- はじめに
- 第1章 「応用行動分析学」の「きほん」
- ココロを見ることはできるのか?
- …「人のココロは見えないでしょ」。
- 「行動」からココロを見る学問って?
- …応用行動分析学である。
- 「行動」って、そもそも何?
- …「死人にできないこと」を言う。
- ワンチームで取り組むためには?
- …齟齬が生じない表現で「行動」を説明する。
- 「行動」の様子を記述するには?
- …「行動」とその「直前」「直後」の出来事を記述する。
- 「行動」の「直前」「直後」の「出来事」が変わると?
- …「行動」は変わる。
- 「行動」が「増加」あるいは「維持」していれば?
- …その「行動」は「強化されている」。
- 「正の強化子」、「負の強化子」って「ご褒美」や「罰」のこと?
- …行動に「加わっている」のか、あるいは「引かれている」のかを表している。
- どのようなものが「強化子」となる?
- …「学習によりなり得るもの」と、「未学習でもなり得るもの」がある。
- 「行動」を分析することで、見えるものって?
- …「心」が繋がる。
- 「強化子」がなくなると、「行動」はどうなる?
- …「消失」へと向かう。
- 「行動」が減少していることを何と言う?
- …「行動」は「弱化されている」。
- 「弱化子」にも、「正」「負」はあるのか?
- …「+(プラス)」が「正」、「−(マイナス)」が「負」…。
- 「弱化」か、それとも「消去」か?
- …「行動」の消失までの過程により異なる。
- 「直前」の出来事は「行動」にどう影響するのか?
- …「行動」を起こすきっかけとなる。
- 「直前」の出来事が「似ている」と、「行動」は?
- …出現しやすくなる。
- 応用行動分析学に基づき「行動」の分析を始めるには?
- …「きほん」に、従おう。
- 第2章 教室の中の「応用行動分析学」
- 「なぜ」、その「行動」を分析するのか?
- …「行動」の「理由(わけ)」を知るためにある。
- その対応で、みんなの人権は守られているか?
- …常に立ち止まって「分析」を…。
- あなたが「怒鳴る」のはなぜか?
- …体罰に続く道を辿っている。
- 「息が詰まる」教室には?
- …「弱化子」や「負の強化子」が溢れている。
- 安易に「無視しろ」と言うけれど?
- …そのリスクについて一度は熟考して…。
- 「褒める」と「行動」はどうなる?
- …増加する確率が高くなる。
- 目指す「行動」へ段階的に近づけるには?
- …「シェイピング」を用いる。
- どう「行動」すれば、「強化子」へ辿り着ける?
- …「反応プロンプト」と「フェイディング法」を用いる。
- 実際にモデルとなる「行動」をやって見せると?
- …似た「行動」が出現する。
- 自分の「行動」を知るためには?
- …誰かのフィードバックが必要だ。
- 自由な時に高頻度で出現している「行動」をどう捉えるとよいか?
- …自由な時に低頻度で出現している「行動」の「強化子」になり得る。
- 「強化子」としての価値は?
- …それが「遮断」されることで、高まる。
- 「強化子」を深く知ることで?
- …教育はどんどん活きていく。
- 「シール」をいくら集めさせても、それが「使えない」のであれば?
- …「行動」を増加・維持させることはない。
- シールをどれだけ貯めれば何が得られるのか?
- …子どもとの間で決めなければならない。
- 「トークン」の効力は絶大だが?
- …使い方を誤れば、様々な歪みを生む。
- その活動に参加する価値が大きければ大きいほど?
- …「タイムアウト」の効果も大きい。
- 「ルール」とは?
- …「行動」と、それにともなう結果を言語で示したものである。
- 理論を教室で実践しても「上手くいかないこと」がある?
- …必ず「理由(わけ)」がある。失敗したら、それを「分析」すればよい。
- 第3章 「困った行動」には理由(わけ)がある
- なぜ「行動問題」は起こるのか?
- …「障害」があるから起きているのではない。
- 測定データのグラフ推移から何が見える?
- …あなたの実践の成果が見える。
- 教育現場での記録・記述のポイントは?
- …手を抜きつつも、押さえておかなければならないことがある。
- 「行動」の「直前」「直後」の出来事を記述するだけで「行動」がなくなる?
- …なんてことはない。
- 「行動」と、「直前」「直後」の出来事を大量に記述すれば使える?
- …使えない。
- 戦略としての「消去」や「弱化子」を教室でどんどん取り入れる?
- …最善の戦略とは言えない。
- 「困った行動」の「直前」を、可能な限りの工夫で変える?
- …子ども達一人一人が穏やかに生活できる技術と環境を手に入れることに繋がる。
- 「困った行動」と、「同時にはできない行動」を「強化」すれば?
- …「困った行動」は減るが…。
- 「困った行動」にも目的がある?
- …ある。目的が達成できる「ステキな行動」にすり替えよう。
- 「ステキな行動」に代えるには?
- …「困った行動」を「消去」し、「ステキな行動」を強化し続けよう。
- 日常生活における様々な情報を集めたら?
- …「行動」の出現のしやすさに、備えることができる。
- 「選択する」という「行動」の機会とは?
- …誰かに与えられるものではなく、人が生まれながらに持つ大事な権利だ。
- 参考文献
はじめに
「応用行動分析学」。この学問と出会ったのは、私が大学三年生の夏だった。大学院の博士課程に進学していた大学のOBに「研究室でワークショップがあるから来ないか」と誘われたからだ。特に興味関心があったわけではない。でも何となく参加しておいた方がよいという嗅覚が働いた。当時の私は、障害児教育よりは、障害者を取り巻く社会システムのあり方に強い関心があった。でも、なぜかその時は少し違った世界も見てみたいという欲求が出てきた頃だった。よいタイミングだったと今でも思う。
さて、誘われた「ワークショップ」とは何であったのか。「応用行動分析学」の基礎的知識を学び、実際に子どもに対して「見本合わせ課題」を行うというものだった。教育実習は翌年だったので、一定のカリキュラムに基づいて子どもに何かを「教える」という教員のまねごとのような経験はこの時が初めてだったように思う。
さて、そのワークショップの詳細について私が知ったのは、それから二年ほどして、自分も大学院へ進学してからのことだった。そして何の因果か、そのワークショップを主催していた研究室に在籍していた。ある先輩の博士論文の中に、私のパフォーマンスのデータがあったのだ。そして、私のパフォーマンスが、子どもにどのような影響を与えていたのかも示されていた。ある種の感動を覚えた。私たちは小さい頃から、大人が子どもに、あるいは障害のない人が障害のある人に「教える」という立場にいることを暗黙裡に絶対的なものだと思い込まされてきた。でも、ここで示されたデータは、違っていた。私は、子どもの、そして子どもは私の「行動」に様々な影響を与え合う様が描かれていた。
人と人の間のベクトルは一方通行ではない。相互に作用している。そうした中で人は生きており、社会は回っている。理解しなければならないことは、常に「あなたとわたし」のことだ。だから、私は「あなたの行動」の「理由(わけ)」を知りたい。そして、あなたにとっての「わたしの行動」の「理由(わけ)」をもっと深く探りたい。
本書は「応用行動分析学」の専門書ではない。そこははっきりしておこう。ただあなたを知り、あなたの教室の中での出来事を知る。そして、子ども達のことを知るための本だ。
著者 /有川 宏幸
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