 〜ユニバーサルデザインと合理的配慮〜
- 第2章 乳幼児のココロと行動
- 01 目と目で通じる
- 〜視線を合わせないASDの子ども〜
- 02 指さしは難しい
- 〜要求はクレーン行動のASDの子ども〜
- 03 一緒にまねっこ
- 〜目で見てスムーズに動けない発達性協調運動障害の子ども〜
- 04 巻き戻しは必要
- 〜同じ行動を再現しないと自分の身に起こったことがわからない発達障害の子ども〜
- 05 決まったルールが大事?!
- 〜自分のつもりにこだわるASDの子ども〜
- 06 納得が早道
- 〜母親や保育者と離れにくい子ども〜
- 07 言えないよ
- 〜うまくことばで表現できない不器用な子ども〜
- 08 ほっといて
- 〜注意と動きは止まらないADHDの子ども〜
- 09 ぼくだってやりたい
- 〜勝ちや1番にこだわってしまう子ども〜
- 10 うそじゃないよ
- 〜想像と願望が混同しやすいうそつきな子ども〜
- 第3章 学童期の子どものココロと行動
- 01 誰が決めたの時間割
- 〜急な変更に対応できないASDの子ども〜
- 02 学校用語の七不思議
- 〜新しいことばを習得しにくい発達障害の子ども〜
- 03 1より小さい世界
- 〜0(ゼロ)の意味がわからない子ども〜
- 04 犬の足は2本?4本?
- 〜話の流れがかみ合わない発達障害の子ども〜
- 05 泣きの繰り返し
- 〜間違った優しさで泣きがエスカレートする子ども〜
- 06 罰のつもりが超ラッキー
- 〜嫌なことから逃げ出す子ども〜
- 07 それだけはやめて
- 〜怖い存在で態度を急変する子ども〜
- 08 誰も振り向いてくれない
- 〜挑発し相手の反応を楽しむ子ども〜
- 09 聞いてる?聴いてる?
- 〜耳からの情報処理の苦手な子ども〜
- 10 あれ,あれ,それ,それ!わかっているけど…
- 〜ことばの想起が難しい子ども〜
- 11 答えを出すのに指の数がたりない!
- 〜指を使わないと計算できない子ども〜
- 12 きらりん☆ひらめいた?!
- 〜話を始めると止まらないADHDの子ども〜
- 第4章 思春期以降の子どものココロと行動
- 01 大人の階段
- 〜登校するエネルギーが乏しい子ども〜
- 02 失敗は成功の元
- 〜失敗が気になって緊張しすぎる子ども〜
- 03 回り道の効用
- 〜きまりより自分の興味関心を優先する子ども〜
- 04 自分の夢は…
- 〜理想と現実が一致しにくい子ども〜
- 05 イライラの貯金箱
- 〜過去の失敗経験に引きずられるASDの子ども〜
- 06 転ばぬ先のアイテム
- 〜聴いたことを忘れてしまう発達障害の子ども〜
- 07 洗濯?ああ選択!
- 〜ボーッとして話を聴いていない不注意な子ども〜
- 08 よい,悪いのこだわりに固まる
- 〜強迫行動をやめられない子ども〜
- 09 これなら「できる」自分の学習方略!
- 〜学び方の違う子ども〜
- 10 学び方を学ぶ
- 〜繰り返し学習の苦手な子ども〜
- 11 わからないことの理解
- 〜知識習得優先で学習意欲が低下する子ども〜
- 第5章 保護者の心と行動を理解する5つのポイント
- あなたの苦手な動物は?
- 01 いつもイライラ,さされると痛いハリネズミ
- 〜保護者の抱えているストレスを想像しよう〜
- 02 歩みのおそいカメ
- 〜保護者と共に歩むステップ〜
- 03 ドーンと重いゾウ
- 〜保護者の心を軽くする言葉かけ〜
- 04 ヘビは2枚舌?言った言わないで大混乱
- 〜保護者との誤解なき情報交換〜
- 05 小さい魚も集まって大きな魚になろう
- 〜まわりの保護者を味方に〜
- 第6章 校(園)内の支援体制づくり
- 01 校(園)内での支援体制づくりのレシピ
- 〜どこから始めるか考えてみよう〜
- 02 自然な素材をいかそう!
- 〜学級(クラス)担任としての学級づくり・関係づくり〜
- 03 旨味を引き出そう!
- 〜子どものよさをさらに発揮する指導計画〜
- 04 秘伝の味を伝えよう!
- 〜校(園)内だけでなく,縦の連携・支援の引継ぎ〜
- 05 他店とコラボしよう!
