- シリーズ発刊に寄せて
- はじめに
- 第1章 学級経営の基礎・基本と低学年の学級経営
- 1 学級経営の鉄則
- 1 授業成立の十分条件
- 2 学びの3要素
- 3 学級の機能を高める手順
- 2 低学年という発達段階
- 1 「登校しぶり」に学ぶ低学年の学級経営
- 2 安全基地になること
- 3 低学年の学級経営のポイント
- 第2章 3〜5月 小1プロブレムなんて怖くない! 出会いの演出から始まるシステムづくり
- 1 出会いを演出するには?―「どんな先生?」に「普通」と言わせない―
- 1 来年度は低学年担任? 今からできることは?―情報収集とフライング関係づくり―
- 2 教室環境をどう整える?―整理整頓を分担して気持ちを整える―
- 3 掲示に費やす時間を減らすには?―チョーク1本から掲示楽々―
- 4 黒板メッセージは必要?―大切なのはアートではなくメッセージ―
- 5 低学年担任として1年間乗り切るには?―遊び心と休養を―
- 2 学級づくりのスタートダッシュ―まずは子どもたちとつながる3日間―
- 1 学級びらきで何を話す?―担任の願いを楽しく伝える―
- 2 初日に全員とかかわるには?―全員をほめる仕掛けをつくる―
- 3 子どもとつながるにはどうする?―まず自分から,まんべんなく近づく―
- 4 素早く朝の準備をさせるには?―あの手この手で楽しくエンジンをかける―
- 5 授業びらきですることは?―安心感と一体感をもって気持ちよいスタートを―
- 6 長引きがちな帰りの準備をスムーズにする方法は?―「お楽しみ」で自分から動く―
- 7 振り返りを学級づくりに生かすには?―子どもたちのことを思い出す時間をもつ―
- 3 学級システム―自分で動けるシステムをつくる―
- 1 学級目標って何?―学級の羅針盤―
- 2 給食当番はどうすれば?―全員で働き,担任も働く―
- 3 掃除当番はどうすれば?―掃除を楽しい時間に―
- 4 係活動をどうするか?―自分が楽しいことでクラスを盛り上げる―
- 5 ほめ合う時間をどう設けるか?―自分のがんばりを言語化してもらう―
- 6 楽しく動ける子どもたちにするには?―「働く自分」を可視化する―
- 4 学習のスタートで困ったときは?―丁寧さと楽しさを積み重ねる―
- 1 宿題を出せるようにするには?―宿題をみんなでやってみる―
- 2 低学年の自主学習はどうすれば?―学校で丁寧に指導し,練習する―
- 3 授業中の「待ち時間」の過ごし方は?―待たずに待つ―
- 4 文字の学習を楽しくするには?―少しの工夫で楽しさ無限―
- 5 開始時間に始められないときは?―開始時間にお楽しみを―
- 5 保護者の信頼を得るには?―小さなことから積み重ねる―
- 1 連絡帳で何を伝える?―連絡帳も教育の一環―
- 2 保護者に思いを上手に伝えるには?―子どもの姿を提示して説得力を―
- コラム1 北森,教員やめたいってよ―宮城編―
- 第3章 6〜7月 ドロップアウトを防いで6月危機を乗り切る
- 1 6月のゆるみをどうする?―信頼とつながりでゆるみを防ぐ―
- 1 授業中の私語が増えたら?―「これなら大丈夫だよ」を教える―
- 2 反抗的な態度をとる子との接し方は?―全力で誤解を解く―
- 3 一人でがんばってしまう子がいたら?―助けてもらう心地よさを―
- 4 子どもの言動に疲れたら?―心に自動翻訳機を装備する―
- 5 不安を訴える子がいたら?―自分を振り返り,相談の場をもつ―
- 2 トラブルへの対処をどうする?―一人で抱えずオープンに―
- 1 友だちに謝らない子には?―謝罪ではなく未来の約束―
- 2 けんかを助長するような行動には?―第三者の視点から振り返る―
- 3 いじめが起きたら?―自分ができることを選ばせて再発防止―
- 4 席替えがしっくりこないときは?―自分で決める「くせ」をつくる―
- 5 友だち関係に悩む子がいたら?―子どものことは子どもに聞く―
- 3 夏休みをどう迎える?―子どもにも保護者にも「なるほど感」―
