- はじめに
- 第1章 「聴く力」「伝える力」を発揮する「前向き状態」をキープする10の秘訣
- 1 最強の「メンタルを守る力」とは、自分に満点をつけること
- 2 自分をハッピーにするセルフペップトーク(乾倫子先生より)
- 3 心のバランスを保つ言葉をもっておく
- 4 仕事の精選をしよう! 目の前の仕事は3種類に分けられる
- 5 いろんな人がいる職員室の環境のつくり方
- 6 勇気を出して、先輩の懐に飛び込もう(杉本耕平先生より)
- 7 SNS上にも挑戦を応援し合える仲間。発信のススメ(二川佳祐先生より)
- 8 自分の経験を成長に変える方法をもっておこう
- 9 自分を成長させるための読書は、短い時間で効果的に
- 10 攻撃的な子どもとどう向き合うか 〜怒りの感情と向き合う〜
- 第2章 「聴く力」を発揮する11の秘訣
- 1 なぜ今「聴く力」が必要なのか 〜意見を表明する権利〜
- 2 子どもが提出する日記から、「aiノート」をつくろう
- 3 年度はじめは、必ず一対一の面談をやろう 〜シンプルにして最強の方法〜
- 4 より価値のある面談にするための秘訣 〜オーダーメイドの支援を〜
- 5 子どもの表情の変化は絶対に見逃せない聴くチャンス
- 6 休み時間は「笑い」「回し」「受け入れ」で本音を引き出そう
- 7 「ありがとう」は、最高の聴く力(古内しんご先生より)
- 8 宿題を「自主学習」に変え、子どもの声を聴く(五十嵐太一先生より)
- 9 授業の改善点にも子どもの声を生かそう
- 10 子どもの本音を引き出す授業のやり方(庄子寛之先生より)
- 11 行事では子どもの声があがりやすい制度設計をしておくこと
- 第3章 「伝える力」を発揮する10の秘訣
- 1 「教育哲学」を書き出して伝えたいことを明確に
- 2 「教育哲学」はあなたの歩いてきた人生に転がっている
- 3 「どう伝えるか」を考える 〜必要最低限の方法とは〜
- 4 「いつ伝えるか」を考える 〜継続可能な伝える時とは〜
- 5 伝える実践がうまくいかない時は、3つのチェック項目で振り返ろう
- 6 「叱る」も伝え方の1つ 〜叱る基準は自分の中に〜
- 7 「学級開き」こそ、教育哲学を真っ直ぐに伝えよう!(小出潤先生より)
- 8 自分だけの「オンリーワン」の武器を生かして伝える(宮川勇作先生より)
- 9 ユーモアを手段にして、子どもの心の扉を開こう(福井洸輔先生より)
- 10 本気で関われば、必ず伝わる!(杉野功宜先生より)
- おわりに
- 協力していただいた先生方の紹介
- 参考文献
はじめに
初めまして、熊谷雅之と申します。愛知県の公立中学校で働く、平凡な現場の教師です。
私には「願い」があります。それは、日本のいたるところの学校で「子どもの幸せを第一に考えた教育が行われること」です。つまり、子どもたちが「楽しい!」と言って学校に通えるような国になってほしいということです。
去年の3月、私は親友の福井先生と共に『中学校に行くのが楽しくなる本』(みらいパブリッシング)という本を出版しました。その中で、「学校はただの建物でしかない。学校を楽しくするのは、自分自身の考えと行動だ!」「いい人生は、自分で創る!」と書きました。
与えられるのをただ待つだけの軟弱な子どもではなく、環境に負けず、自らの考えと行動で未来を切り開く、たくましい子どもに育ってほしいと願ったからです。
…しかし、やはり環境は大切です。そしてほとんどの子どもは環境を選べません。地元の公立校に通う子がほとんどです。
にもかかわらず、子どもだけに「学校を楽しめるかどうかは、君の自己責任だ!」と押し付けるのは、あまりに酷です。大人には子どもの教育環境を整える責任があります。
では、子どもにとっての「教育環境」とは、何でしょう。
私は「教員こそ最大の教育環境」だと思っています。子どもに向き合う教員がやりがいを感じ、正しく接し、楽しく働けば、学校が楽しいと感じる子どもは増えます。
では今、教員が楽しく働ける環境なのでしょうか。
ついに採用試験では、定員割れする自治体が出ました。教員が足りないままスタートする学校も増えています。その結果、多くの仕事を抱え、余裕のない教員が増えました。
また、2021年度、精神疾患を理由に休職した教職員は5897人を記録し、過去最多となりました。感覚が麻痺しそうになりますが、その一人一人に「家族」や「仲間」があり「人生」があります。苦しんでいるのは私たちの仲間です。
実際に職場や講演会で「苦しい…」と悩む先生方に何人も出会いました。
そのたびに子どもに対しては「誰一人置き去りにしない」と言っているのに、全国には辛い想いを抱え、「置き去りにされている教員」がこんなにもいるではないか、と思うのです。
私たちは子どもと笑い合う未来を夢見てこの仕事を始めたはずです。職場は我々教員の自己実現の場でもあります。
それは「子どものため」という自己犠牲のうえに成り立つものではありません。私たちはもっと楽しむべきです。
我々が仕事を楽しまなければ、本当に学校から教員がいなくなってしまいます。
私はこの現状を変えるため、現場でできることを提案したいのです。
現場の教員は決して無力ではないと信じています。
私が考える、「教員を楽しむ秘訣」を聴いてください。
それは2つの力を鍛えることだと思っています。いやむしろ、つくづく教員の仕事は、つまるところこの2つの力を使うことだけに集約されると思えてなりません。
1つめは、目の前の子どもの生の声(本音)を聴く力です。
2つめは、伝えたいことをダイレクトに目の前の子どもに伝える力です。
なぜなら教員という仕事の楽しみは「人間関係」の中にあり、「人間関係」をつくるコミュニケーション能力とは突き詰めると「聴く力」と「伝える力」だからです。
2つの力を鍛えれば、今の職場で、役職に関係なく、仕事を心から楽しめます。
また本書では、この2つの力を最大限発揮するための「前向き状態」をキープする方法も紹介します。いくら最強の2つの武器を手に入れたとしても、使う人が「使える状態」になっていなければ、「豚に真珠状態」になってしまうからです。
この本を読んだ方が、それぞれの現場にいる方を巻き込み、「仕事を思いきり楽しむ現場の教員の連帯」を広げていってほしいのです。
教育の生命線は、最前線で働く現場の教員です。子どもと毎日向き合い、近くに寄り添い、笑い、時に涙する人間らしい皆様が、笑顔で働けることを願いつつ書き進めます。
教員が学校を楽しまなければ、子どもが学校を楽しめるはずがない!
まずは我々教員が、思いきり学校を楽しんでやろうではありませんか!
著者 /熊谷 雅之
また、いろんな場面で活用できそうな実践と、その実践の根底にある信念が書かれているので、二学期からの学級経営や、今後の教師生活に大きな影響を与えてくれました。たくさんのプレゼントをもらったような感覚です。