- はじめに
- Prologue 「思考力,判断力,表現力等」とは?
- 01 「聞くこと」における「思考力,判断力,表現力等」って何?
- 02 「読むこと」における「思考力,判断力,表現力等」って何?
- 03 「話すこと」における「思考力,判断力,表現力等」って何?
- 04 「書くこと」における「思考力,判断力,表現力等」って何?
- まとめ
- Chapter 1 「思考力,判断力,表現力等」を考える8つのポイント
- 01 「思考力,判断力,表現力等」にはなぜ「目的や場面,状況など」が必要なの?
- 02 「思考力,判断力,表現力等」の育成の目的は何?
- 03 「思考力,判断力,表現力等」の重要なポイントは?
- 04 「思考力,判断力,表現力等」の目標や評価規準の作成ポイントは?
- 05 「思考力,判断力,表現力等」は,どう指導したらいいの?
- 06 「思考力,判断力,表現力等」の言語活動で,期待した表現が使われない時には?
- 07 「思考力,判断力,表現力等」では,何を頼りに指導したらいいの?
- 08 どんな指導事項があるの?
- まとめ
- Chapter 2 18の指導事項でみる「思考力,判断力,表現力」
- 01 くわしく伝える(話す・書く)
- 02 内容を整理して伝える(話す・書く)
- 03 「構成」を考えて聞く/読む/伝える(聞く・読む・話す・書く)
- 04 「事実」と「考え」を区別する(聞く・読む・話す・書く)
- 05 「考え」や「気持ち」を伝える(話す・書く)
- 06 「情報」を聞き取る/読み取る/伝える(聞く・読む・話す・書く)
- 07 「概要」を捉える/伝える(聞く・読む・話す・書く)
- 08 「要点」を捉える/伝える(聞く・読む・話す・書く)
- 09 「理解を確認」しながら,聞く/話す(聞く・話す)
- 10 「繰り返し」て,理解を示したり,確認したりする(聞く・話す)
- 11 「考えと理由」はセットで伝える(話す・書く)
- 12 説明する(話す・書く)
- 13 良さや魅力を伝える(話す・書く)
- 14 要約して伝える(話す・書く)
- 15 即興で伝える(話す)
- 16 読み返す(書く)
- 17 会話を継続し,伝え合う(話す)
- 18 引用する/客観的な事実で伝える(話す・書く)
- まとめ
- Chapter 3 聞くことの「思考力,判断力,表現力」を育てる授業づくり&ワーク
- 01 「情報」を聞き取る 複数の情報を正確に聞き取り,メモする
- 1年1学期/be動詞・一般動詞
- 02 「情報」を聞き取る 対話を聞き,聞き取った情報をメモする
- 1年1学期/be動詞・一般動詞の疑問文
- 03 「情報」を聞き取る 置かれた状況から,必要な情報を聞き取る
- 2年1学期/未来形 他
- 04 「情報」を聞き取る 重要な情報を聞き取る
- 2年2学期/道案内表現 他
- 05 「概要」を捉える/伝える 概要を聞き取る
- 2年3学期/過去形 他
- 06 「要点」を捉える/伝える 要点を聞き取る
- 3年1学期/過去形 他
- 07 「要点」を捉える 物語の教訓を聞き取る
- 3年2学期/特になし
- まとめ
- Chapter 4 読むことの「思考力,判断力,表現力」を育てる授業づくり&ワーク
- 01 「情報」を読み取る 複数の情報を正確に読み取る 064
- 1年1学期/be動詞・一般動詞 他
- 02 「情報」を読み取る 「対話文」から,情報の読み取りを行う
- 1年1学期/be動詞・一般動詞
- 03 「情報」を読み取る/「要点」を捉える 話題の中心は何かを読み取る
- 1年3学期/現在進行形 他