- 1 個別懇談会で何を伝える?―懇談会をチャンスタイムにする―
- 2 夏休みの宿題はどんなものを?―指導をしてから家庭に―
- 3 通知表をどう渡す?―ABCの数ではない意味を伝えよう―
- 4 1学期をどう締めくくる?―「大好き」と最大の宿題を伝える―
- 5 暑中見舞い,出す? 出さない?―暑中見舞いを2学期の招待状に―
- コラム2 ダメな先生
- 第4章 9〜10月 学級のStarting Over
- 1 夏休み明けの雰囲気も味方に―1学期とゆるやかにつなげる―
- 1 始業式当日にエンジンをかけるには?―まず共感スタート―
- 2 係活動は1学期と同じ?―振り返りでスクラップ&ビルド―
- 3 ふわふわしている状態をどうする?―うずうずをパワーに進もう―
- 4 2学期のめあてをどう決める?―いい自分から,次のいい自分へ―
- 5 1学期のルールを忘れているときは?―丁寧に思い出そう―
- 2 子どもたちの授業をどう進化する?―授業のピンチが改革のチャンス―
- 1 全員がわかる授業って?―「その日にわかる」にこだわらない―
- 2 文化的行事は何のため?―お客さんのためではない―
- 3 余裕がなくてほめてあげられないときは?―そこにいるだけでいい―
- 4 授業中の態度にカチンときたら?―「大人めがね」を外してみよう―
- 5 発表する子が限られてきたら?―先生が「先生」をやめてみる―
- コラム3 北森,教員やめたいってよ―富山編―
- 第5章 11〜12月 「魔の11月」に学級力をあふれさせる
- 1 動き出すきっかけをつくるには?─つながりから少しずつ歩き出す─
- 1 逃げ道を用意する叱り方って?―担任とのつながりを信じられること―
- 2 リーダーシップを経験させるには?―「リーダー」を循環させる―
- 3 子ども同士で解決させるには?―「まぁ,座ろう」を言える環境を―
- 4 「ほめられ待ち」をどうすれば?―自分たちでほめることを楽しむ―
- 5 学級目標を振り返るには?―ポジティブに原点に返ろう―
- 6 横のつながりはどうつくる?―「点」と「点」を辿った先に笑顔がある─
- 2 子どもたちを後押しするものとは?―味方は多い方がいい―
- 1 「勉強が教えられない」と言われたら?―普段着の授業を伝える―
- 2 子どもたちの活躍をさらに広げたいときは?―みんながみんなの先生―
- 3 子どもたちをさらに前に進めるには?―自分たち自身を味方につける―
- 4 授業の空気が重いときは?―難しいことには楽しさを味方に―
- コラム4 厳しいフィードバックから逃げない
- 第6章 1〜3月 次年度へのラストスパート
- 1 3学期はどう動き出す?―子どもたちにオールを作らせる―
- 1 3学期の学級開きをどう迎える?―新年はお祭り気分で―
- 2 指示を最低限にするには?―指示は繰り返さず,思い出させるもの―
- 3 子ども同士の学びを仕組むには?―まずは「群れ」をつくる―
- 4 教室の雰囲気が落ち着かないときは?―「任せる場」で推進力を―
- 5 低学年の子どもたちに卒業式で何を教える?―感謝を行動で示す方法―
- 6 学年最後にどのイベントを選ばせる?―全部やる―
- 7 学級目標をどう振り返る?―自分の役割を振り返る―
- 2 学級をソフトランディングさせるには?―感謝を伝え,静かに幕を―
- 1 最後の学習参観・懇談会では何を見せる?―成長と感謝を―
- 2 子どもたちに学年末に伝えることは?―子どもたちへも感謝を伝える―
- 3 学級じまいをどうする?―感謝で学級を閉じる―
- コラム5 普通であることを恐れない
シリーズ発刊に寄せて
この本を手に取った方は,おそらく次のどちらかでしょう。
○今現在,学級経営に困っていることがある。
○もっと,学級を良くしたいと思っているが,具体的な方法がわからない。
本書は,そんな2つの願いをどちらも叶えます。
