- はじめに
- Chapter1 リアルな言語活動になる「目的や場面,状況」設定のポイント
- 01 「目的や場面,状況」を意識した言語活動
- 1 なぜ必要? 英語授業における「目的や場面,状況」
- 2 では,「言語活動」って何?
- 02 相手意識をもたせ,「目的や場面,状況」を設定する
- 1 「目的や場面,状況」を入れると,自然と「相手」が見えてくる!?
- 2 では,「相手」は誰?
- 03 コミュニケーションを行う「目的」を考える
- 1 「みんなはどうなの?」と尋ねることで「場面」が生まれる
- 2 伝え合う「目的」を作る
- 3 「なぜ行うのか」を考える
- 04 生徒と教師の対話に,「目的や場面,状況」がある
- 1 教室内が,英語使用の「目的や場面,状況」になっている
- 2 生徒は本物を求める
- Chapter2 中学1年の言語活動アイデア20
- 話すこと・聞くこと
- 01 友だちとの共通点を見つけよう
- 02 部員を集めよう
- 03 自己紹介動画を作成してオンラインで交流しよう
- 04 身近な話題で世界の人と交流しよう
- 05 絵の内容をうまく伝えられるかな?
- 06 日本の学校行事・生活を世界に発信しよう
- 07 YouTuberになって企業案件のCMを作ろう
- 08 私の「推し」人物を紹介しよう
- 09 日本では新年はどう過ごす?
- 10 先生役と生徒役でロールプレイをしてみよう
- 読むこと・書くこと
- 01 友だちとプロフィールカードを交換しよう
- 02 なりきり自己紹介作文(Who am I?)
- 03 行ってみたい国を紹介しよう
- 04 聞き逃した話について,質問しよう
- 05 クイズ大会用のクイズをつくろう
- 06 願い事を書いてみよう
- 07 私にとってのインフルエンサーを紹介しよう
- 08 行ってよかったところをALTに伝えよう
- 09 教科書の登場人物に手紙を書こう
- 10 旅先からALTに手紙を書こう
- Chapter3 中学2年の言語活動アイデア20
- 話すこと・聞くこと
- 01 GWの計画を教えてもらおう
- 02 ALTにおすすめの場所を教えよう
- 03 子どものころの思い出を発表しよう
- 04 あなたが将来やってみたいことは?
- 05 日本のものを,外国人に説明しよう
- 06 留守番電話で伝えたいメッセージを伝えよう
- 07 学校の〇〇ランキングは?
- 08 新年の目標を伝え合おう
- 09 修学旅行先で海外観光客にインタビュー!
- 10 あなたはどっち派? ディスカッションをしよう
- 読むこと・書くこと
- 01 My Hero
- 02 ALTからの宿題メールに返信しよう
- 03 子どものころ好きだった絵本レポート
- 04 世界の子どもたちの夢を書いてみよう
- 05 地域を紹介するポスターを書こう
- 06 雑学クイズをつくろう
- 07 観光案内ポスターを作ろう
- 08 今年の漢字を選ぼう
- 09 好きなことわざは何?
- 10 SNSに投稿しよう
- Chapter4 中学3年の言語活動アイデア20
- 話すこと・聞くこと
- 01 インスタ映えする場所をALTに教えてあげて
- 02 デートのお誘いをしよう・スキット作成
- 03 継続していることはあるかな?
- 04 ALTにインタビュー!
- 05 日本の昔話を教えて!
- 06 ドラえもんの新道具を提案しよう
- 07 野生動物の立場から環境破壊する人間に訴えよう
- 08 ニュースレポーターになろう
- 09 教科書に登場した人物にインタビューをしよう
- 10 社会的な話題でディスカッションをしよう
- 読むこと・書くこと
- 01 スピーチを聞いて(読んで),どんな質問をするかな?
- 02 修学旅行新聞を書こう
- 03 転生したら〇〇だった
- 04 英語で「なりきり作文」
- 05 ALT新聞を書こう
- 06 悩み相談
- 07 あなたのお気に入りを教えて!