- 04 「事実」と「考え」を区別する 事実と考えを区別して読み取る
- 2年1学期/不定詞 他
- 05 「概要」を捉える 概要を読み取る
- 2年2学期/特になし
- 06 「構成」を考えて読む 文章構成を見抜く
- 2年3学期/特になし
- 07 「要点」を捉える 要点を読み取る
- 3年1学期/特になし
- まとめ
- Chapter 5 話すこと(やり取り)の「思考力,判断力,表現力」を育てる授業づくり&ワーク
- 01 会話を継続し,伝え合う/即興で伝える 会話を継続させる
- 1年1学期/be動詞・一般動詞 他
- 02 「考えと理由」はセットで伝える 考えと理由をセットで伝える
- 1年2学期/接続詞・不定詞(want to) 他
- 03 くわしく伝える くわしく伝え合う
- 1年3学期/過去形 他
- 04 くわしく伝える 夏休みの予定について尋ね合う
- 2年1学期/未来形・不定詞(want to) 他
- 05 くわしく伝える/「考えと理由」はセットで伝える 職場体験先をアドバイスする
- 2年2学期/動名詞・不定詞(名詞的用法)
- 06 「考えと理由」はセットで伝える 一番大切な学校のルールを考える
- 3年1学期/助動詞・比較表現
- 07 内容を整理して伝える まんがやドラマ,映画について伝え合う
- 3年2学期/関係代名詞 他
- まとめ
- Chapter 6 話すこと(発表)の「思考力,判断力,表現力」を育てる授業づくり&ワーク
- 01 内容を整理して伝える 思考ツールを活用し,伝えたいことを整理する
- 1年1学期/be動詞・一般動詞 他
- 02 「情報」を伝える 聞いた内容を他者に伝える
- 1年2学期/三人称単数現在形 他
- 03 内容を整理して伝える 冬休みの出来事をクラスで発表する
- 1年3学期/過去形 他
- 04 内容を整理して伝える/良さや魅力を伝える 友だちの良さを伝える
- 2年1学期/過去形・未来形 他
- 05 内容を整理して伝える ヒントクイズを作って発表する
- 2年2学期/不定詞 他
- 06 内容を整理して伝える/説明する 理想のAIロボットを考える
- 3年1学期/It for to・ can 他
- 07 内容を整理して伝える/「構成」を考えて伝える 日本を紹介するCMを作る
- 3年3学期/間接疑問文 他
- まとめ
- Chapter 7 書くことの「思考力,判断力,表現力」を育てる授業づくり&ワーク
- 01 内容を整理して伝える/良さや魅力を伝える メッセージカードで自分を伝える
- 1年1学期/be動詞・一般動詞 他
- 02 内容を整理して伝える/客観的な事実で伝える 外国人向けに町のゆるキャラを作って伝える
- 1年2学期/三人称単数現在形・can 他
- 03 内容を整理して伝える/読み返す 学校生活1年をふり返る
- 1年3学期/過去形 他
- 04 「要点」を捉える/伝える/説明する 内容を適切に伝える
- 2年2~3学期/未来形・受け身 他
- 05 内容を整理して伝える/客観的な事実で伝える 日本を伝えるクイズを作る
- 2年3学期/比較・最上級 他
- 06 内容を整理して伝える/「情報」を伝える/良さや魅力を伝える 相手の立場になり,感謝の気持ちを伝える
- 3年1学期/原形不定詞 他
- 07 内容を整理して伝える/「構成」を考えて伝える/読み返す 英語について考える3年3学期/既習事項
- まとめ
- おわりに
はじめに
皆さんは,英語の授業で,「思考力,判断力,表現力等」の指導って悩んだことはありませんか?
一体,何をどう指導したらよいか,迷い,考えたことはないでしょうか?