私は,上越教育大学という教員養成を行う大学の教職大学院で,これから教壇に立つ教師を育てることと現職教員の能力の再開発にかかわる一方で,全国の自治体や研究会からご依頼をいただき,各地で教員研修を担当させていただいています。
ある講座の後,一人の参加者の方から声をかけられました。
「私たちの学校は,子どもたちの学習意欲の向上,全員参加ができる授業づくりを目指して,これまで発問や指示,課題提示の工夫に取り組んできました。
しかし,近年,授業に入ってこられない子,ついてこられない子が確実に増えてきています。今日の先生の講座をお聞きして,その原因がわかりました。つまり,そういうことだったのですね」
その方は,ある学校の管理職の先生でした。そちらの学校では,学力向上のねらいの下に,ずっと授業改善をテーマに校内研修を進めてきたそうです。しかし,それにもかかわらず,ここ数年,授業に参加できない子どもたちが確実に増えてきており,魅力的な教材,ネタを用意して,発問や指示を工夫しても,目に見える成果が現れなかったと言います。
ここに横たわる問題は,何だったのでしょうか。
そう,それが,学級経営の問題です。学級経営というと「ああ,学級づくりのことね」と思われるかもしれませんが,学級経営と学級づくりは,異なります。しかも,近年の学級づくりの在り方は,それこそ,ネタや活動への比重が高まってきて,その本来の在り方を見失っているように思います。先ほどの話を思い出してください。授業においては,ネタや発問や指示の工夫,つまり,活動の工夫では,子どもたちを引きつけられなくなっているということが起こってきているのです。それは,学級づくりにおいても同じことが言えるわけです。つまり,ネタや活動だけでは,学級をまとめていくことは難しい状況になっているのです。
本書における学級経営とは,ネタや活動の羅列のことを意味しているのではありません。学習の場としての質的向上をねらった環境設計のことです。「主体的・対話的で深い学び」の実現をしようとしてみてください。不安定な人間関係の中,安心感の保障されない場所で,子どもたちはやる気になるでしょうか。そんな環境で「話し合ってごらん」と言われて,話し合いをするでしょうか。また,それぞれの気付きをつなげたり補完したりしながら,自分だけではわからなかったことに気付くでしょうか。「主体的・対話的で深い学び」は,学習環境の質に大きく依存しているのです。
本シリーズは,実際に学級経営で起こる問題場面を想定しながらQ&A形式で,具体的に学級経営の考え方と方法論を示しています。もし,ご自分のクラスで困ったことがあったら,似たようなQを探してみてください。解決のヒントが見つかることでしょう。またもし,特に困ったことがない場合は,最初から通してお読みください。そこに示されたQが,学級経営の急所となっています。そこに気をつけることで,陥りがちな危機を避けながらクラスを育てることができます。つまり,本書は,学級経営において,困っているときの「治療法」として,また,危ない場面を避けるための「予防法」として,そして,クラスを育てるための「育成法」として,3つの使い方ができる画期的な書なのです。
執筆を担当したのは,私のほか,私とともに学級経営の研究を進めてきた3人の実力者(低学年:北森恵,中学年:畠山明大,高学年:岡田順子)です。「この人たちの実践を世に出さないことは罪だ」,そんな強い思いに駆られて執筆を依頼しました。本シリーズが,みなさんの学級経営の強力なサポーターとして役立つことを確信しています。
2020年2月 /赤坂 真二
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- 明治図書
- 教師の考え方を変える必要があると感じました。イライラしたり、叱りたくなる場合でも、教師の見方ひとつで叱らなくてすむのだなと思いました。低学年への丁寧な対応と著者の誰に対しても温かい心配りがとても参考になりました。2020/3/1950代・小学校管理職
- とても参考になりました。2020/3/830代・小学校教員