- 〜リソースの連携と活用〜
- おわりに
- 参考・引用文献
はじめに
年号が改まり,令和になりましたが,特別な支援を必要とする子ども達への教育は,これからも教育の原点にあることは変わらないでしょう。それ以上に,多様化する社会において,それぞれのよさをいかす優しい生き方,暮らし方は,ますます広がっていくのではないでしょうか。
私は,30年以上,とても個性的な子ども達とその子ども達を愛情深く育てている保護者の方と共に歩んできました。彼や彼女はとてもユニークでいろいろなことをしたり言ったりして,私に「あっそうか」と新しい気づきを与えてくれます。このように言うと,すごくゆとりがあるように見えるかもしれませんが,そうではありません。
きっと,この本を手にしてくださったあなたは,日々子どもと向き合うなかで,「なぜ?」「どうして?」と疑問が膨らみ,その疑問を解き明かしたいという思いで,ページをめくってくださっていることでしょう。私も同じです。私をこの世界に誘ってくれたさくらちゃんは,今の診断では,知的な遅れと自閉スペクトラム症を併せもつスレンダー美人でした。いつも右耳を押さえて,「さくらちゃん」と呼ぶと,ちらっと私を見て,「ンガー」と声を出してくれますが,一緒に遊ぼうとはしてくれませんでした。幼稚園に併設された通級指導教室に配属されたばかりの私は,さくらちゃんの90分の保育計画を立て,何とか彼女と一緒に遊びたいと思っていました。ヌルヌルベタベタが好きだとお母さんから伺い,フィンガーペインティングをしようと準備して待っていました。さくらちゃんは私の差し出す絵の具に目を輝かせ,手を伸ばしてくれたので,私は「やった」と一瞬喜びました。ところが,さくらちゃんは,絵の具の瓶をつかむや否や,園庭の金魚のいる池にドバッと絵の具を流し込み,あっけにとられている私の傍らで,服を全部脱いでドボーンと池に飛び込んで嬉々としていました。我に返った私は何とかさくらちゃんをシャワーで洗って,「まだ春の肌寒い時にすみません,風邪でもひかせてしまってはどうしましょう」とお母さんに謝りました。その時お母さんは,「先生,大丈夫。さくらは先生を試しているのよ」と笑って言われました。私の浅はかな保育計画はこうして無残に打ち砕かれたのでした。この時から,私は,この愛すべき個性豊かな子ども達のことを真にわかりたいと思い,今日に至っています。
このように頭の固い私でしたが,私には素晴らしい先生方との出会いがありました。スケールが大きく,常に行く先をお示しいただける竹田契一先生(特別支援教育士資格認定協会初代理事長・大阪教育大学名誉教授)や上野一彦先生(前LD学会会長・東京学芸大学名誉教授)が最新のLD教育の世界を広げてくださいました。そして,私は,柔らかい物腰で子どもの指導をされる佐々木徳子先生(元横浜市立小学校通級指導教室教諭)と出会い,「通級指導」の原点を教えていただきました。また,個性豊かな子ども達とすぐに仲よくなれる魔法のような技(インリアルアプローチ)をもち,いつも周りにいる人のことを一番に考えて行動されていた故里見恵子先生(元大阪府立大学准教授)は,私のあこがれの人でした。できなくても,「あんな風になりたい」というあこがれの気持ちが,私の原動力です。いつの間にか,私の周りには同じ思いをもつ仲間がたくさんできました。いつも子どものことを中心に話ができ,知恵を出し合い協力し合える大切な仲間です。
きっと子ども達も,その子ども達を保育・教育・支援するあなた自身も,かなえたい夢に向かっている今日の一歩があると思います。私は,その一歩をそばで一緒に走りながら応援したいと願っています。勇気を出して一歩を歩み出しましょう。一人ではできないことも,歩き出せば,自然に周りに道ができます。一人でも多く子どもの応援隊が増えることが,私の喜びです。
残念ながら,この本には,「こうすればいい」という解答は書いてありません。ただ,夜の空にポツンと光る星のように,「あっそうか,こんな風に考えてみよう」と思えるヒントは散らばっていると思います。
読者の皆様が,個性豊かな子ども達と明日も楽しく出会える一助にしていただけると幸いです。
ニャンコ先生こと /高畑 芳美
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- 明治図書
- 担任をしているクラスに発達障害の生徒がいるので、参考にしたいと思い購入しました。マンガでかかれていたので、とても読みやすかったです。発達障害の子の特徴がよく分かりました。年齢別になっているところや保護者についても書かれていたので、参考になりました。2022/3/1240代 中学校教諭
- 見開き2ページで1テーマの構成で読みやすかった。発達、心と行動の意味と支援方法について学びが深まった。思春期以降の子どもや、保護者についての内容も載っていて、とても参考になった。特に、思春期以降の子どもについて取り上げているのは貴重だと思う。2020/5/330代・小学校教員