私はずっと悩んできました。
よく,「思考力,判断力,表現力等」には,目的や場面,状況などが必要ということを聞きます。そこで,目的や場面,状況などを設定した言語活動を行います。しかし,その活動をしたからといって,どのような「思考力,判断力,表現力等」の“力”が生徒に付くのでしょうか。
例えば,次のように言語活動を仕組んだとします。
・あなたは世界料理ショーに出場することになりました。自分の好きな料理の作り方を英語で説明しましょう。
・あなたの町では,毎年,世界文化交流フェスティバルが行われます。海外の人向けに「町の紹介ビデオメッセージ」が流れます。あなたのところに,ビデオメッセージ作成の依頼が来ました。1分間でビデオメッセージを作りましょう。
・あなたのクラスにある有名人が来ます。ヒントを出しながら,その有名人を当ててもらいましょう。
これらの活動を行うと,一体,生徒にどんな「思考力,判断力,表現力等」の“力”が付いていくのでしょうか。逆に,どんな“力”を付けたいと思って授業をやるのでしょうか。
私自身,「思考力,判断力,表現力等」となると,雲をつかむような話となり,一体,何をどう指導すればよいのか分からずにいました。
しかし,1つだけ分かってきたことがあります。「思考力,判断力,表現力等」とは,「考えて→判断して→表現する」こと。つまり,伝えたい内容を考え,それをどのような英語で伝えたらよいのか判断し,声に出して表現することです。これが,「話すこと」の「思考力,判断力,表現力等」のプロセスになります。この過程で,生徒に身に付く“力”は,既習事項を活用して伝えたいことを適切に伝える発信力です。
これもとても大事な力です。しかし,与えられた場面や状況の中で行う言語活動なので,当然,使用する語彙や表現が限られますし,その場限りでの力となります。そうではなく,他の場面でも使えるような汎用的な力を,私は求めていました。
そこで,指導案における目標の記述や,評価規準の記述に注目しました。
例えば,次のような目標があったとします。
(目標1)
世界料理ショーで自分の好きな料理の作り方を英語で説明するために,簡単な語句や文を用いて英語で伝えることができる。
この目標では,どんな英語でも,伝えることができればOKとなります。
しかし大事なのは,どのように伝えるかだと思うのです。伝え方に「どのように」を入れると,それが「話すこと」の「思考力,判断力,表現力等」の“力”になるのではないかと考えたのです。
そこで,次のようにしてみます。
(目標2)
世界料理ショーで自分の好きな料理の作り方を英語で説明するために,必要な情報を整理し,簡単な語句や文を用いて英語で伝えることができる。
このようにすると,「必要な情報を整理する」というところが,「思考力,判断力,表現力等」として育てたい“力”となり,指導すべき事項が明確になると考えました。そして,その先には,相手意識があります。相手に分かりやすく伝えるために,必要な情報を取り出し,それを分かりやすく伝えるために整理し,説明の順番を考え,分かりやすく伝えるための英語で発信します。最終的には,分かりやすく伝えるためであり,その根底には,相手意識があるからこその思考力となります。そして,そのような,「思考力,判断力,表現力等」で育てたい“力”を,指導事項として抽出していけば,指導目標が立てやすくなるのではないかと考えたのです。「必要な情報を整理する」を汎用性をもたせた指導事項とすれば,次の目標でも応用可能となります。
(目標3)
世界文化交流フェスティバルで放映される町の紹介ビデオメッセージを作成するために,必要な情報を整理し,町の魅力を伝えることができる。
本書では,中学校英語授業の実際の場面で活用できる「思考力,判断力,表現力等」の考え方や,その方策について,紹介したいと思います。
Prologueでは,そもそも英語授業における「思考力,判断力,表現力等」とは何であるのか,まずは,その外堀を確認したいと思います。
Chapter1では,「思考力,判断力,表現力等」の考え方を整理しました。
Chapter2では,18の指導事項を取り上げ,授業での活用について考えます。この指導事項は,あくまでも例ですので,その他,汎用性のある指導事項が増えてくることと思います。
Chapter3~7は,4技能5領域の「思考力,判断力,表現力等」の指導アイデアをワークシートとともに提示します。
「思考力,判断力,表現力等」の指導をする上で,本書が少しでも参考になれば幸いです。
2025年3月 岐阜大学教育学部 /瀧沢 広人
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- 明治図書