- 08 海外の人からの質問に答え,日本の事物を伝えよう
- 09 俳句を作って,応募しよう
- 10 My Treasure
- Chapter5 話すこと・書くことのテスト問題アイデア6
- 1年
- 01 自己紹介スピーチ(話すこと)
- 02 お気に入りの人物紹介作文(書くこと)
- 2年
- 01 夢についての交流会(話すこと)
- 02 人気の国ランキング(書くこと)
- 3年
- 01 街頭インタビュー(話すこと)
- 02 お悩み相談会(書くこと)
- おわりに
はじめに
今回の中学校学習指導要領(平成29年告示)は,私たちに多くの課題を投げかけている。本書のテーマも,そのうちの1つだ。
特に,「目的や場面,状況」は,多くの先生方を悩ませていることと思う。
なぜなら,外国語の目標に,次のように書かれているからである。
中学校学習指導要領(平成29年告示)第2章 第9節 外国語
(2) コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,日常的な話題や社会的な話題について,外国語で簡単な情報や考えなどを理解したり,これらを活用して表現したり伝え合ったりすることができる力を養う。
目標に出ているので,それに取り組まないわけにはいかない。
しかし,一体,どのように「目的や場面,状況」を設定し,どのような言語活動を行ったらよいかという事例は,まだ試行錯誤中と言える。
そこで本書は,少しでも先生方の悩みを解決し,課題解決に向けた授業の取組ができるよう,「目的や場面,状況」をテーマに,その考え方や取組のアイデアを,紹介していきたい。
さて,「目的や場面,状況」のそもそもの目的は,コミュニケーションを想定した言語使用ということになる。
コミュニケーションには,ことばを発する「場面や状況」があり,伝え合う「相手」がいて,そして,伝え合う「内容」がある。そこに,コミュニケーションを行う「目的」が生まれる。
平成10年改訂の学習指導要領で,「言語の使用場面」と「言語の働き」が,初めて登場した。これは,それまでの「国際理解の基礎を培う」という目標から,「コミュニケーション能力の基礎を養う」といった,外国語教育の目標が「コミュニケーション能力の育成」へと舵を切ったことによる。
再度になるが,コミュニケーションには,言語が使われる「場面や状況」があり,そして,私たちは,日常生活等において,その「場面や状況」に応じて,語彙や表現を選択しながら,言語使用を行っている。
従来の英語教育では,「場面や状況」がない中で,機械的に英語を用いる「練習活動」を行ってきたが,これからは,言語を使用する「場面や状況」の中で,どのような語彙や表現を使ったらよいか思考・判断し,表現する「言語活動」を通して,コミュニケーションを図る資質・能力を育成する授業を行うこととなる。
それが,今回の「目的や場面,状況」というキーワードの意味である。
では,授業でどのようにコミュニケーションを行う「目的や場面,状況」のある言語活動を作り出したらよいのだろうか。
ある小学校教師は,修学旅行の下見に行った際,外国人にインタビューを行った。Do you know Hamamatsu?(浜松を知っていますか)という問いかけに,多くの外国人は,No, I don’t.(知りません)と答えた。しかし,同じ静岡県内でも,Mt.Fuji(富士山)や,Izu(伊豆)は,知られていた。その時のインタビューの様子を児童に見せ,「浜松って,あまり外国人に知られていないんだね」と,児童に現状を伝えた。すると児童は,「浜松にもたくさんいいところがあるのに」「なんで知らないんだろう」「そうだ,浜松のいいところを英語で発信しよう」と,コミュニケーションを行う「目的や場面,状況」を作り始める。
元々,小学校の外国語のスタートは,「中身が先」であった。伝える「内容」が先にあり,その後に「英語」がくる。
コミュニケーションを行う「目的や場面,状況」のある活動を作ることは,小学校の外国語では,当然のごとく行われてきた。
さて,次は中学校の出番である。最初は難しいかもしれないが,「目的や場面,状況」を作り出す見方や考え方を備え,考える習慣を作れば,意外と楽に作り出すことができるようになるのではないかと予測する。
本書が,その一助となれば幸いである。
2023年8月 /瀧沢 広人
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